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さくらキャンバス!〜君と見つけた春の光〜  作者: 夜空千咲
第1章 始まり〜文化祭編
10/30

10 夏祭り!

 文化祭の準備に追われている日々。気づけば終業式が近づいていた。

 教室には色とりどりのポスターと絵の具の匂いが混じり、すっかり夏の空気が漂っている。


「なあ、夏休み入ったらさ、夏祭り行こうぜ」

 放課後の教室で、野木駿介が唐突に言った。


「夏祭り?」とあまねが顔を上げる。

「そうそう!ほら、駅前の神社でやるやつ。屋台めっちゃ出るんだって!」

「楽しそうね」

「でしょ?」と笑う野木に、あまねは呆れながらも少し笑った。


 その日の帰り道、あまねは「せっかくだし、さくらも誘ってみよう」と言い出した。

 そして、さくらは「じゃあ佐藤君も一緒に!」と嬉しそうに提案し、4人で行くことが決まった。



 そして迎えた夏祭り当日。


「どこ行くんだ?」

 出かけようと靴を履いた晴大に、父親が声をかけた。

「友達と、夏祭りに……」

 正直に答えた晴大に、父は渋い顔をする。

「遊んでる暇があったら勉強しろ。来年は受験だぞ」

 いつもの口調だったが、今日はなぜか堪えた。


「……自分のことは、自分で決めるよ」

 小さくそう言って、晴大は玄関を出た。

 夜風の匂いが少しだけ胸を軽くした。



 集合場所の神社前。

 すでに3人は揃っていた。


「おー、来た来た!」

 野木が手を振る。

 野木はTシャツにジーンズという動きやすそうな服を着ていた。そして、あまねもラフな普段着というような、黒い半袖のシャツに水色のズボンの組み合わせだ。

そしてその隣には、一際輝いている人間が立っていた。そう、菊田さくらである。

淡い桜柄の浴衣を着て、髪をバレッタで留めている。学校では見たことのない姿に、思わずドキリとする。


「晴大くん、浴衣じゃないんだね!」

「うん……時間が無くて」

「そっか〜。 いつか見てみたいな」

 さくらが微笑むと、晴大は一瞬だけ目をそらした。


「何だよ〜イチャイチャしやがって!てか、さくらちゃんの浴衣姿可愛すぎるんだが?」

 野木が興奮気味に言う。そしてすぐに、

「委員長も浴衣着れば良かったのに〜」

 と口を尖らせた。

「浴衣ねぇ……、あんたに見せる浴衣は無い!」

「……どういうことだよ!?」

訳がわからないという様な野木を軽く肘で小突くあまね。


「いってぇ!委員長、容赦ねぇ!」

「当然でしょ」

 さくらがくすくす笑い、晴大もつい小さく笑った。



 夜の神社は、光と音で満ちていた。

 りんご飴、焼きそば、金魚すくい。

 野木はまるで子どものようにはしゃぎ、あまねはその後ろを呆れながらも追いかける。


「野木、そんなに食べて大丈夫?お腹壊すわよ」

「俺の胃袋は無限大だって!見てろ、次たこ焼きいくぞ!」

「……学習しないわね」


 さくらと晴大は少し離れて並んで歩く。

「にぎやかだね」

「うん。でも……こういうの、悪くないね」

 晴大の口調は穏やかで、どこか満ち足りたようだった。



 やがて、夜空に大きな音が響いた。

 花火が上がる。


 4人は少し離れた川沿いに移動して、並んで座った。

 色とりどりの光が空を染める。


「なぁ、願いごとしようぜ」

 野木が言い出した。

「花火に願いごとって……そういうの、あるんだっけ?」とあまね。

「知らねぇけど!言ったもん勝ちだろ!」

 野木は両手を合わせて大声で叫ぶ。

「億万長者になれますよーに!!」


「何だそれ」と小さく笑う晴大。

「ほんとに願う気あるの?」と呆れ顔のあまね。

「あるある!真剣に!」

 笑いながら、各々が夜空に咲く満開の花に顔を向けた。

「私は……ずっと健康でいられますように」と手を合わせるあまね。


 さくらも、空を見上げて言う。

「これからも、みんなといられますように」

 それを聞いた晴大は、ほんの少しだけ目を伏せる。


(僕は……僕の生き方を見守っていてください)

 胸の中でそう願い、空を見上げた。

 

「お?何願ったの?」

野木が興味津々に晴大に近づく。

晴大は少し斜め上を見た後、「秘密」と一言言った。


「えぇ〜〜!?気になる!!」

そう騒ぐ野木に釣られ、あまねやさくらも少し気になっている様子を見せた。


「秘密ったら秘密だ!」

頑なに言う晴大に、思わず皆が吹き出す。


そんな4人の背中を、華やかな煌めきが優しく照らした。


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