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虚構  作者:
3/3

開示-弐-

午前十一時手前。


槐・百瀬・桐生・国府田の4人は都雅の入り口に立っていた。

「・・・そろそろかしら。」

槐が右手元の腕時計で時間を見ながら呟く。


丁度その時、入り口の門から一台の車が入ってきた。

車は黒塗りの高級車で、都雅で使う送迎車だ。

「来ましたね、時間ピッタリだ。」

そう言ったのは百瀬。そう言っている間に、車は槐達の待機している旅館入り口、

その目の前に来てゆっくり止まった。


車の中から降りてきたのは、3人の男女。



「小野塚様、東雲様、真田様、本日は都雅へ、ようこそいらっしゃいました。」

そう言いながら、女将の桐生が頭を下げる。

槐、百瀬、国府田も桐生と同時に頭を下げ、旅館やホテルでの

お出迎えらしい形となる。


「いいえー!義章からのお誘いで来た身ですから、そんなご丁寧になさらずに!

 それにわざわざ貸切にしてもらっちゃって、

 こっちがお礼を言わなきゃいけないくらいです!」


そう言って気さくに話すのは、小野塚蛍(おのづかほたる)という女性。

その雰囲気から、とても付き合いやすい女性という印象を受ける。


小野塚に続き、もう2人も続く。

一方は、オドオドした感じの少し頼りなさが垣間見える男性。

もう一方は、目線を吊り上げていかにも不機嫌そうに見える女性。

「ほーら!圭介と未来も挨拶しなよー!」

と小野塚が声をかけると、2人もすぐに挨拶してきた。


「ど、どうも。真田圭介といいます。

 今日から数日間、よろしくお願いします。」

慌てて挨拶したようで少し言葉がどもったこの男性は、真田圭介(さなだけいすけ)という。

見た目からは頼り無さそうな、大人しい感じの印象。


「東雲未来です。数日間、お世話になります。」

落ち着いた物腰で挨拶をしたのは、東雲未来(しののめみく)という女性。

不機嫌そうに見えたけれど、挨拶する際には悪印章の欠片も無い程。

むしろ物腰柔らかで、落ち着いた大人の女性という雰囲気を感じた。




「お客様、ようこそ都雅へ。私は副支配人の百瀬と申します。

 お荷物をお預かり致します。どうぞ中へ。」

百瀬がそう切り出し、槐は3人の荷物を預かる。

そして中でチェックインを済ませた3人は、

女将と百瀬の2人で部屋へと向かっていった。



「いやー代理、話を通してもらって本当にありがとうございました。」

槐はチェックインしたデータを纏めていたのだが、隣にいた国府田が不意に話しかけた。

「お気になさらないで下さい。こうした、貸切というのも勉強になりますから。」

「ははっ、殊勝な心がけですね、素晴らしい。」

槐の生真面目な態度に、国府田は軽く返す。


「でもね、これが最後の機会かな・・なんて思ったものですから。」

「・・・最後の機会?」

国府田が突如意味深な言葉を発し、槐が疑問をぶつけた。


「圭介と未来、あの2人警察なんだけど、まだ2人が新米だった頃はね、

 2人は夫婦だったんです。」

「だったということは・・今は。」

「えぇ、1年くらい前に離婚しました。」

「そうだったんですか・・・。」





ふぅと溜め息をついてから、国府田が過去を語り始める。

「元々俺達4人は大学の先輩後輩でしてね。

 男女4人のくせに随分気楽にやれてたんです。」


「各々就職先が決まって、当時から付き合っていた圭介と未来が警察に。

 蛍は接客業、俺は都雅の見習い料理人になった。」


「卒業してから1年くらい経ってかな、2人が結婚を報告してきてね。

 あの頃は2人供新米刑事だったから、まだ大丈夫だったのかもしれない。」


「だけど・・代理は知ってますかね?6年前の園児誘拐殺人事件。」


「あの事件で指名手配された犯人を、たまたま未来が捕まえたんだ。

 それから昇進、昇進の繰り返し。気がつけばあっという間に警部。」


「その頃から2人の生活に致命的なズレが出たようですね。

 未来が警視になった辺りでは、もう修復不可能だった。」


「別れは起こるべくして起きた。まぁそれは仕方の無いことです。」


「ただそれ以来、未来の奴が変に俺等にまで遠慮しちゃって。」


「そのうえ転勤まで決まって、三~四年くらいは会えないってのがわかったんです。」


「ただでさえ疎遠になりかけてるのに、

 転勤したんじゃ、もういつ関係が切れるかわからない。」


「だから蛍と2人で、もう一度昔みたいに戻る手段を練っていたんです。」


「勿論、圭介と未来にとっては余計なお節介かもしれませんが・・・。

 私は、せっかくこの年までやってこれた友人達を

 そう簡単に手放したくなかったんです。」




そこまで話し終えると、国府田は深い溜め息をついた。

「まぁ、四十を過ぎたおっさんとおばさんの、最後の抵抗ってやつですよ。」

「そんな事情があるとは知りませんでした・・。」

槐はそう答えながら、バツの悪そうな顔をする。

正直な話、槐自身にとっては、そんな事などどうでも良かった。

自分はただ、副支配人としての責務を果たせばそれで問題無いと。


料理長の、そして小野塚さんのやろうとしていることは、

自身が言ったように間違いなく”余計なお節介”になると思う。

四十を過ぎた大人なんだから、各々自力で何とでも出来る年だ。

わざわざ他者の力を借りずとも、何かしらの決着や結論くらいつけられる。



自分には生涯、縁の無いであろう話だ。

その時の槐はその程度に考え、それ以降は黙々と仕事をこなすことに集中した。


外では雨足が強まり、いよいよ本降りになろうとしているのに。

ご無沙汰の投稿です、煉です。


不定期にも限度ってものがあるだろう、というレベルに

期間が空きすぎてしまいました・・・。


今後の投稿も不定期なのは変わらないと思いますが、

今回程の長期間を空けぬよう、精進していきたいと思います。

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