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16-4・ゲンジvsジャンヌ~串刺し杭~ネメシスの作戦

-戦闘開始直後まで遡る・妖幻ファイターゲンジvsマスクドジャンヌ-


 ジャンヌを割り当てられたゲンジ(紅葉)が、巴薙刀を振り回しながら突進をする!対するジャンヌは、先端が槍状の旗を手放し、剣を抜刀して構える。

 お勉強が“ほんのチョットだけ苦手”な紅葉は、「ぶらど3せい」とか「へいぐ」の名を聞いても解らない。だけど、ジャンヌ・ダルクについては、世界史で習ったので覚えている。自分と同じ年くらいで戦争に参加したのが衝撃的で、授業が終わってから、ネットでジャンヌ・ダルクについて調べた。


 農夫の娘でありながら16歳で戦場に立ち、祖国を救ったのちに、祖国の王に見捨てられ、19歳で異端の汚名を着せられて火刑で果てた。キリスト教の価値観では、最後の審判の時まで肉体が残っていなければならない。ゆえに、火刑は、肉体的、精神的、そして宗教的な観点においても、屈辱的な厳罰だった。そのうえ、遺灰はセーヌ川に流され、ジャンヌダルクという英雄の存在は、何一つ残されずに、この世から消された。


「可哀想な人だけどっ・・・

 だからって、生き返って、復讐しょぅってのゎ、なんか違ぅと思うっ!!」

「フン!貴殿と、思想の齟齬を議論をする気は無いっ!!」


 ゲンジの巴薙刀と、ジャンヌのフィエルボワソードがぶつかる!鍔迫り合いの末、ジャンヌが巴薙刀を弾いて、数歩後退!直ぐさまゲンジの懐に飛び込んでフィエルボワソードを振るが、ゲンジは巴薙刀の柄で受け止めた!


「ほぉ・・・剣技は互角のようだな!」

「なかなか、やるぢゃん!!」


 2人はしばらく鍔迫り合いを続け、その後、2~3回、刃をぶつけ合い、また、鍔迫り合いをして、ジャンヌが数歩引く!だが今度は、ゲンジが素早く踏み込んで、ジャンヌが体勢を立て直すよりも早く、巴薙刀を振り下ろした!慌てて剣を構えるジャンヌ!しかし、ゲンジが力任せにジャンヌの剣を弾いて真っ向から一閃!ジャンヌの右肩に鋭い一閃を叩き込んだ!


「グゥゥッッ!!」


 マスクの下で顔の表情を歪め、大きく後退をするジャンヌ。右肩から青い靄が湧いて出て闇夜に溶け込み、その後、直ぐに傷口が塞がる。ジャンヌは傷跡を見つめた。


「えっ?直っちゃうの?」

「・・・闇属性の攻撃?

 我が体と近い属性の攻撃ゆえに、大きなダメージにはならなかった。

 貴殿、一体?」


 構えていた剣を下げ、ゲンジを見つめるジャンヌ。


「我らと同じ・・・闇の生命?もしや、貴殿もリベンジャーか?」

「んぁ?りべんぢゃってなに?」

「いや、違う、我らを形作っている魔力とは違う力か?

 だが、我らの根源と似た力だ。」

「あのぉ~~~・・・何言ってるかワカンナイよぉ~~~」

「余計な問答だったな!どのみち、我らは、貴殿等を倒す契約を結んでいる!

 貴殿の根源がなんであれ、私には関係無い!」


 剣の技量はほぼ互角(同じくらい下手)。接近戦では決着が付きにくいと判断したジャンヌは、ベルト左右のホルダーから片手に3本ずつナイフを抜いて、気合いを込める。優雅な仕草で両手を胸の前でクロスしたら、ナイフに悪魔を思わせる不気味な顔が浮かんだ。


「とぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!」


 一斉に投擲!奥義“黒炎の小悪魔達”が、不気味な笑い声を発しながら、1つ1つに意思があるかのように、不規則に軌道を変えて飛び回る!ゲンジは数歩後退して回避するが、黒炎の小悪魔達は軌道を変えて、再び、ゲンジ目掛けて飛んで来た!

 回避をしてもキリが無いと判断したゲンジは、目でナイフを追わず、ナイフの呼吸を読む!ナイフの宿った意志の息遣いが聞こえてくる!ナイフの意志、すなわち軌道が見えた!ゲンジは、巴薙刀を振って6本のナイフ全てを叩き落とす!


「・・・なに?全ての軌道を読んだ?」

「すっげ~!ジャンヌダルクすっげ~!!武器が勝手に動くって超すっげ~!!

 よ~~~しっ!ァタシも、やってみよっ!!」


 ゲンジはYスマフォ画面にナイフと指でなぞって、ナイフを召喚する!ただし、ナイフはナイフでも、出現したのは、ステーキナイフだった!だが、ゲンジはジャンヌの真似をして、左右の手に3本ずつ持って気合いを込める。ナイフに子供が書いた落書きのような顔が浮かんだ。


「とぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっ!!!」

「なにぃっ!?バカな!!?」


 一斉に投擲!奥義“子供が落書きをしたステーキナイフ”が、楽しそうに笑い声を発し、1つ1つに意思があるかのように、不規則に軌道を変え・・・たいんだけど、軌道は不規則だが、6本全てが同じ軌道で並んで飛んでいる!ジャンヌは、フィエルボワソードを振り回して、ステーキナイフ全てを叩き落とし、ゲンジを睨み付けた!


