3 普通の日常
週1ペースで投稿していたら、いつ完結するのか不安になったので、最初の1週間だけ毎日投稿します。
昼下がりの教室には、初夏の風が入り込んでいた。
カーテンがふわりと揺れ、チョークの粉が光の中で舞う。
教室内は心地よい騒がしさに包まれていた。
「だぁかぁら!!行かないって言ってるでしょ!?」
「何でだよ〜!俺のバスケしてるとこ見に来てくれても良いじゃん〜!」
2年2組の学級委員長である新宮あまねと、同じく2年2組でバスケ部エースの野木駿介がいつも通りの小競り合いを行っていた。
「だってあんた、私のこといちいち他の部員に紹介するじゃない!恥ずかしすぎるわ!」
「えぇ、紹介したいんだよぉ〜」
「彼女でもなんでもないのに紹介しないでください!絶対行かないからね!」
「委員長のケチ〜〜!」
わいわいと賑やかな空気の中、教室の一角で佐藤晴大が小さく笑った。
隣の席の菊田さくらも、くすっと声を漏らす。
「仲良いね、あの二人」
「うん。……まあ、あれでバランス取れてるんだと思う」
晴大がそう言うと、野木がすぐさまこちらを振り向いた。
「おーい、晴大! お前ばっかいい席に座りやがって!」
「え?」
「さくらちゃんの隣とか、人生勝ち組かよ〜! 代われ!」
「……無理」
「冷たっ! 俺泣くぞ!?」
周囲が笑い声で包まれ、委員長――あまねが呆れたようにため息をつく。
「野木、そういうこと言うからモテないのよ」
「え、俺モテないの? 嘘だろ!?」
「現実見なさい」
その一連のやり取りを見て、さくらは机に肘をついて笑っていた。
まるで、普通の高校生のように。
――普通って、いいな。
ほんの少し胸が温かくなる。
そのとき、委員長がふと真面目な声で話しかけてきた。
「ねえ、菊田さん」
「うん?」
「芸能界って……大変?」
不意に聞かれ、さくらは少しだけ目を瞬かせる。
けれど、委員長の表情は真剣だった。
「私、テレビで見たときすごいなって思ったの。みんなが注目してて、それでも笑ってるの、かっこいいなって。……正直、尊敬してる」
その言葉に、さくらは柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。……でも、そんなに立派なものじゃないよ」
言葉にすると同時に、胸の奥が少しだけ痛んだ。
――本当の私は、そんなにかっこよくないのに。
笑顔の裏で泣いた夜のことも、悔しさで眠れなかった日も、誰にも見せたくなかった。
―――
教室の喧騒が少しずつ遠のいていく。
放課後のチャイムが鳴ると、みんなが帰り支度を始めた。
「委員長、バスケの試合は来るよな!?」
「しつこい、野木!」
笑い声が交錯する中、さくらはカバンを抱えながら外へ出た。
正門の外には、一台の車が停まっている。
黒いワゴンのドアが開き、女性が軽く手を振った。
「おつかれ、さくら。今日も撮影、よろしくね」
「木村さん……はい!」
マネージャーの木村舞香が手早く資料を確認しながら、さくらを車に乗せる。
夕方の光の中で、校門がゆっくりと遠ざかっていく。
――教室の笑い声。風に揺れるカーテン。
それらが、少しだけ恋しく思えた。
車窓に映る自分の顔は、いつもの“菊田さくら”の笑顔。
けれど、その奥では、どこか別の誰かを探している気がした。
〜人物紹介〜
新宮あまね→誕生日:8月27日、身長:157cm、外見:ポニーテール。真面目そう。
野木駿介→誕生日:11月11日、身長:178cm、外見:短髪。爽やかな感じ。
木村舞香→誕生日:6月1日、年齢:27、身長:165cm、外見:前髪無しボブ。はっきりした目元。




