18 いつもの日々、変化の兆し。
保健室での一件から、1週間が経った。
だからといって、何かが変わったわけでもない。
ただ、いつも通りの日々をいつも通り過ごしていく。
それだけだ。
そうして季節は、あっという間に晩夏へと移り変わる。
学校は相変わらず文化祭準備の熱気で満ちていた。
クラスの出し物の練習や準備に追われながらも、どこか楽しげな声が響いていた。
晴大は他の担当者と共に美術室で演劇の背景を描いていた。
時には、野木やあまね、さくらが遊びに来る。
「おーい、佐藤、いい感じに描けてるな!」
「野木、邪魔しないの。あ、ちょっと、絵踏んでる!!」
「うわぁ!?ごめん、汚れてないよな!?」
「ほんっと馬鹿じゃないの!?」
そんな掛け合いを聞きながら、さくらと晴大は笑っていた。
絵の具の匂いと、夏の午後の空気が混ざり合う。
野木はその足で体育館へ向かい、バスケ部の練習に加わる。
あまねは時々差し入れを持ってきて、「ちゃんと休憩もすんのよ」と言いながらタオルを投げる。
賑やかで、少しだけ眩しい夏だった。
気づけば八月も終わり。
楽しかった時間は、まるで走り抜ける風のように過ぎていった。
──そして、夏休みが終わった。
「はぁ〜〜……終わっちゃったよぉ!!」
登校初日の朝、野木が机に突っ伏して嘆いた。
「はいはい。ちゃんと宿題はしたの?」
あまねが呆れ顔で腕を組む。
「あともうちょっとで終わる」
「“もうちょっと”って何? 今日が締切なんですが?」
「……うぐっ」
野木が顔を上げると、周りの数人が笑っていた。
「夏休み、楽しかったね!」
さくらが隣でにこっと笑う。
「うん、そうだね」
晴大も穏やかに微笑み返した。
「ふふ、文化祭楽しみだね」
「うん、楽しみ」
その声に、窓の外の蝉の鳴き声が重なった。
もう夏は、終わりを告げようとしている。
***
朝のホームルームが終わるころ、担任の小川先生が晴大の名前を呼んだ。
「佐藤、ちょっといいか?」
「はい?」
晴大は不思議そうに立ち上がる。
教卓に近づくと、担任が少しだけ声を落とした。
「なあ、今日の放課後、少し空いてるかな?」
「え……?」
突然の問いに、晴大は一瞬戸惑う。
けれど、すぐに静かにうなずいた。
「……はい、空いてます」
担任は小さく笑って、「そっか、じゃあ放課後、職員室に来て」と告げた。
理由は分からないまま、晴大は自分の席へ戻る。
胸の奥に、かすかな不安が入り混じる。
その様子を隣の席から眺めるさくらは、不思議だというように首を傾げる。
──夏の終わりと共に、何かが動き出そうとしていた。
久しぶりに後書きを書きます。
そういえば、さくらが転校してきた初日に担任が登場していたはずですが、名前を出していませんでした。
担任の名前は小川亮、35歳、教科は英語。あだ名は、名字から連想される国民的愛されキャラ「チ◯◯ワ」です。




