14-3・ハーゲン&ヤク○vsバレン~紅葉の行射~セラフ変身
-工場隣の公園-
妖幻ファイターハーゲン(有紀)が、Yケータイをブラスターモードにして、バレンと撃ち合いをする!聖幻ファイターヤク○(剛太郎)が、ヤク○ドスチャカ・ドスモードを装備して、羅刹天&伊舎那天と刃をぶつけ合う!
ハーゲンの連射でバレンの銃が弾き落とされた!バレンはハーゲンの追撃を恐れて数歩後退!ハーゲンは直ぐさま振り返って、ヤク○の攻撃で弾き飛ばされた羅刹天に発砲!直撃を受けた羅刹天は、さらに弾き飛ばされて、プロテクターから火花を発して転がる!ほぼ同時に、ヤク○ドスチャカの刃を胸に受けた伊舎那天が、プロテクターから火花を発して転がる!
ハーゲンが、左腕手甲に収まっているYケータイを展開し操作をすると、全身からオーラを発した!
ヤク○が、右腕手甲に収まってるヤク○フォンを展開して操作をすると、全身からオーラを発した!
「邪気退散・・・・ダークネスキック!!」
「悪因苦果(悪が苦をうむ)・・・シバキキック!!」
ヤク○とハーゲンは、オーラで身を包みながら飛び蹴りの体勢で突撃!弾き飛ばされた伊舎那天&羅刹天が爆発四散をする!
「くっ!」
劣勢と悟ったバレンは逃走をしようとするが、ヤク○とハーゲンは逃がす気は無い!ハーゲンが銃撃をヒットさせてバレンの足を止め、ヤク○が懐に飛び込んでバレンの腹にドスを突き刺す!更に、ヤク○が離れた直後に、ハーゲンの銃撃がバレンに炸裂!
「うわぁぁっっっっっっ!!」
バレンは呻き声を上げながら倒れ、全身から爆炎が上がる!
「後は、不動明王を」
ヤク○は麻由とツヨシのいる工場内に向かおうとするが、ハーゲンが呼び止める。
「闇と光の協力・・・
今まで、誰も考えつかなかったけど、あの子達なら出来るかもしれないわ。
私は“新しい可能性”を見てみたいの。若い世代に託してみない?」
「・・・!」
「それとも、龍山さんは、お嬢様が“新しい時代”を担うと信用できないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「未来を作るのは、若い力達よ。信頼してみない?」
ヤク○は足を止め、数秒ほど考えた後、深く頷いた。
「解った。お嬢様を信じる」
ヤク○は深呼吸をしてマスクの下で目を閉じ、麻由に渡したスマホを思い浮かべた。それは、電気を充電して起動するのではなく、麻由の”覚醒”と”強い心”で起動をして“天の理力”を戦闘力に変換する。
「お嬢様ならば、必ずや使いこなせるようになると信じとる」
ハーゲンとヤク○は、激闘の援護には向かおうとせずに、おばけ煙突の工場を見つめた。
-工場内-
散々に痛めつけられて何度も倒れた紅葉だが、まだ、その眼は諦めていない。
「まだ、そんな力が!?だが、どのみち、これで終わりだぁっっ!!」
トンボは、やや狼狽えながらも、生身で無防備の紅葉目掛けて、トンボランチャーを発砲する!しかし、横から気勢が上がり、間に飛び込んできたネメシスがシールドで光弾を受け止めた!
「・・・ったく!
格好付けて立ち上がって、アッサリ銃殺されたんじゃ、ただのアホウだぞ!」
衝撃に押されて足の裏が地面を滑るが、どうにか光弾を防ぎきった!トンボは苛立って舌打ちをする!
「あ、ありがと・・・ミホ」
「余力を蓄えてから立ち上がるとか、もう少し考えてから動けっ!
この、ノータリン!!」
さっき、麻由は自分の上にある水晶玉を壊そうとしていた。アレを壊せば、きっと麻由は脱走できる。ならば、やるべき事は決まっている。紅葉の本能は、残り僅かな体力と限られた選択肢から、自分が出来る事を選んだ。
Yスマホの画面に「弓」と書いて弓の召喚!光属性の水晶玉ならば、闇属性の矢で破壊できるはず!
