13-3・連れ去られた麻由~ヤク○&ネメシス&バルvs刺客
-明森町の廃工場-
「極楽浄土とかって所にいる祖父のところに行くと思ってたのに・・・
どういうつもり?」
祖父のカミヤマとの「感動のご対面」をしてもらう為に、ツヨシが麻由を連れ出したワケではない事は承知をしている。しかし、極楽浄土(天界)に行くと思っていたのに、寂れた廃工場に連れてこられて、少し拍子抜けをしてしまう。同時に、何の為に、ここに立ち寄ったのか理解が出来ず、ツヨシの魂胆が不気味に思える。
麻由の問いに、ツヨシは品の無い笑みを浮かべながら答える。
「多勢に無勢で極楽浄土に殴り込みを掛けるほど、俺はバカじゃない。
いくら、嬢ちゃんを盾にしたからって、
戦力差がありすぎて、どうにもならんからな」
「・・・だからって、なんでここに?」
「決起をする前に、アンタに決めてもらう為さ!」
「・・・なにを!?」
「俺達の神輿として担がれて、カミヤマへの反乱の旗頭になるか・・・
身も心もズタズタにされて、可哀想な人質として取引材料になるか・・・な!
血統書付きのアンタが旗頭になってくれると、
大義が立って呼応してくれるヤツが増えるだろうから、ありがたいんだがな!」
ツヨシは、カミヤマの首を取る為に、極楽浄土(天界)に攻め込むつもりは無い。そんな事をしても、防衛力を貫けずに敗北をするだけ。正当な後継者の血筋を持つ麻由を旗頭にして、カミヤマに不満を持つ同志を募るか、麻由を人質にして、カミヤマを単身で人間界に呼び出すか、いずれにせよ、確実に勝つ為に、麻由を連れ出したのだ。
「ふ、ふざけないで!それのどこに、私の意志があるのですか!?」
「くっくっく・・・俺はアンタの希望なんて聞いていない。
『どう、俺達の道具になりたいか?』と聞いているんだ」
「いくら会った事が無くたって、お爺様に反乱をするつもりなんてありません!」
「それは残念。まぁ、いいさ!ならば、人質で決定だな。
今から、お爺様とやらが目を覆いたくなるほどに、
嬢ちゃんの身も心もズタズタにしてやるよ。
やっぱり旗頭として大切にされたかった・・・と後悔しても手遅れになるぜ!」
ツヨシは品の無い笑みを浮かべながら、麻由の肩に手を置いて軽く撫で、アゴを掴んで麻由の美しい容姿を眺める。麻由の全身に怖気が走る。「身も心もズタズタ」の意味は、だいたい察しが付く。
しかし麻由は、怯えて腰を抜かして泣きわめくつもりなど無い。ツヨシを睨み付け、素早く身を一歩退いて、隠し持っていたスタンガンを取り出して、ツヨシの体に押しつけた!
「・・・ぐっ!」
「なめないで欲しいわね!
私が、何の用意もせずに、貴方に応じたと思っていたのですか!?
護身用の武器くらいは持ってきました!」
ツヨシの体が硬直をして動かなくなる!だが、まだ浅い!麻由は、動きが鈍ったツヨシに、再度、スタンガンを押し込む為に踏み込んだ!
しかし、寸前で横から別の手が伸びてきて、スタンガンを持った麻由の手を止めた!冷たい目をした女が、麻由に手を掴んだまま麻由を睨み付ける!
「全く・・・相手が小娘だからって、隙を見せすぎよ、ツヨシ」
女は、片方の手で麻由の手を捻り上げ、もう片方の手で麻由の頬を思いっ切り引っぱたいた。麻由は悲鳴を上げ、為す術も無く吹っ飛ばされて床に倒れ、スタンガンは手から落ちて床を転がる。
「フン!助かったぜ、ユカリ!」
その女の名は、弁才天ユカリ。ツヨシと共にカミヤマに反旗を翻して投獄され、共に脱獄をして人間界に逃げたツヨシの腹心だ。
麻由は、這ってスタンガンを拾おうとするが、ユカリに胸ぐらを掴まれる。
「おとなしくしなさい、可愛らしいお嬢さん」
麻由は勇気を振り絞って、凜とした表情でユカリを睨み返す。
「脅しには屈しません!」
途端に、麻由の全身から光のオーラが発せられて、ユカリを僅かに怯ませる。
「おいおい、大切な人質を傷物にすんなよ。
コイツを“傷物”にするのは俺の役目だ。・・・くっくっく」
体の自由が利くようになったツヨシはスタンガンを拾い上げ、下品な笑みを浮かべながら倒れた麻由に近付く。ツヨシはイジメッ子が威嚇をする時と同じ目をしている。麻由が怯えた表情になった途端に、麻由を覆っていた光のオーラが消える。
ツヨシは手元でスタンガンのスイッチを入れて、恐怖で引き攣る麻由の表情をジックリと楽しんでから、麻由の体に押しつけた!
