ある魔法少女の手記
気がつけばボクは彼女に追い詰められていた。
後ずさりする背中に冷たい石壁が触れる。
「もうあきらめてください……」
穏やかな声の少女がゆっくりと近づいてくる。
歩みを進めるたびに黒いドレスの緑色のフリルが揺れる。
抵抗するだけの魔力はもうとっくに使い果たしてしまった。
ボクの魔法で作り出した光のナイフが、彼女のからだを何百回も貫いた、はずなのに……彼女は一度も歩みを止めなかった。
「ごめんなさい、私、痛みに耐えられるので」
どこからともなく植物のつるのようなものが伸びてきて、ボクの四肢の自由を奪った。力を入れてもビクともしない。
「ボクを……どうするつもりなの……」
言葉は通じる。心から説得すれば助かる道は残されているかもしれない。
「本当は、こんなことしたくないのですが……貴女はとても悪い魔女なので、死んでもらいますね」
皆んながそう言ってるので、と彼女は困った顔をしながら言った。
「えっ、みんなって?誰がそんなこと言って……」
慌てて弁明しようとしたボクの言葉を彼女は遮った。
「皆んなは皆んなですよ!今もほら、聞こえませんか?」
そいつは悪い魔女だ、殺せ、魔女は嘘つきだ、騙されないで……彼女にはそんな声が聞こえているらしかった。
「ねっ、ねっ?」
「誤解だよ!ボクはっ、ボクも魔女を殺すためにここへ来ただけだから!」
ほらやっぱり嘘つきだ、あんなにシイナちゃんを傷つけたのにどの口が、早くしないと災いを振り撒くぞ……
「皆んなもそう言ってますので……ごめんなさい」
彼女の右手が一瞬またたいて、いつの間にかその華奢な手には似合わない凶器が握られていた。
「私の武器ってこれしかなくて……看守さんのような大きな鎌だったら、苦しまずに一瞬で楽にしてあげられるんですけど」
バチンッ!
彼女がその凶器に力を込めると、先端の突起に青白い火花が舞った。
「上手くできなかったらごめんなさい」
ボクの首筋に凶器を押し当て、悲しそうな顔をしながら彼女はスイッチをいれた。
瞬間ボクのからだは跳ね上がり、首から全身へ激痛が走る。
ボクの中の魔法少女の不思議な力が、失いかけた意識を引き戻した。
「ごめんなさい!ごめんなさい!痛かったですか?」
彼女は何度も謝りながら、その凶器をいろんな場所に押し当てては念入りにスパークさせた。
バチバチッ!
「わ、わ、これでも逝けませんか?」
バチンッ!バチンッ!
「やっぱり私の武器じゃダメみたいですね……しゅん」
残念そうにつぶやきながら、彼女は一歩後ずさった。
「看守さんの言う通り、私の武器には殺傷能力がないみたいです」確実な方法にしますねと言って、ボクの両手を固縛していたつるをするすると解いて、首筋に巻きつけていった。
「初めからこうすればよかったです。私の武器で楽にしてあげられるかの実験だったのですが、失敗しちゃいました」
何重にも巻きついた彼女のつるが、ボクの気道を少しずつ締め上げ、押し潰していく。呼吸ができず必死にもがいていた手にも力が入らなくなってきた……意識が遠のいていく。
不意に、耳元で彼女の声が聞こえた気がした。
「魔法少女って命が尽きる瞬間まで……かわいいですね」
ボクが最期に見たのは、彼女のにこにこした笑顔だった。
「お疲れ様でした」
電気ショック : 25ヶ所37回 失敗
首締め : 7分27秒 成功
失禁 : 有り
嘔吐 : 無し