第二十二話 置き土産と母親決定戦
皆さん、こんにちわ。
才原喜助です。
この始まり方も久しぶりですね。しばらくやってないと、なんか新鮮です。
さて、今回の話ですが……なんというか……僕、父親になります。
……わかります、皆さんの言いたいことはわかります。
誰との子供だ、いつ子供ができるようなことをした、リア充死ね……みなさんの声が聞こえてきます。
まぁここであーだこーだ言っても始まらないので、本編見てください。
ではどうぞ……
ここは病院のある一室。
ベッドは二つしかなく、個別室を少し大きくした程度の広さだ。
(ピクッ!ピクッ!)
「……哀れだな」
僕が…まぁ…トラウマを植え付けられて(詳しくは前話にて…)、少し経ったときのことだ。
(ガチャ)
「あのー…」
「……ヒィ!!」
「才原、看護婦さんだ。奴らじゃないから安心しろ。」
「え…?あ…すみません…」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりこの子なんですが……」
「この子?」
そういう看護婦さんの腕には…
「ダァ!!」
一人の赤ん坊がいた。
「才原さんのお子さんと聞いて連れて来たんですが……」
「いえ、人違いで「そうです。ここに寝かせてください。」……………鷹野ぉ?」
僕が言うのを遮る鷹野。僕が鷹野の方に顔を向けると、ヤツは顔を背けた。
「では、よろしくお願いしますね。………お父さんの所に戻れて良かったねぇ~♪」
「お、お父さん!?」
「それでは、失礼しました~♪」
「いや、ちょっと!!」
(ガチャリ)
「………………………………………………………鷹野ぉ?どういうことだぁ?」
「そうキレるな。ちゃんと説明する。」
鷹野から聞いた話を要約すると、こうだ。
僕が気絶して鷹野がリンチを受けていたときのこと(←ここで一回ツッコミ)
↓
部屋の奥の巨大な試験管が割れた
↓
中から赤ん坊出現
↓
赤ん坊がハイハイしながら寄ってきた
↓
気絶中の僕に抱き着いた
↓
父親は才原に決定(←再びツッコミ)
「なんで僕が父親なの!?ホントの両親は!?」
「知らん。」
「知らんって……研究所のデータとか見ればわかるんじゃないの!?」
「そのデータを見てみればその子はどうやら遺伝子操作されて生まれた子供らしくてな。ホントの両親は不明だ。」
「あ…そう、なんだ…」
「俺もホントの親に返すのが一番だと思う。だがその子の親は…おそらくすでに亡くなっている。」
「……どういうことだ?」
「その子の親はおそらくあそこの研究員だろう。その方が世間にばれる危険が少ないからな。しかし、その研究員である両親のデータが存在しない。つまり……」
「存在を…抹消された…?」
「おそらくな。所長の田神への裏切りか、それとも外部にこの事実が漏れるのを防ぐためか……田神はそういうことを平気でする男だ。」
「………」
「お前以外には懐かないし、代わりに父親になってやってくれないか?両親を殺され、その上施設に預けられるのは、かわいそう過ぎる…」
「………うん、わかった。僕でよければ育てるよ。」
「ウチの組でも最大限の協力はする。育児に必要なものとかは任せろ。」
「助かるよ。」
(スゥー、スゥー)
「あ、寝た。」
「お前の近くでないと寝ないんだ、そいつ。」
「そっか…よしよし。」
僕は赤ん坊の頭を撫でてやった。
まぁ僕が父親なんかやっていいのかわからないし、そんな資格は無いのかもしれないけど……
(スゥー、スゥー)
出来ることを精一杯やろう……
それからしばらくして、病室にサヤ達が戻ってきた。
どうやら赤ん坊のことは知っていたみたいで、僕が父親になることもある程度予測していたらしい。
病室でみんなで話していたときのこと…
「ところでこの子の父親が才原なら、母親は誰なんだろうな?」
((((((ピクッ))))))
鷹野がそういった瞬間、病室の空気が変わった。
「いや、そんなのウチの母親が代役をやればいいんじゃ……」
「母親は当然私だ!」
「いや、ボクだ。」
「私よ!」
「私だよね、キー兄?」
「わ、私です!」
「ウチだな!」
女子が全員立ち上がって立候補。
………何、この状況?
