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14-1・有紀の参戦~ゲンジ&ネメシス&バルミィvsトンボ

-工場の敷地周辺-


 廃道路の真ん中にホンダCBR1000RRを駆る源川有紀がいた。紅葉に対して、今回の敵は相性が悪すぎる。娘の活動に手を出さずに見守り続けるスタンスだが、さすがに少し心配だ。



-回想-


 麻由の部屋のベランダで、光のダメージを受けて動けなくなった紅葉は、美穂&バルミィ&剛太郎の出陣を見送る事しか出来なかった。脱力をして腰を下ろす。


「マユ・・・泣いてた」


 悔しそうに空を見つめる紅葉を、マンションの下で有紀が見上げる。徐にYケータイを取り出して、ブラスター(銃)モードにして銃口に妖力が集束。有紀は、上階のベランダに居る紅葉目掛けて闇の光弾を発射した。


「・・・んぁ?」


 急に、紅葉の周辺が闇で満たされて、光のダメージが中和されていく。剛太郎が言った「闇で洗い流す」とは闇で光を相殺する事。それほど難しい事ではないが、まだ知識の無い紅葉では辿り着けない方法だった。


「ピリピリが消えた?」


 紅葉を拘束していたダメージが消え、体が軽くなる。


「なんで、急にマユのお部屋が妖気でいっぱいになった?まぁ、いいやっ!」


 よく解らないが、体が動くようになったから、麻由の救出に行く。


「ん~~~っと!おばけ煙突の工場って言ってたっけ?」


 おばけ煙突の廃工場なら、小~中学生の時に、嫌がる亜美を連れて何度か探検に行ったことがある。

 エレベーターを降りて道路に出た紅葉は、ゲンジに変身をして、全速力で明森町に向かって突っ走っていった!


「頑張ってね、紅葉」


 物陰からゲンジを見送る有紀が、小さな声で呟く。



-回想終わり-


 基本的には娘の活動の手助けはしないスタンスだが、今回は特別だ。むしろ、手助けをしなければ温和しくする以外の選択肢が無い紅葉を、死地に向かわせる為に「手助けをした」と言っても良い。

 ゲンジの力は、教わる物ではなく、経験する事により自分で掴み取るもの。その為には、多少の危険は顧みずに、やれる事をやらせてあげたい。きっと、様々な経験から、自分に出来る事と仲間に委ねる事を学んでくれるだろう。


「学んでくれる・・・と思いたいけど、

 猪突猛進な紅葉に、『仲間に委ねる』発想があるのかしらね?

 もの凄く不安だわ」


 有紀は、視線を広大な駐車場の方に向けた。その視線の先、公園の跡地で、聖幻ファイターヤク○とバレン達が戦っている。




-工場隣の公園-


 弾き飛ばされたヤク○が、砂埃を上げて転がる。今まで、幾つもの修羅場をかいくぐってきたヤク○だが、苦戦を強いられていた。

 相手が二十八部衆程度ならば苦戦はしない。だが、弁才天ユカリ=聖幻ファイターバレンは二十八部衆のワンランク上。バレンが統率することで、羅刹天らせつてん伊舎那天いしゃなてんの動きが格段に良くなっていた。


「厄介じゃのう!」


 銃によるミドルレンジ攻撃を得意とするバレンと、槍やロッドによるショートレンジ攻撃を仕掛けてくる羅刹天&伊舎那天!接近戦では羅刹天&伊舎那天が2対1でヤク○を翻弄し、2人が後退するとバレンの銃撃が飛んでくる!そして、ヤク○が銃撃を受けて後退すると、羅刹天と伊舎那天が飛び込んでくる!


「ぐわぁっ!」


 再び吹っ飛ばされて地面を転がるヤク○!羅刹天が右手甲のHケータイを操作すると、スピアの先端に赤く発光する高エネルギーがチャージされる!同様に、伊舎那天が右手甲のHケータイを操作すると、ロッドの先端に黄色く発光する高エネルギーされる!羅刹天の必殺技、及び、伊舎那天の必殺技が発動!2人はヤク○目掛けて同時に突進をする!


「なにっ!?」 「うわっ!」


 しかし、激突の瞬間に大きな瓦礫が飛んできて、羅刹天と伊舎那天の必殺技は、ヤク○には届かず瓦礫に炸裂!

 バレン&羅刹天&伊舎那天、そしてヤク○は、同時に瓦礫が飛んできた方向に視線を向けた!