「何だ・・・オマエ?」

「え~~~と・・・『何だ』と言われても・・・

 妖幻ファイターゲンジです!って答えればィィのかな?」


 ゲンジの思惑通りにはいかなかったが、初見でいきなり技をコピーされた。100点満点中40点程度の完成度だったが、それでもジャンヌは驚きを隠せない。

 立ち振る舞い、思考、知識、全てが素人だが、順応力と吸収力は恐ろしく高い。




-バルミィvsマスクドヴラド-


 誇り高き王・マスクドヴラドには、倒れている女を嬲る趣味は無い。動けないネメシスは放置をして、バルミィと激突をする!


 バルミィが放つジェダイト弾(光弾)やフリーズ光線を回避するヴラド!ヴラドが打ち下ろした巨大杭を、飛んで回避するバルミィ!ヴラドは空で構えるバルミィを睨み付け、腰を低く落として両足に力を込めてジャンプ!人間とは思えない高さまで飛び上がり、バルミィを蹴り飛ばした!バルミィは、真っ逆さまに落ちて地面に激突する!


「自らの足で空を自在に駆ける行為は、人類の夢!

 そして王である我ですら叶わぬ夢!

 それを、小娘ごときが、こうも簡単に・・・・些か、目障りだ!!」


 ヴラドは、高い跳躍状態のまま、巨大杭を頭上に掲げ、渾身の力を込めて、地上で構えるバルミィ目掛けて投げつけた!


「はぁぁぁっっっ!!奥義・カズィクル・ベイ(串刺し公)!!!」


 禍々しオーラを纏った巨大杭が、バルミィ目掛けて凄まじい勢いで飛んで来た! その迫力を「危険」と感じ取ったバルミィは、素早く後退して回避!

 巨大杭が地面に深々と突き刺さる!次の瞬間、巨大杭に込められていた魔力が地上に溶け込み、直径10mの範囲全体に、鋭利に尖った長さ5mほどの無数の杭が地上から生えて、バルミィの全身を貫いた!


「ばっばるぅぅぅっっっ!!」


 ネメシス(美穂)は、半身を起こして、串刺しの光景を見ていた。串刺しにされているが、コアは無事だ。バルミィには申し訳ないが、喰らったのがバルミィで良かった。もし自分ならば確実に死んでいた。

 ただし、命に別状が無いとは言っても、杭に貫かれたままではバルミィは動けない。どうにか杭を取り除かねばならない。


 周りを観察して解った事がある。真奈と青年(相良)と少年(真島)の目が虚ろなのは同じだが、真奈と青年がまだ平然としているのに、ヴラドを召喚した少年だけが異常に消耗をして息が上がり始めている。更によく観察すると、真奈と青年では、ジャンヌを召喚した真奈の方が、若干、呼吸が荒い。


「なるほど、怪物共のエネルギー源は召喚した真奈達・・・

 無尽蔵ではないって事か」


 ネメシスは手足を動かして、麻痺の度合いを確認する。まだ回復はしていない。バルミィは戦闘不能で、残るはゲンジ(紅葉)とセラフ(麻由)だけ。怪物3匹を相手にするのは、かなり無理がある。だけど、申し訳ないが、もう少しだけ凌いでもらう。




-ゲンジvsジャンヌ、セラフvsヘイグ-


 ゲンジ(紅葉)が、巴薙刀を振り回しながらジャンヌに突進!ジャンヌは、再び6本のナイフに気合いを込め、一斉に投擲!黒炎の小悪魔達が、不気味に笑いながら不規則に飛んでゲンジに襲いかかる!しかし、ゲンジは、巴薙刀を振り回して最初に飛んで来た2本を弾き落とし、次に飛んで来た1本を回避し、「薙刀では細かい動きに対応できない」と判断して巴薙刀を手放し、妖力を溜めた拳で、残る3本と反転をして飛んで来た1本を叩き落とした!


「素手だと!?バカな!!」

「んぁぁぁぁっっっっっっ!!!」


 ジャンヌは目の前で起きた光景に目を疑う!その僅かな隙を突き、ゲンジは、素手のままジャンヌに突進!懐に飛び込む直前で‘清めの巨大ハリセン’を召喚!舌っ足らずな発音で九字護身法を唱える!


「昔の人のユ~レイなら、効くはずだぁ!!

 清めのハリセンアタァァ~~~~クッッッ!!!」

ばちこぉ~~~~~~~~ん!!

「ぐぅぅぅぅっっっっ!!!」


 清めのハリセンがジャンヌに炸裂!ジャンヌはダメージを受け、苦しそうに数歩後退をする!清めの力が宿った攻撃なので、恨みを糧にして蘇ったリベンジャーには有効だ!