「うわぁぁっっっっっっ!!」
「フン!これで、アイコだぜ!小賢しい小娘め!」
全身が硬直して動かなくなる麻由。ツヨシは、脱力をした麻由を舐め回すようにして見下ろし、ハーフパンツ越しに麻由の太股を撫でる。つい先ほど麻由が発した光のオーラは、潜在力の高さを如実に示していた。できる事なら、その類い希な潜在力を旗頭として操りたいのだが、本人が拒むのならば、人質として使うしか無い。
「さてと・・・お愉しみの時間・・・いや、嬢ちゃんには、地獄の始まりかな?
グチャグチャに引っかき回しながらブッ壊してやるよ!」
「全く・・・好き者なんだから。
まぁ、私としても、高貴なお嬢さんが廃人にされる姿を見てみたいけどね。
・・・だけど“お愉しみ”の前に」
「ん?あぁ・・・おいでなすったか!想定してたより、随分と早いな!」
ツヨシとユカリは、真顔になって廃工場の天井を見つめる。目に見える範囲には変わった様子は何も無いが、ツヨシ達の視線の先・・・屋根の向こう側の上空には、バルミィに跨がって麻由の救出に向かう剛太郎の姿がある。ツヨシ達は、廃工場に向かってくる剛太郎の攻撃的な気配を感じ取っていたのだ。他にあと2つ、覚えの無い気配(美穂とバル)を感じるが、特に気にする素振りも無い。
「飛んで火に入るなんとやら・・・
龍山の首を取って晒し、小娘を人質にして、
俺達が本気って事をカミヤマに見せつけてやろう!
残る2人は嬢ちゃんのツレか?まぁ、取るに足らん相手だ。
適当に血祭りに上げて、龍山の首と人質の添え物にすりゃいいさ」
「ここに隠れているのではなく、ここで龍山を待ち伏せている事・・・
思い知らせてやりましょう!
オマエ達、出番よ!」
後を振り返るユカリ。いつの間にか、ツヨシ&ユカリの背後の廃材の上に、怪しげな中年男性が2人が腰を下ろして、不気味な笑みを浮かべている。
「んっふっふ・・・首から下は不要か」
「持ってくるのは、首から上だけで良いんだよな?」
ユカリは中年男性2人に目配せをして、救援隊を迎え撃つ為に、その場から立ち去っていく。中年男性2人はユカリを追って付いていく。
「くっくっく・・・残念ながら、お愉しみは、しばらくおあずけだ」
ツヨシは、身動きの出来ない麻由に視線を戻して、品の無い笑みを浮かべ、直径20センチくらいの水晶玉を取り出して念を込め、倒れている麻由の1mくらい上の‘空中’に浮かべた。
「こ、これは?・・・うわぁぁっっ!!」
水晶玉は、麻由から強制的に光のオーラを吸収して輝きを放ち、無数の光の格子が出現をして地面に突き刺さり、光の牢獄になって麻由を閉じ込める!