「チィィ!させるかよ、間抜けめっ!!いい加減に消えろっ!!」
掌を翳して念を込めるトンボ!紅葉の頭上、高さ5mくらいのところに光が集まり、巨大な光球になる!光球は工場の屋根を吹き飛ばして、直径10mほどに成長して、トンボの誘導で紅葉とネメシスを押し潰す為に打ち降ろされた!
「させないばるっっ!!」
紅葉の頭上にハイアーマードバルミィが出現!半円状のバリアを張って、巨大光球の落下を防ぐ!
「ゴメン!破壊力はともかく、光までは防げないばるっ!!」
衝撃はバルミィが抑えてくれているので、紅葉に直接的なダメージは無いが、バリアから漏れる光が紅葉を灼く。しかし紅葉は微動だにせずに、麻由を拘束している牢獄のコアを見つめ続ける。そして、闇を纏った矢を召喚して、麻由の頭上を狙う。
「ちゃんと狙えよっ!
ミスって、助けようと思ってる葛城を射貫くなんてオチは勘弁してくれよな!」
「・・・んっ!」
「昨日、弓道場で注意された事を思い出せ!」
「んっ!」
紅葉は、弓道場での行射を一度もしていない。常識で考えれば、成功するとは思えない。ネメシスは不安で仕方が無いが、既に体力が尽きて、このままではトンボに嬲り殺しにされるだろう。有効な手段が無い状況では、紅葉の一射に賭けるしかない。
総力戦でトンボを倒してから麻由を救う奇跡より、紅葉が行射を成功させる奇跡の方が、まだ可能性がありそうだ。
「3分、保たせる!その間に、なんとかしろ!いいな!!」
「うぃっす!アリガトォ、ミホ!」
レイピアとシールドを構えて、トンボに向かって突進をするネメシス!倒せるとは思っていない!だけど、紅葉が行射を終えるまで、トンボの注意を自分に向けさせる!
「ふざけるな、ザコ共!!」
「ザコの底力を思い知れっ!!」
トンボはトンボランチャーを連射!回避をすれば背後の紅葉に命中をしてしまうので、ネメシスはシールドで受け続ける!最初の2発で突進力が相殺され、3発目で一歩も前に進めなくなり、4発目以降は防御に徹したまま後退をさせられる!だが、それで良い!ハナっから、力業でトンボを倒すつもりなど無い!
「来い!キグナスター!!」
トンボの背後の空中が歪んで、白鳥型モンスター=キグナスターが出現!低空で飛んでトンボの足下を掬い、ネメシスは隙を突いて再突進を試みる!一方のトンボは、体勢を崩されながらも、トンボランチャーを乱れ打ちにしながら間合いを開けた!ネメシスの突進は光弾で妨げられてしまう!だが、それで良い!トンボは少しずつではあるが、紅葉から離されている!
「ん~~~」
紅葉は十数秒ほど目を閉じて、気持ちを落ち着けて呼吸を整える。バルミィがバリアで止めてくれている頭上の光が身を灼くが、今は気にしている時ではない。ネメシスは「弓道場で注意された事を思い出せ」と言った。正直言って上手く射る自信は無い。一度も成功していないどころか、一度も射た事が無いのだから、自分なりの“上手なやり方”なんて解らない。だから、紅葉が見た中で一番美しかった行射をイメージする。
「・・・マユ」
紅葉のイメージの中で、「お手本を見せてあげる」と言って立ち上がる麻由。丁寧な仕草で射位に進む。姿勢を整え、弓を押し弦を弾く寸前の麻由が、紅葉のイメージ内で明確な形となって整った。
不思議だ。これほど切羽詰まった状況なのに、心が穏やかになる。失敗をすれば全てが終わるのだが、失敗をするイメージが全く浮かばない。
周りには目も開けていられないほどの光が溢れていて、紅葉には麻由が見えないのに、麻由を拘束している牢獄のコアだけが僅かに見えるような気がする。紅葉と光の水晶玉の間に一筋の点穴が見える。
麻由自身が紅葉を信頼して放っている一筋の光が、水晶玉の位置を示してくれている。麻由ならば、迷わずに、その点穴に矢を射るだろう。紅葉のイメージの中で行射をした麻由は、「その一点だけを狙って、矢を射ろ」と言っている。
「雰囲気が変わった・・・それで良いです」
光の牢獄の中から紅葉を見ていた麻由が、頷きながら小声で呟く。麻由が見た紅葉の行程は、今まで見たどんな行射よりも美しく見える。まるで、紅葉の周りだけが静寂に包まれているようだ。
「んんっ・・・見えた」
紅葉は一本の闇の矢を召喚!麻由の姿勢をイメージしながら、弓に矢を番えて(弓構)、弓矢を持った両拳を上に持ち上げ(打起)、弓を押し弦を引いて両拳を左右に開きながら引き下ろす(引分)!
