16-3・復讐者召喚~ネメシス&バルミィvsヴラド
-今に至る-
「何の為に真奈を!?嫌な予感がするっ!」
「学校に行こうっ!」
「そうね!熊谷さんと、弁才天を探しましょう!」
紅葉&美穂&麻由&バルミィは、堤防を駆け上がって優麗高に向かい、数分後には正門前に到着。校庭内に入ると、紅葉と麻由が「嫌な気配」を感知する。美穂の嫌な予感も強まる。
「グラウンド・・・かな?」
「はい、グラウンドの方から、一際強く感じられます」
「よし、行ってみよう!」
「ばるるっ!」
4人は変身をしてから、グラウンドに向かって校庭内を駆ける。
-グラウンド-
ユカリの呪文詠唱に習い、虚ろな目をした真奈&真島&相良が魔方陣に向けて掌を翳し、召喚呪文の復唱をする。それぞれの魔方陣の真ん中では、召喚の媒介となる懐中時計が宙に浮いている。魔方陣が鈍色の光を放ち始めた。呪文詠唱が進むにつれて魔方陣は輝きを増し、周辺は禍々しい雰囲気に包まれていく。
術者3人を操るユカリは、作戦の成功を確信して邪悪な笑みを零す。
「伝承より目覚めよ、血塗られた復讐者!我が刃となりて戦え!」
「伝承より目覚めよ、血塗られた復讐者!我が刃となりて戦え!」×3
召喚呪文の最後の詠唱が終わった。それぞれの魔方陣の真ん中に盛ってあった土が舞い上がり、人型を作る。
-校庭-
ゲンジ(紅葉)&ネメシス(美穂)&セラフ(麻由)&ハイアーマードバルミィが、グラウンドに向かって走る!
夜にもかかわらず、ハッキリと漆黒と解る雷雲がグラウンド上空に浮かんでいる。そしてそれは、 意思があるかのように不気味に蠢きながら巨大化して渦を巻く。
グラウンドに辿り着くゲンジ&ネメシス&セラフ&バルミィ!
空に浮かぶ漆黒の雲から巨大な3つの稲妻が垂直に降り注ぎ、グラウンドに描かれた魔方陣(土で象られた人型)に落ちた!
立ち込める土埃が収まった後、真奈達3人の目の前、3つある魔方陣の、それぞれの中心には、見るからに“只者ではない”邪悪なオーラを発散させてる3人が、月の明かりに照らされて立っていた。首には召喚に使われた懐中時計をぶら下げている。
真ん中(真島の正面)は、身の丈が2m近い筋肉質の大男。黒い長髪をなびかせている。宝石が散りばめられた赤いマントを裸の上半身に直で羽織り、下は革のライダーパンツとブーツ。そして、自分の身長くらいの長さで電柱みたいに太い木の杭を、片手で軽々と担いでいる。
次に左側(相良の正面)、平均的な身長の男だった。短く整えた黒髪をピッチリとなでつけている。 奇怪なのは、ガスマスクで覆われていて素顔が見えない事。肩まで届く長いゴム手袋、ゴムのエプロン、腰まで覆うゴム長靴。全身ゴムづくしだ。そして背中に背負ったタンクからホースが伸びていて、片手に持った噴霧器に繋がっている。
最後に右側(真奈の正面)は、奇怪な男達に不釣り合いな、白人の美少女だった。ブロンドのショートヘア、男装で身を包み、先端が槍状の旗を持ち、腰には剣やナイフを装備してる。その格好から、一見、少年にも見えるが、その艶やかな美しさは、明らかに少女である。
リベンジャー(復讐者)、召喚完了!
召喚は成功した。だが、ユカリには、まだ、やるべき事が残っている。再び、真奈&真島&相良に掌を翳し、3人を操りながら言葉をかける。
「召喚の主達よ・・・
リベンジャーの依り代はオマエ達のままに、
リベンジャーの指揮権のみを、私に譲渡せよ!」
「はい、契約主の意のままに」×3
真奈&真島&相良は、操られるまま、ユカリの申し出に応じる。ユカリは、続けて、3人のリベンジャーに掌を翳す。
「マスター(召喚の主)達の許可は得た!