「また、勝手な事をされちゃ面倒だからな。
龍山の首が上がるまで、その中でおとなしく待っていろ。」
「・・・うぅぅっ」
ようやく体が少し動くようになったので、麻由は、恐る恐る光の格子に触れてみる。ただの光ではなく、堅固な実体を持っており、麻由の脱走を許してくれそうにない。
「言っとくが、その牢獄は壊れね~よ。
投獄者本人の理力を強制的に奪って格子を作る。
便利だろ?投獄者の理力が強ければ強いほど、堅固な牢獄になるってわけだ。
極楽で、テメェ~のじいさんが、俺様を閉じ込める為に使っていた代物だぜ。」
ツヨシは「剛太郎達が麻由を助けに来た」と言っていた。また、いつもと同じだ。昔から何も変わっていない。自分の力だけじゃ何も出来なくて、他人に助けてもらう事しか出来ない。そんな弱い自分が嫌で頑張ってきたのに、何も変える事が出来ない。悔しくて体が震える。目に涙が浮かぶ。所詮、自分なんて「身も心もズタズタにされる」程度の価値しか無いとさえ思えてくる。
-上空-
美穂と剛太郎を背に乗せたバルミィが、廃工場付近まで来た所で、三棟並んだ真ん中に向かって急降下を開始する。ここまで近付くと、剛太郎にもツヨシの品の無い気配が感じ取れる。バルミィが言った通り、ヤツは間違いなく真ん中の工場内にいる。
「お嬢様、今、助けに行く!待っとってつかぁさい!」
「ばるばるっ!あれは?」
「龍山さん、アイツ等は!?」
「弁才天、伊舎那天、羅刹天・・・
不動明王の部下だ!
やはり奴等も人間界で合流をしていたか!」
廃工場の屋根の上で、弁才天ユカリ、伊舎那天ケン、羅刹天ヒロヤが、上空の剛太郎を見上げている。
ユカリがHケータイ(変身アイテム)を展開してボタンをプッシュして、両手の親指と人差し指で胸の前でハートマークを作ってウインクをしてから、右腕に出現した手甲にセット!
「幻装!!」
ユカリの全身がハート型の光に包まれ、各所にハートの意匠がデザインされた和風甲冑タイプのプロテクターの戦士=聖幻ファイターバレンに変身をした!続けて、ケンとヒロヤがHケータイを右手甲にセット!全身が輝いて、聖幻ファイター伊舎那天&羅刹天(モブなので形の描写は省略)が登場した!バレンは銃、伊舎那天はロッド、羅刹天はフォーク型の鉾を装備して構える!
「予想はしてたけど、すんなり返してもらって終わり
・・・てワケにはいかないみたいだな!」
上空では、美穂は事前に用意しておいた携帯用の鏡にサマナーホルダを向け、バルミィが両腕のブレスレットを重ねるようにして頭上に翳し、剛太郎はヤク○フォンのボタンを8-9-3の順にプッシュする!
「変身!」 「アーマードバルカンばるっ!!」 「幻装!」
異獣サマナーネメシス、ハイアーマードバルミィ、聖幻ファイターヤク○登場!ネメシスはレイピアを、ヤク○はヤク○ドスチャカ(剣と銃が一体になった武器)を装備して、バルミィの背中から飛び降りた!
バレン達3人は、ヤク○1人を標的に定めて一斉に飛び上がった!空中で激突!ヤク○は応戦をするが、3対1では分が悪く、バレンと羅刹天の攻撃は凌いだものの、伊舎那天のロッドを体に叩き付けられ、バランスを崩して工場脇の駐車場に落ちた!
バレン達は、ヤク○を囲むようにして着地!立ち上がって構えるヤク○!間合いを空けながら、広い駐車場を駆けてバレン達3人を誘い、回り込まれないように道路側に面した塀に背を向けて構える!
「おいおい、あたし達は無視か!?腹立つっ!」
「眼中に無いみたいばるねっ!」
着地をしたネメシスとバルミィは不満そうにヤク○達の戦いを見る。3対3なのに、敵の全員がヤク○1人と戦っている。ネメシス達が援護に向かおうとすると、戦闘中のヤク○が掌をネメシス達の方に向けて制止をかけた!
「コイツ等の狙いは、わし一人じゃ!ならば好都合!
全員が、ここで足止めをされる必要は無い!
君たちはお嬢様の救出に向かってくれ!
ただし、ツヨシたぁまともにやり合いんさんな!
お嬢様を助けて逃げる事に専念をしてくれ!」
「了解!」×2
ネメシスとバルミィは、踵を返して、工場に向かって走り出す!