「第一回母親決定戦~」
「「「「「「いえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」」」」」」
何この状況!!!???
「ルールは簡単。この赤ん坊と5分間遊んで、一番この子が気に入ったヤツが勝ちだ。そして優勝者には……」
(バッ)
「この“親子限定”桜ヶ丘遊覧パーク(一日無料券)をプレゼント!!」
「「「「「いえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」」」」」
なに、この盛り上がり方!?
みんな…あのおとなしい守屋先輩でさえ目が血走ってるし!!
「ウチは遊園地よりも学校の食堂の無料券とかが良いなぁ…」
よかった!鷲崎先輩はまともだ!!
「ミユキ、よく考えてみろ。“親子限定”だぞ?お前と才原、この子でこのチケットを使えば世間的にはお前たち二人は夫婦に……」
「ばっちこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鷹野がボソボソと鷲崎先輩に呟いた瞬間先輩の目も血走った!!
鷹野!お前なにを言ったんだ!?
「あ、あの…」
((((((グルン!!))))))
僕が声をかけた瞬間全員の目が僕に向いた。
怖!メチャクチャ怖いんですけど!!
(ガタガタガタ…)
うわーもう体中の震えが止まらな~い!!
(喜助やその他がちょっと精神的にヤバくなったのでしばらくお待ちください。by作者)
「全員、落ち着いたか?」
「…ああ。たぶん大丈夫だ。」
みんな(僕含む)がまともに戻るまでかなり時間を要したが、まぁとりあえず母親を決めるらしい。
「アダッ、ダァ!」
ちょうどこの子も起きたことだし、ちょうどよかった。今は僕の膝の上に座って誰かが買ってきたおもちゃで遊んでいる。
なんか…これいい。今すごく幸せな気分だよ…
「では始めるぞ。まずは誰から行く?」
「私だ!」
まずはサヤからのようだ。
「ほ~ら、よしよ~し。君のお母さんだよ~♪」
「ダ?」
サヤが呼びかけると振り向いてサヤの方を見る。
「よしよ~し、おいでおいで~♪」
サヤが手を伸ばし自分の方に抱き抱えようとした瞬間…
「ダッ!!」
この子は僕の病院服をしっかり握りしめ、僕から離れるのを拒否。
「ちょ、ちょっと!おいでって!子守唄唄ってあげるから!」
「ダァ!!」
「ほら、おいで!!」
「ダァ!!」
サヤが引っ張るが全く離そうとしない。
僕がサヤに引っ張られているみたいだ。
「こっちに……来なさぁぁぁい!!!」
「ダァァァァァ!!」
(ビリビリビリ!!!)
「ダァ!?」
「キャッ!?」
病院服の方が耐え切れなかった……
とりあえず上半身裸のままでは寒いので、ナースコールで代えの病院服を貰って着替えた。
「す、すまなかったな……」
「別に気にしなくて良いよ。」
サヤが顔を赤くして謝る。上半身を見られたくらい何でも無いのだから気にすることはないのに…。
というか、よく見ると鷲崎先輩は爆笑してるけど、それ以外はなんかうつむいてるし……どうしたんだろう?
「アハハハハ!いや~、それにしてもお前の体って無駄なく引き締まってるなぁ!どうりで強いわけだ!!」
「まぁ鍛えてますからね。」
「とりあえず…伊吹は失格だな。」
「チクショー!!」
「さて、次は誰が……と言いたいが、あんまり長くなりすぎても読者さんが疲れるかもしれないから次話に続きをしよう。」
「……作者が疲れたからじゃないの?」
「……また次話で会おう。」
「無視かよ!!」
次回に続きます。