我が指揮の下、我が剣となりて、その力を示せ!」
筋肉質な大男が、担いでいた巨大杭を頭上で軽々と回転させ、尖った先端をユカリに向ける!
「汝が召喚者の代行者という事は認めよう!だが、立場は弁えよ!
それが、臣下ふぜいが、王に対する物言いか!?」
大男の威嚇に対して、ユカリは表情一つ崩さない。微笑を浮かべたまま、大男に対して片膝を付き、頭を下げる。
(たかが使い魔とはいえ、王には王の扱いが必要という事か)
大男の名は、串刺し公・ヴラド3世。15世紀、ワラキア公国(現・ルーマニア南部)の王。【串刺し公】の由来は、侵略してきたオスマンの捕虜2万4千人を串刺しにして、見せしめに“串刺し死体の林”を作った事。進軍してきたオスマン帝国軍の兵達は、これを見て戦意喪失して逃げ帰った。
「我が王、ヴラド公!我らの為に、その力をお示し下さい!」
「いいだろう!!我が覇道を、とくと見よ!」
「はっ!ありがたき幸せ!!」
「にっ~ひっひっひ!存分に復讐を楽しませてくれるんだろ!?ね~ちゃん!」
「もちろんよ、ヘイグ!得意の硫酸で、憎き者どもを存分に焼き苦しめなさい!」
「にっ~ひっひっひっひ!いいね、いいね~!その言い方!
ね~ちゃんとは気が合いそうだ!」
(下品な使い魔ね。だけど、嫌いではない)
ガスマスクの男の名は、硫酸男・ジョン・ジョージ・ヘイグ。20世紀、イギリス・リンカンシャー州スタンフォード出身の連続殺人鬼。金持ちの老人に商売の話を持ち掛け、言葉巧みに大金を巻き上げては殺害。死体を硫酸で溶かして証拠隠滅をした。
「ジャンヌ、オマエも、この契約に反論は無いわね?」
「マスターの同意があるならば、私に異論は無い!復讐を果たすのみ!」
騎士の名は、聖女・ジャンヌ・ダルク。オルレアンの乙女。15世紀、フランスvsイギリスの百年戦争で活躍した女騎士。フランス軍躍進の功労者にもかかわらず、イギリス軍に捕縛された際に、フランス国王から見捨てられ、異端(魔女)の汚名を着せられて火刑にされた。
「これで、リベンジャーのエネルギー供給は、
私の可愛いペット達(真奈&真島&相良)のまま、
私はリスクを背負う事無く、復讐の為に必要な戦力を得た!!」
ユカリは、リベンジャー達への支配権が繋がった手応えが感じる。高笑いをして、グラウンドの端に立つゲンジ(紅葉)&ネメシス(美穂)&セラフ(麻由)&ハイアーマードバルミィを指さした!
「オマエ等を召喚した理由は一つ!!オマエ達との契約はただ一つ!!
そこに居る小娘3人と宇宙人を血祭りに上げろ!!
特に、天の巫女と鬼娘は念入りにね!!」
その表情は狂喜に満ちており、ゲンジ達を戸惑わせる!
「アイツ、不動明王からセイトカイチョーさんを取り返しに行った時に
いた奴ばるよね?」
「弁才天ユカリ。生き残っていたのですね」
「ァィツ等、なんかキライ!」
「ご氏名受けちゃってるっぽい!
逃げて『はいさよなら、二度と会いません』で済む相手じゃなさそうだ!」
「だけど、戦うのゎィィとして、マナ達はどぅする!?助けなきゃ!」
「無論、救出しなければなりませんが、
おそらく、時代錯誤な3人が居るうちは、
彼女達に危険が及ぶ事は無いと考えられます」
「ん?ど~ゆ~こと、マユ?」
「時代錯誤な3人は、
熊谷さん達との契約により、この場に召喚をされたはず。
熊谷さん達の身に何かがあれば、
3人は、存在を維持できなくなります」
「なんで、そんな事知ってんだ?
