表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくらキャンバス!〜君と見つけた春の光〜  作者: 夜空千咲
第1章 始まり〜文化祭編
7/30

7 文化祭準備、始動。

 夏の匂いが混じる風が、開け放たれた窓から吹き込んでいた。

 教室の黒板には大きく「文化祭実行計画」と書かれ、その下に「演目:シンデレラ」とチョークの文字が並んでいる。


 今年のクラスの出し物は、満場一致で“演劇”に決まった。

 そして主演——シンデレラ役は、もちろん菊田さくら。

 女優としての経験がある彼女に、皆の視線が自然と集まった。


 佐藤晴大は背景担当、新宮あまねはクラス全体をまとめるリーダー、野木駿介は大道具担当。


 それぞれが自分の役割を手に取り、放課後の教室は活気に満ちていた。

 机を並べて脚本の修正をしているグループ、衣装の型紙を広げている女子たち。

 そして美術室では、晴大など背景担当組が大きな模造紙の上に森を黙々と描いていた。


 その合間を縫うように、あまねは全員の作業を見回っていた。

「はい、大道具は移動の動線確認しといてね。あ、キャストはセリフの読み合わせ、よろしく!」

 彼女の指示は的確で、声にはどこか頼もしさがある。


 そんな姿を見ながら、さくらは思わず笑みをこぼした。

「……委員長って、ほんとしっかりしてるよね」


「え? 何よ急に……」

 照れたように言い返すあまねに、さくらはふふっと笑った。

 最近は、二人で練習することも多くなっていた。

 セリフの言い回しを相談したり、立ち位置を確認したり。

 気づけば放課後を一緒に過ごすのが当たり前になっていた。


***


 ある日の放課後。

 教室の一角で、何人かの女子が集まってお喋りをしていた。

 手元の作業はほとんど進んでいない。

 そんな光景を見たあまねが、足を止める。


「ねえ、もう少し真面目にやってくれない? 時間、限られてるんだから」


 その口調はいつも通り冷静だったが、女子たちは一瞬で黙り込み、次の瞬間には鋭い目つきであまねを睨んだ。


 教室の空気がぴんと張り詰める。

 あまねはそれに気づいていながらも、何でもないように踵を返した。


 その様子を見ていたさくらは、胸の奥が少し痛んだ。

(……委員長、大丈夫かな)


***


 その日の帰り道。

 校門を出ると、空は夕焼けに染まり始めていた。

 橙色の光が二人の影を長く伸ばす。


「今日は大変だったね」

 さくらが笑いかけると、あまねは小さくため息をついた。

「まあね。ほんと、みんな勝手なんだから」


「でも、委員長はすごいよ。ちゃんと全体を見て、引っ張ってくれるし」


 さくらの言葉に、あまねは一瞬立ち止まった。

 夕日に照らされた横顔が、わずかに陰る。


「……別に、すごくなんかないよ」

「え?」


「私ね、意地張ってるだけ。カッコ悪いとこ見せたくないから、頑張ってるように見せてるの」


 その言葉に、さくらは優しく微笑んだ。

「それでもさ、そうやって頑張れるのって、すごいことだよ」


 あまねは一瞬だけ驚いたように目を瞬かせ、次の瞬間、頬をほんのり赤くして顔をそらした。


「ほ、本当、何なのよ!今日!」


 その照れ隠しの声に、さくらは吹き出してしまった。

「ふふっ……委員長、可愛いんだからぁ〜」


「やめて!」

 あまねが慌てて言うが、その声にはどこか柔らかさが混じっていた。


 その夕暮れ、二人の笑い声が住宅街の通りに溶けていく。

 さくらは思った。

 ――普通の高校生活って、こんなにもあたたかいんだ。


〜小ネタ〜

・野木駿介は大道具担当ですが、作業が雑なので他の大道具担当によく怒られています。

・新宮あまねは学級委員長ですが、副委員長もちゃんといます。物語に登場していないだけです。

・さくらはあまねの前ではよくふざけます。文化祭練習中も、あまねにちょっかいをかけては怒られてました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