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さくらキャンバス!〜君と見つけた春の光〜  作者: 夜空千咲
第1章 始まり〜文化祭編
24/30

24 文化祭直前、なんだけど……!?

 昼休みの終わり。教室の中は文化祭ムードで浮き足立っていた。


「ねぇ、ちょっと!あと三日で本番よ!」

 新宮あまねの声が教室に響き渡る。彼女の額にはうっすらと汗。

 その横で——。


「うぉ〜!! すげぇすげぇ!!」

 野木駿介が飛び跳ねている。


「……はしゃいで物壊さないでね!?」

 呆れ顔のあまね。


 そんな二人のやり取りを眺めながら、佐藤晴大はふっと笑った。

「楽しみだね」


 そう言いながら、隣の菊田さくらに目を向ける。

 けれど、さくらは机の上で両手を組み、何かを考え込むように俯いていた。


「どうしたの?」


 声をかけると、さくらはビクッと肩を震わせた。

「あ、ご、ごめん。考え事してて……」


「あら、どうしたの? 大丈夫?」

 あまねが心配そうに覗き込む。

 野木も不思議そうに首を傾げた。


「いや、うん。そんな大したことじゃないんだ」

 さくらは小さく笑ってごまかす。


 ——けれど、頭の中では、あの言葉が何度も反芻されていた。


 『調子に乗らないでよね。』


 東堂結衣の声が、まだ耳に残っている。

 気にしたって仕方がない。分かっているのに、どうしても心がざわついた。


 そんなさくらに、晴大がふいに声をかける。

「……そうだ、菊田さん。今日の放課後、空いてます?」


「……え?」


 途端に、野木が身を乗り出す。

「おっ? なんだなんだ〜? ついにデートか〜?」


 ガンッ。

「あいたっ!」

 あまねの拳が、的確に野木の頭に落ちた。


「よかったら、みんなも来てよ」

 晴大が穏やかに笑うと、さくらもあまねも、そして野木も首を傾げる。


 その日の放課後。


 教室は相変わらずの喧騒に包まれていた。文化祭の準備、笑い声、ガムテープの音。

 そんな中、さくらたちは静かな美術室へと足を踏み入れた。


 そこには、晴大が以前倒れた時に助けてくれた男子と、数人の美術部員の姿があった。


「わ……」


 息を呑む。

 美術室の壁いっぱいに広げられた模造紙には——。


 淡い色彩で描かれた、壮麗な城の絵。

 青空に伸びる塔、陽の光を浴びた石畳。

 そのすべてが手描きとは思えないほど繊細だった。


「えぇ〜!? すんげぇ! これ全部手描き!?」

 野木が叫ぶ。


「うん、そうだよ。文化祭の背景、皆んなで頑張って描いたんだ」

 晴大が少し照れたように笑った。


「ほぇ〜……」

 野木は言葉を失っている。


「ほんと、すごい。本当に、ありがとう」

 あまねは感嘆の息を漏らした。


「うん……お城も風景も、全部素敵」

 さくらの瞳が、柔らかく光を映す。


 晴大は少しだけ微笑んで、部員たちと目を合わせる。

「ふふっ」


 その穏やかな空気を切り裂くように——。


 ガラッ。

 ドアが勢いよく開いた。


 入ってきたのは、同じクラスの女子だった。顔色が真っ青で、息を切らしている。


「あまね!!」


 呼ばれたあまねがすぐに駆け寄る。

「どうしたの?」


 その女子は震える声で言った。

「し、しずくが!しずくがインフルになったって!」


 一瞬、空気が凍る。

なぜなら、しずくは物語のメインキャラクターの1人、シンデレラを虐める義姉を演じるキャストだからだ。

 

さくらも、野木も、晴大も、誰も言葉を発せなかった。


「……どういうこと?」

 あまねの声だけが、静かに響いた。


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