鏃の先は、光の中に見える点穴に向ける!その瞬間、紅葉は、自分の力だけではなく、麻由の力が自分に宿っているように錯覚をした!
「ん!行くよ、マユ!」
紅葉が“何かをしでかす”気配は、トンボも感じていた。紅葉の周りだけにある静寂が、不気味に感じられる!
「じょ、冗談じゃね~ぞ、小娘どもっ!!」
トンボはレイピアの一太刀を受けながらネメシスの首を掴み、頭突きで怯ませ、トンボランチャーの銃口をネメシスの腹に押し当てて連続ゼロ発射をして弾き飛ばす!
「邪魔だ、小娘っっ!!」
壁に激突をして地面に落ちるネメシス!トンボは行射中の紅葉を憎々しく睨み付け、掌を翳して闘気を吐き出す!無数の光の槍が、紅葉を囲むようにして出現!
「ばるばるっ!し、凌ぎきれないばるっ!!」
頭上から落ちてくる巨大光球を防ぐだけでも手一杯だったのに、四方八方から光の刃が出現した!バルミィは「逃げろ!」と叫ぶが、行射に集中をする紅葉には聞こえていない!トンボが拳を握るのを合図にして、一斉に紅葉目掛けて放たれる!
しかし、周囲の状況は、紅葉には見えていない。紅葉に見えているのは、「麻由が、矢で的を射た」イメージのみ。
次の瞬間・・・
紅葉の手から、闇の矢が離れた。
矢は光の中に吸い込まれ・・・
紅葉と麻由を繋ぐ点穴を突き抜け・・・
麻由の頭上にある牢獄のコアを射貫き・・・
水晶玉は砕かれ、光の格子が消滅する。
「くれはぁぁっっっっ!!!!」
紅葉の全方位を覆った光の刃が、無防備な紅葉に襲いかかる!光の拘束が解かれた麻由は、紅葉に向かって駆け出す!手に握っているスマホが、一層、強い光を放っている!
『お嬢様ならば、必ずや使いこなせるようになると信じています。』
剛太郎の言葉が、麻由の脳裏をよぎる。これが、ただのスマホではない事が理解できた。麻由は走りながら、紅葉がゲンジに変身をしたシーンをイメージする。
スマホ画面に指で『ベルト』となぞったら、麻由の腰が白銀に発光!実体化をして、バックルが蓮華の形をしたベルトになる!同時に、スマホ画面に表示された『天』の文字をタップ!
「幻装っ!!」
スマホが光り輝いて麻由の全身を包み背中に光の翼が出現!翼は大きく広がって麻由の全身を包み、強烈な一塊の光に変わり、天高く飛び上がった!そして、空中で鋭角的な弧を描いて光の羽を振り撒きながら急降下!紅葉目掛けて飛んできた光の刃を全て払い除ける!
「マユっ!!」
紅葉の真横で麻由を覆っていた翼が弾け飛び、中からメインカラーが黄色で【(中世日本の鎧武者+巫女)÷2】みたいな格好をした戦士が出現!スマホを右手甲のホルダーにセット!聖幻ファイターセラフ、誕生!
「こ、これが・・・私?」
「ん!マユの光、優しい光だね。助けてくれて、 アリガトォ」
紅葉の変身をイメージして無我夢中でスマホを弄ったら、自分も変身を出来た。 セラフ(麻由)は「少し信じられない」とマスクの下で困惑をして、隣にいる紅葉を見つめる。紅葉は疲れた表情だが、微笑みながら頷いた。
「ジョローグモをやっつけた時から・・・
うんにゃ・・・もっと前。
教務室でスレ違った時から、マユが普通っぽくないってワカッテたよ」
変身をした張本人のセラフよりも、他人の紅葉の方が状況を受け入れているようだ。
「お礼を言うのは・・・私の方です。
・・・だけど、それは、全部終わってから!」
「んっ!そだねっ!げんそうっ!!」
紅葉はYスマホを翳して、妖幻ファイターゲンジに変身!闇と光、妖と聖、対局のファイター、ゲンジとセラフが並び立つ!