-工場内-
外部から戦いの轟音が聞こえてくる。ツヨシは「始まったか」と呟いて品無く笑い、窓から戦況を確認する。バレン&伊舎那天&羅刹天は、作戦通りにヤク○と戦っている。つまり、残り2人はフリーになっている。もちろん、想定をしていた展開だ。
「ザコだからって、勝手に動き回ってもらうつもりも無い。
くっくっく・・・血祭りになってもらうさ!」
ツヨシは品の無い笑みを浮かべ、光の牢獄に拘束中の麻由は、不安そうに戦いの音がする方向を見つめる。
-工場の外・入口前-
正面シャッターが上がり、中から二十八部衆の聖幻ファイター婆藪仙&聖幻ファイター摩尼跋陀羅が出てきて(モブなので形の描写は省略)、ネメシス達の行く手を阻んだ!
「まだ、いたか!」
「ばるばるっ!ボクに任せるばる!」
ハイアーマードバルミィは、婆藪仙&摩尼跋陀羅が構えるよりも早く、左腕手甲の砲門から凍結光線を発射!瞬く間に、婆藪仙&摩尼跋陀羅を氷の中に閉じ込めた!バルミィはガッツポーズをして、ネメシスは「さすが」と感嘆する!
だが、氷像に視線を向けると、婆藪仙&摩尼跋陀羅を包んだ氷が溶けている!やがて、氷像から湯気が上がり、氷の表面がヒビ割れて飛び散った!
「不動明王の加護を得た俺達に、薄皮を凍らせる程度の攻撃が効くわけがない!」
敵の出鼻を挫くどころか、凍結光線をアッサリと攻略されて出鼻を挫かれてしまった。
「ばるるっ!ならばっ!」
バルミィは右腕手甲の砲門を構えて、ジェダイト弾発射の態勢になる!しかし、婆藪仙が剣を振り抜いて放った衝撃波が、バルミィに炸裂!直撃を喰らったバルミィは弾き飛ばされて地面を転がり、背後に居たネメシスも余波で弾き飛ばされた!
「くっ!強いぞっ!」
体勢を立て直して、倒れているバルミィに駆け寄るネメシス。直撃を受けてしまったバルミィは、肩から腰にかけて深々と裂傷がつけられている。人間だったら即死レベルの傷だ。・・・が、バルカン人は脳のコアさえ無事なら死なないので、深い傷がくっついて直る。
「・・・は、初めて見たけど、便利。」
「ばるばるっ!死なないけど、死ぬほど痛いばるよっ!」
簡単に倒せる相手ではない。工場の奥で捕らわれている麻由は心配だが、今は、焦らず、気持ちを切り替えて、目の前の敵に専念するしか無さそうだ。
「二十八部衆ってのを瞬殺した龍山さんが強すぎるってことか」
ネメシスはレイピアを構え、白鳥型モンスター=キグナスターを呼び出して、羽ばたきで無数の羽毛を出現させた!舞い散る羽毛に身を隠して、聖幻ファイター婆藪仙に接近!レイピアの切っ先を叩き付ける!婆藪仙が応戦するより前に、ネメシスは羽毛の中に姿を隠し、今度は背後を取って更に一太刀叩き付ける!
婆藪仙はネメシスを遠ざける為に大きく移動をしつつ、右手甲のHケータイを操作!気合いと共に全身から灼熱が発せられて、熱せられた羽毛が燃え落ちていく!
「羽根ごときで、俺は惑わされん!」
「・・・チィィ!炎使いかよ?相性最悪だな!
通りでバルミィの凍結が効かないわけだ!」
一方、バルミィは分身をして聖幻ファイター摩尼跋陀羅を囲む!摩尼跋陀羅は、グリップは1つでボディーとテール(先端)が何本もある鞭を振るって、全バルミィに一撃ずつを与える!分身達は次々と消滅して、バルミィの本体だけが残った!
凍結光線に続いて分身までがアッサリと攻略された!僅かに動揺をするバルミィの隙を突いて、何本もの鞭が絡み付く!
「げげっ!脱出できないばるっ!!」
「俺の鞭は生き物のように動き、標的を拘束する!」
ネメシスとバルミィが標的にしているのは不動明王ツヨシだ。こんな前座に消耗するわけにはいかない!だが、温存して戦える相手でもなさそうだ!