・・・あぁ、そっか!アイツが持ってた本か!?」
「はい、召喚について記された書物です。
召喚には、超能力の類いの特殊能力が必要と記してありました。
私がキチンと最後まで読んでいれば、熊谷さんを危険な目に遭わず、
このような事態にはならなかったのかもしれません。・・・悔やまれます」
「いちいち、自分だけの所為にすんな!
あたしだって同じだ!相談された時に、もっとキチンと対応しとくべきだった!
アイツは、その超能力とやらを持ってるみたいなんだよ!くそっ!」
「ミホ、バルミィ、マユ、くるよっ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!ツェペシュ・メイスッッ!!!」
ヴラド3世の雄叫びが上がり、極太の杭が凄まじい勢いで飛んで来て、ゲンジ達の足元に突き刺さった!飛び退いて構えるゲンジ&ネメシス&セラフ&バルミィ!リベンジャーからの宣戦布告だ!
続けて、ツーンと鼻を突く匂いを発する液体が飛んで来て地面に撒き散らされ、かかった場所が溶けて煙を吹く!ヘイグが、噴霧器のピストンを押してタンク内を加圧しながら、ゆっくりと接近!
「何時までベラベラ囀ってる!
我はワラキアの王なるぞ!大衆如きが王を待たせるか!?」
「コホォ~~・・・最初に溶けたい奴は、だ~れだぁ?ヒャハハハハハハ!!!」
「問答無用か。
紅葉は、騎士みたいな女を頼む!
オマエ(麻由)は、接近戦が苦手そうなマスク男!
あたしは、如何にも力自慢って風体の大男を、スピードで撹乱する!
バルミィは空中から全体を見て、全員のサポートを頼む!
2人とも、深追いはするなよ!先ずは様子見だからな!」
「んっ!」 「わかりました!」 「了解ばるっ!」
ネメシス(美穂)の指揮で、それぞれの対戦相手が決まった!ネメシスは、目の前にいるヴラドに対してレイピアを握りしめて構え、セラフ(麻由)は梓弓を構えてヘイグの前に進み、ゲンジ(紅葉)は巴薙刀を振り回しながらジャンヌに突進をする!
一方のリベンジャー達は、丹田に力を込めて気合いを発した!すると、首からぶら下げた懐中時計が反応をして禍々しい光を放ち、ヴラド3世は鮮血のような紅い鎧、ヘイグは毒々しい深紫の鎧、ジャンヌは夜目にも眩しい青銀の鎧、リベンジャー達の体がプロテクターで覆われた!マスクド・ヴラド、マスクド・ヘイグ、マスクド・ジャンヌ、変身完了!
-異獣サマナーネメシス&バルミィvsマスクドヴラド-
マスクド・ヴラドが、巨大な杭を軽々と振り回して、ネメシス(美穂)目掛けて打ち下ろした!ネメシスは数歩後退して回避!バルミィが上空からヴラドに襲いかかる!しかし、今度は、巨大杭を持ち上げて、頭上で振り回して、バルミィを寄せ付けない!
2度3度と、ヴラドは巨大杭を地面に叩き付ける!ネメシスはその度に横や後ろに引いて回避!4度目に地面に打ち付けられた巨大杭に対して、ネメシスは足を掛けて、杭の上を器用に駆け上がり、ヴラドの懐に飛び込もうとする!しかし、ヴラドは巨大杭を軽々と持ち上げて、ネメシスを振り落とした!
「しまったっ!」
ネメシスは体勢を立て直す事が出来ず、地面に伏したままヴラドの攻撃に備える!しかし、ヴラドの次の一撃は来なかった。巨大杭を地面に立てて攻撃の手を休めて、ネメシスを見下ろしている。
「我は王ぞっ!地に這いつくばる女にムチをくれるほど野卑ではない!」
「くっ!・・・余裕って事か!生意気な王様めっ!!」
立ち上がり、構えるネメシス!呼応してヴラドも構え、巨大杭を頭上で振り回しながら、ネメシス目掛けて突進!ネメシスは、ヴラドが杭を振り下ろした直後に攻撃をする為に、杭を見て備える!だが、ヴラドは、太い杭を槍を扱うように器用に脇に抱え、突きを放ってきた!ネメシスは、慌てて数歩後退して回避!しかし、次の瞬間、巨大杭が伸びてネメシスを突き飛ばした!更に、振り上げた巨大杭がグングン伸びて、上空で光弾を打つ為に身構えたバルミィをも叩き落とした!