 朝焼けに照らされる中、戦場に向かって歩いてくる人影がある。スレンダーなボディーにシュートヘア。臆する事の無い勇ましい目つき。


「久しぶりね、龍山さん」


 源川有紀が、力強い足取りで歩いてきて、聖幻ファイターヤク○の隣に立つ。


「君は・・・確か、退治屋の?」

「現役を手助けするつもりは無いけど、

 ヤク○の危機なら援護をしても良いわよね!」


 有紀はポケットからYケータイを取り出して広げ、ボタンを3回連続でプッシュ!左手が輝いて手甲が出現!


「幻装っ!!」


 折り畳んだYケータイを左手甲に嵌め込んだ!有紀の全身が輝いて青い甲冑が装着され、妖幻ファイターハーゲン登場!

 聖幻ファイターヤク○と、妖幻ファイターハーゲン!過去に、妖怪から文架市を守り続けた2人!時には共闘をした事もあったが、互いに「相克」と壁を作り、プライベートを共有する事は一切無かった。その2人が、約20年ぶりに並び立って構える!




-工場正面-


 覆い被さっているシャッタースラットを煩わしそうに退かして、ゲンジとネメシスとバルミィが立ち上がる。


「大丈夫ばる?紅葉」

「いきなりギブアップってオチは勘弁してくれよな」 


 ゲンジは、全身にヒリヒリとした痛みを感じるが、麻由のマンションで受けた時ほどのダメージは無い。ネメシスとバルミィが盾になり、且つ、スラットが光を遮ってくれたので、ダメージが少なくて済んだ。


「ん!ダイジョブ!」


 工場内のツヨシは、掌を向けた姿勢を崩していない。つまりは、最低でも、もう一撃は、今の攻撃をするつもりだ。


「紅葉、オマエはウロチョロするな!」

「んぇ?なんで?」

「ウロチョロして、光の攻撃でアッサリ卒倒されたら迷惑だからばるっ!」


 ゲンジの戦力はツヨシのトドメを刺す場合には有効だ。しかし、光の前では闇の鎧は防御力が機能しないので、いつものような体力の削り合いに参加をさせる事は出来ない。


「オマエは、アイツにトドメを刺す為に温存すんだよ!

「ボクと美穂で隙を作るばる!」

「解ったな、紅葉!?」

「んっ~~~・・・ワカッタ」


 再び、周辺の大気が振るえ、まるで圧縮されるように工場内のツヨシの掌に集まっていく!ゲンジ&ネメシス&バルミィも大気と一緒に工場内に吸い寄せられそうになる!一撃目は、足を踏ん張らせて踏み止まった。・・・だが!


「はぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!」


 ネメシスが、吸い寄せられる力を推進力にして、ツヨシ目掛けて突進!更に背後に白鳥型モンスター=キグナスターが出現して、ネメシスの背に向かって羽ばたいた!風圧で加速をしたネメシスが、100m近くあったツヨシとの距離を瞬く間に詰める!


「へぇ・・・小娘のクセにやるじゃねーか。」


 白鳥の騎士は戦い慣れている。そう感じたツヨシは、途中まで集束させた大気を解放させた。

 衝撃波が工場内に広がるが、まだ光の力を込めていないので、工場入口付近に待機中のゲンジは充分に耐える事が出来る。しかし、ツヨシの間近まで迫っていたネメシスは衝撃波に体を流され、突進力を相殺されてしまった。


「チィッ!」


 ツヨシは、半歩身を退いて、スローダウンしたネメシスレイピアの切っ先を回避!そのまま、ネメシスの腕を掴み、空いてるの方の手でグリップ型アイテムを翳す!


「くっくっく・・・俺の聖幻システムは特別製だ。」


 翼の生えた銃身が飛んで来て、グリップ型アイテムに結合!


「・・・幻装」


 ツヨシの全身が輝き、各所にトンボの意匠がデザインされたマスク&和風甲冑タイプのプロテクターの戦士=聖幻ファイタートンボ登場!


「くっ・・・アンタも、変身できたのか!?」

「龍山や、俺の部下共だって変身できるんだ!俺が変身できるのは当然だろう!」


 トンボは掴んでいたネメシスの腕を力任せに捻り上げ、専用銃トンボランチャーの銃口をネメシスの背中に押し当ててゼロ距離で連射をする!悲鳴を上げ、全身から火花を上げながら弾き飛ばされて床を転がるネメシス!トンボは、追い打ちをかけるべく、ネメシスにトンボランチャーの銃口を向ける!