「く、くやしいけど・・・格好いいじゃん!あとは、頼んだぞ」
「ばるばるっ!さすがにチョット・・・疲れたばるっ」
トンボに散々に痛めつけられたネメシスと、辛うじて紅葉を守り切ったバルミィが、力尽きて片膝を着く。
「くそったれ!小娘ごときが、いつまでも調子にのってんなっ!!」
トンボがゲンジとセラフを睨み付けて、トンボランチャーを構える!
覚醒したばかりの天の巫女が、トンボの攻撃を払い除けるなど考えられない。麻由の感情が昂ぶった事と、紅葉を守りたい気持ちが合わさって、偶発的に防御が高まったのだろう。
「だが、まぐれとはいえ、侮れない。
あの小娘(麻由)、とんでもない潜在能力を秘めてやがる!
これ以上、調子付かせるわけにはいかない!」
ゲンジとセラフは互いの眼を見て頷き合ったあと、ゲンジがYスマホを取り出して画面に指で「冥鳥」と書いて、正面に八卦先天図を出現させる!
麻由の救出は成功した!あとは、余力を考えずに、残された有りっ丈の力をトンボにぶつけても良い!
「んぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっ!!!」
八卦先天図に突進をするゲンジ!冥鳥変化・ヘルズノヴァ発動!闇の翼を広げてトンボに襲いかかる!
トンボは掌を翳して、空中に無数の光の槍を召喚!
「くっくっく!愚か者がぁっっ!!これでオマエの命運も尽きたなっ!!」
冥鳥目掛けて、光の刃が一斉に降り注ぐ!
「させないっ!」
セラフが手を翳すと、冥鳥の周りに光の渦が出現!トンボが発生させた光の刃を弾き返す!
変身したばかりのセラフでは、まだ、システムを満足に使いこなす事は出来ない。だが、大切な友達を守る事なら出来る。
光の衣を纏った闇の鳥が、トンボに襲いかかり、衝突をした!
「ぐぉぉぉぉっっっっっっ!!!・・・お、俺をなめるなぁっっっ!!!」
闇は光を貫通する!ヘルズノヴァの闇が、光で編まれたトンボの鎧を貫通して、トンボの肉体に突き刺さる!苦しむトンボ!しかし、歴戦の不動明王が、小娘相手に退くなどプライドが許さない!冥鳥の中に手を伸ばし、痛みを堪えながら中核となっているゲンジの顔を掴む!
「んぁぁっっ!!?」
トンボは、闇の鳥の中から力任せにゲンジを引き摺り出して、横に放り投げる!地面を転がるゲンジ!トンボの体に冥鳥の余波が纏わり付くが、発信源が抜き取られた闇ならば、どうにか振り切る自信はある!
「言ったろうに!!俺とオマエ等では、実力も経験値も雲泥だとっ!!」
トンボは、全身から光の闘気を発して、全身に纏わり付いた闇を相殺!
だが、「もう小娘共には攻撃手段が無い」「これで終わった」と勝ちを意識した瞬間、セラフと、体勢を立て直したゲンジは、反射的にトンボ目掛けて突っ走っていた!闇の相殺を終えた直後のトンボは、闘気防御の準備が間に合わず、両腕でガードを固める!
「うぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」 「んぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
「シャイニングッ!!」 「よーかいっ!!」
「キィィッッッッックッッッ」×2
シャイニングキックとダークネスキック!
光を纏った跳び蹴りと、闇を纏った跳び蹴りが、トンボの腕のガードを弾き飛ばし、トンボの体に叩き込まれた!歴戦の雄でも、光と闇の同時攻撃を凌ぎきる事はできなかった!
「ぐはぁぁっっ!!」
吹っ飛ばされて地面を転がるトンボ!力を振り絞って立ち上がり構える!
・・・が、力尽きて仰向けの倒れ、全身から爆炎が上がる!