「コホォ~~~・・・やらせねえよっ!!」


 セラフ(麻由)との戦闘が膠着して苛立っていたヘイグが、ゲンジ目掛けて援護射撃を放つ!

 だが間一髪!飛び込んだセラフがゲンジを抱きかかえて横っ飛び!直撃を免れた2人が、絡み合ったまま地面を転がり、立ち上がって体勢を立て直す!


「マユ!?」

「申し訳ありません!

 私が、アイツ(ヘイグ)をもっと引き付けておくべきでした!」

「アリガト、マユ!ァタシこそ、もっと周りを見るべきだった!」


 助けられたジャンヌは、清めの攻撃で一定のダメージを受けたようだが、まだ致命傷には至っていない!片膝ついて俯いたまま“黒炎”を生み出して、剣の刀身に纏わせる。そして、顔を上げるなり、自分を救ったヘイグに向かって剣を振るって“黒炎”を放った!漆黒の炎が、ヘイグの身体を包み込んで燃え上がる!


「ぎゃああああああああああああああっっっ!!!!????」


 絶叫しながら地面を転げ回って悶絶するヘイグ。立ち上がり、無言で見つめるジャンヌ。やがて炎が消え、立ち上がったヘイグがジャンヌに詰め寄った。


「なん・・・でだよ?・・・・助けてやったじゃねえか?」

「誰が助けを頼んだっ!?」

「・・・!?」

「誇り高き騎士の戦いを汚しおって!

 たとえ冥府魔道に堕ちようと、私は、騎士の誇りまでは失っておらぬっ!!」


 鋭い眼光と気迫に圧され、ヘイグは立ち止まってジャンヌをポカンと眺めるばかり。ゲンジとセラフも、仲間割れの理由が理解できず、ジャンヌとヘイグを見つめている。


「神託の騎士と殺人鬼では相容れぬ・・・か」


 ヴラドは、睨み合うジャンヌとヘイグ眺めている。戦いが消極的なセラフ(麻由)よりも、果敢に踏み込んでいるゲンジ(紅葉)の方が戦士として魅力的に感じる。興味深いが、「代われ!」と言っても、ジャンヌは拒否をするだろう。ヴラド自身、ヘイグのように、騎士の戦いに横槍を入れて、誇りを汚す趣味は無い。


 ネメシス(美穂)は、体を休ませながら状況を整理する。ヴラドは、召喚者の疲弊ぶりを見ると、大技を撃てるのは、おそらく、あと1回か2回。ただでさえ、力押しの攻撃なので、場合によっては、あのまま戦っているだけでもガス欠になりそうだ。


「よし、決まった!」


 ヴラドは突っ立って休んでいる。せっかく一番疲弊してるのに、これ以上休まれて、体力を回復されるのはマズい。

 ネメシスは、手足を動かして麻痺の状況を確認する。まだ若干の痺れは有るが、戦闘に影響は無さそうだ。


「いけるっ!!」


 ネメシスは、脇に転がっていたレイピアを掴んで、仰向け状態から勢い良く跳ね起き、素早くヴラドの背中に向かって突進!ヴラドはネメシスの接近に気付き、頭上に手を翳して空中から新たな巨大杭を出現させて、ネメシス目掛けて打ち下ろした!しかし、ネメシスの狙いはヴラドに非ず!突進速度を弱めて巨大杭を回避してから、再び加速をして打ち下ろされた巨大杭を駆け上がり、ジャンプでヴラドの頭上を飛び越え、ゲンジ&セラフと合流をした!


「おぉっ!ダイジョブだった、ミホ!?」

「さて、そろそろ反撃開始!仕切り直すぞ!

 先ずは、バルミィの救出だ!紅葉、今の体力で、神鳥、あと何回いける!?」

「ん~~~~・・・たぶん、2~3回はダイジョブ!」

「2回撃てれば充分!葛城は、まだまだ戦えるか!?」

「まだ充分に戦えます!」

「オマエは、ひたすら、距離を空けて弓矢での牽制や攻撃に専念しろ!」

「お、お言葉ですが、少しくらいは接近戦だって・・・」

「オマエの接近戦が通用する相手じゃない!そのくらい解れ、バカッ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ミホ、ァタシゎ!?」

「オマエは接近戦込みで臨機応変に戦え!ただし、深追いは禁物だ!」

「・・・ん!」

「作戦を伝える!・・・ごにょごにゅごにょ」

「ん!解った!!」 「了解です!」


 ネメシス(美穂)から小声で作戦を伝えられ、ウンウンと何度も頷くゲンジ(紅葉)。セラフ(麻由)は接近戦がアテにされていない事が不満だが、今は不平を漏らしている時ではないと判断して、ネメシスの提案を承諾する。

 作戦開始!3人は互いの顔を見て、もう一度頷いて確認をし合い、自分たちの“持ち場”に向かって一斉に駆け出した!



 リベンジャーは、パラレルワールドになる『妖幻ファイターザムシード』で登場したスペクターの上位互換。人間では知識や技術が無くて召喚できなかった者を、天界人ならば召喚できる。

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