「フン!見え透いてんだよ!」


 鼻で笑ってから振り返って、斜め上に向かって発砲!発射された光弾は、トンボの背後に飛びかかっていたバルミィ命中!弾き飛ばされるバルミィ!

 その間にネメシスは立ち上がるが、向き直ったトンボが連続発砲!ネメシスの全身に数発の光弾が命中して、再び弾き飛ばされて地面を転がる!

 一方のバルミィは、空中で体勢を立て直して、床に足の裏を滑らせながら着地!しかし、バルミィがトンボに再突進を開始するよりも早く、トンボランチャーの銃口が向けられ、発砲された光弾がバルミィを弾き飛ばした!


「良い銃だろ?

 弾の装填もエネルギーチャージもせずに、いくらでも連射できるんだぜ」


 ネメシスから「控えていろ」と言われ、離れて見守っていたゲンジだったが、ネメシスとバルミィの劣勢が我慢できない。


「んぁぁぁっっっっっっっ!!」


 頭に血を上らせて、巴薙刀を振り回しながらトンボ目掛けて突進!トンボは掌から光の衝撃波を放つが、ゲンジは一足飛びに回避をしてトンボの懐に飛び込んだ!


「チィィッ!怖い物知らずかっ!!」


 ゲンジが接近戦を仕掛けてくる事を想定していなかった為に、トンボの回避が遅れる!ゲンジのつたない攻撃が、トンボの胸にヒット!しかし、素早く2歩退いて体勢を立て直して薙刀の柄を掴み、トンボランチャーのグリップをゲンジの肩に叩き付ける!そして、体勢を崩したゲンジに、トンボランチャーの銃口を向けた!


「くっ、紅葉っ!!」 「ばるばるっ!させないっ!!」


 ネメシスは、まだダメージが回復せずに、直ぐには動けない!辛うじて体勢を立て直したバルミィが、気勢を上げて分身を発しながら突進!1体のバルミィが空中に飛び上がって右手甲の砲門を構え、3体のバルミィが右手甲からジェダイトソード(レーザー剣)を放出させてトンボに襲いかかる!


「分身かっ!?」


 三方向をバルミィに阻まれ、残る一方にはゲンジが居る。しかも、接近する3体のバルミィ以外に、空中で砲門を向けたバルミィがいる。確実の迎撃できるのは二方向が限界。ゲンジとバルミィ本体を叩かなければ、「たかが小娘共」を相手にダメージを喰らうことになる。


「やるな、宇宙人!!・・・だが!!ハァァァッッッッ!!」


 トンボは気勢を上げて、全身から強烈な光を乗せた闘気を放出!トンボの周辺から一時的に影が消えて、分身のバルミィが消滅!実体のバルミィは、光の目くらましを喰らってトンボの位置を見失ってしまう!そして次の瞬間には、トンボランチャーの連続発砲がバルミィの全身に炸裂!弾き飛ばされたバルミィが地面に墜落する!

 更に、トンボは、ようやく体勢を整えたネメシスにトンボゼクターを向けて発砲!直撃を受けたネメシスは呻き声を上げ、変身が解除されて美穂の姿に戻り、膝から崩れ落ちる!


「つ、強すぎる・・・ばる。」

「いい大人が、小娘のあたし達相手にムキになってんじゃねーよ・・・くそっ!」


 闘気の“溜め”を行わずに闘気を放出したトンボは、少し息が上がる。ようやく疲れを見せ始めた。


「ガキを自覚してるなら、ガキらしく、大人のやることに口を出すな!

 不相応な背伸びをして俺を苛立たせた代償は、命で償ってもらうぜ!」


 美穂は片膝をついて肩で荒く息をしている。バルミィは、上半身を起こすものの、まだ満足に動けない。どちらも、蓄積されたダメージが重くて立ち上がる事すら出来ない。2人は絶望を感じていた。だが、それは、自分達が消耗をしているからではない。


「立て、紅葉っ!」 「紅葉、起きるばるっ!」


 光源の間近で相克属性の闘気の直撃をされた紅葉は、変身が強制解除をされてトンボの足下で仰向けに倒れている。結局、紅葉は、美穂の意見を無視して戦場に踏み込み、何も出来ないまま戦闘不能に陥ってしまったのだ。

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