そして、ネメシスとバルミィが体勢を整えるまでは、攻撃の手を休める。
「力押し一辺倒のパワーファイターと予想してたけど、器用に戦いやがる!」
「武器が伸びるなんて聞いてないばるっ!」
ネメシスがバルミィに手を貸して起き上がらせ、2人並んで構える!呼応してヴラドも構えるが、見ていたユカリが、不満そうに声を掛けた。
「何故、攻撃の手を休める?
私は『その小娘共を血祭りに上げろ』と言ったはずよ!」
「フンッ!我は、汝を、参謀とは認めよう!
汝が忠臣と言うならば、王として、忠臣の意には応えよう!
だが、臣下が王のやり方に、口を挟む道理は無い!
誇り高き王の戦を、その目に焼き付けよ!!」
ヴラドは、ユカリの不満など歯牙にもかけず、自身の王道を説く!
ネメシスは、レイピアを構えて突進!バルミィは飛び上がり、上空からヴラドに向かって右手甲の砲門を向けて、光弾を発射する!ヴラドは脇に飛んで楽々と回避!直ぐさま、巨大杭を振り回して、接近してきたネメシスを牽制する!ネメシスは、白鳥型モンスター=キグナスターを召喚して、ヴラドの前で羽ばたかせた!白い羽根が舞い散り、ネメシス姿が消える!直後、ヴラドの背後に出現したネメシスが、一太刀叩き込む!ヴラドは直ぐさま体を反転させてネメシス目掛けて巨大杭を打ち下ろすが、白い羽根が舞い上がり、ネメシスの姿は消え、ヴラドの攻撃は空振りをする!
気が付くと、ヴラドを囲むように白い羽根が舞い上がっており、ネメシスの姿は何処にも無い。しかし、ヴラドからは焦りの仕草は微塵も感じられない。むしろ、舞う羽を手で触れ、感心をして見入っている。
「ほぉ、美しき羽根の舞・・・雅だな。
忌まわしき我が汚名を洗い流すほどに心地良い光景だ。
華麗なる技を使う白い騎士・・・是非とも欲しい。
どうだ、騎士よ!我が臣下となりて、我が王道を支えぬか!?」
ネメシスからすれば、酷く頓狂な提案だ。同時に、ヴラドという人物の底が見えず戸惑ってしまう。ネメシスは、羽根の中に姿を隠しながら、即座に提案を却下する。
「そうか、残念だ!
だが、王たる者、大衆の言葉には、いかなる時も耳を傾けようぞ!
汝が、我が臣下を望むなら、いつでも受け入れてやる!」
〈い、いつまでも余裕ぶってんなっ!クソ生意気な王様がっ!!〉
ネメシスは、羽根の中に身を隠しながら、ヴラドの死角に回り込む!しかし、ヴラドの気配が変わった事に気付いて、素早く飛び退いた!
「おぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
「来るっ!!」 「ばるぅぅっっ!!」
ヴラドは、巨大杭を、渾身の力で地面に叩き付けた!渾身の一振り・ドラクル・ディストゥッジェ(竜公の破壊)発動!凄まじい轟音が鳴り響き、ヴラドを中心に、激しい衝撃波が発生!周りを舞っていた羽根も、数m離れて隙を伺っていたネメシスも、上空にいたバルミィも、数m以内にある物全てが纏めて弾き飛ばされる!
空中のバルミィはともかく、間近で今の破壊力を喰らって20mほど飛ばされたネメシスは、全身が痺れ、地面に倒れたまま動けない!
「全体のサポートをするつもりだったけど、美穂のサポートで手一杯ばるっ!」
バルミィが、ネメシスを庇うようにして立ち、ヴラドに対して構える!




