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6-4・真奈がドロシー~美穂の推理

-放課後・2Bプレハブ-


 元々模擬店をやりたかった2Bが、運営から「模擬店OK」って大義名分をもらったので、皆、やる気充分。紅葉を中心に置いたミーティングはテンポ良く進む。


「材料の注文をしなきゃなんだけど、トンカツの豚肉ゎ10人前くらいでOK?」

「いやいや、少なすぎるでしょ」

「単価が高いから、買いすぎて余らせたら大変だぞ。」

「余ったって、クラス全員で分けて持って帰れば、どうって事ないよ。

 各自、その分のお金をカンパ すれば良いんだし!」

「なら、1000人分くらいかなっ?」

「それは多すぎる!何枚持ち帰れば良いんだよ!?」


「ガソリンは前日買えばィィよね?」

「レンタル屋に確認してみたら、

 発電機は、ガソリンタイプとガスボンベタイプがあるらしい。

 室内でやるんだから、安全性を考えて、ガスボンベタイプが良いかもね」

「なら、トンカツを揚げる用のガソリンが有れば良いねっ!」

「トンカツは、ガソリンでは揚げないっ!!」×たくさん


「焼きそばは何人前にしとく?」

「焼きそばなら、どこでも安く買えるから、少なめに発注しておいて、

 足りなくなったら、スーパーで調達にしよう」

「ちょっと思ったんだけど、ホットプレートは、焼きそばじゃなくて、

 トンカツを温めるのに使えないかな?

 朝のうちに全部揚げておいて、

 必要な分だけ、ホットプレートで温め直しとくの」

「おぉ!ィィねっ!

 ずっと油鍋を使いっぱなしにしなくても、暖かいカツが提供できるねっ!」


「看板の製作ゎダイジョブ?」

「うん。前日までには仕上げる」


 教室の片隅に、調達したダンボールとガムテープとペンキと刷毛が置かれてる。だけど、まだ足りないので、後日、また集めてくる。レイアウト班が、テーブル代わりに使う机の置き方や、間仕切りや、厨房の配置を決めてくれた。


「ぇ~とぉ~・・・・調理実習か・・・

 焼きそば係ゎ、土曜日の午後から、家庭科室に集合ね。

 材料と道具ゎ、ァタシとァミで用意しとく」

「は~いっ」×たくさん


 かなり話が煮詰まって、後は本番に備えた作業を進めるだけになった。



-2Aプレハブ-


 2年A組は、ステージ部門で、『オズの魔法使い』をやる事になっている。麻由としては格調高い作品をやりたかったが、演劇部が何ヶ月も前から『ハムレット』を稽古してると聞いて諦めた。さすがに、本番まで3週間も無い状態で、素人演劇では、演劇部3年生の田村環奈を上回るのは不可能。だから、演劇部とは方向性の違う、解りやすくて子供受けをする作品を選んだのだ。

 土日に麻由が台本の原案を仕上げ、月曜日にクラスメイトに配布して、火曜日中に全員が読み込み、本日は、台本への質問や変更の要望、キャスト決め、大道具や照明や音響や衣装などのグループ分けをする事になっている。


「え~~~・・・・私が?」


 真奈が困惑した表情で立ち上がる。黒板には“熊谷真奈”の名が書かれ、下に“正”の字がいくつも並んでいた。主人公のドロシー役が、多数決で熊谷真奈に決まった。真奈は、麻由の存在感が大きすぎて霞みがちだが、誰とでも仲良く出来る人気者だ。麻由が総監督の立場でキャストに参加できないなら、真奈が主人公に選ばれるのは、2Aの生徒の大半からすれば、納得の配役だった。

 しかし、真奈は、まだ参加は決めてないけど、ライブに備えて隠れてギターの練習をしている。演劇の主人公なんて重荷になるので、「研究会が忙しくて出来ない」と断ろうとした。だけど、部活動で忙しいメンバーは他にも沢山居るし、「推理研究会、そんなに忙しくないだろ」と言われるし、弓道部と生徒会と勉強をキッチリとこなしている麻由の前では何を言っても言い訳にしか成らないわけで、押し切られる形で、主人公を引き受ける事になってしまった。

 その後、カカシ、ブリキの木こり、臆病なライオン、良い魔女、悪い魔女など、主要な配役が決まり、余った生徒達が、大道具や照明や音響や衣装係に分かれる。


「各演出班は、それぞれで打合せを行って下さい。

 キャストは、今日のところは台本の読み合わせを行いましょう」


 麻由の指示で、2Aはテキパキと各グループに分かれる。真奈は戸惑いつつ、教卓周りに集まるキャスト班に寄って行った。




-体育用具室-


 30分ほどドラムの練習させてもらった美穂と、今日も見学をした紅葉が、一礼をして外に出る。美穂は、大事そうに箱を抱えている。軽音部から本気度を認めてもらえたらしく、「家でも練習できるように」とドラムパッドを貸してもらえたのだ。


「頑張ってるばるねっ!」


 上から声がしたので揃って見上げたら、体育館脇の木の枝に、バルミィが腰を降ろしていた。


「どぅしたのっ?」

「紅葉の怪我の様子を見に来たばるよっ!」

「んっ!まだちょっとイタイけど、ダイジョブだよっ!

 お医者さんに言われたから吊ってるけど、結構普通に動くしっ!」

「それは良かったばるっ!」


 バルミィは、ピョンと跳び跳ねて、紅葉&美穂の目の前の地面に着地。紅葉達と並んで歩く。美穂は、「そう言えば!」と言って、ドラムパッドの箱をバルミィに持たせ、スマホを取り出して弄り、ドリームCB750FOURを画像を見せながら、火車=盗難バイクの仮説を説明する。


「バィクが依り代かぁ~~。持ち主に大事にされてたなら、無い話ぢゃないねぇ」

「あくまでも、あたしの勘。可能性にしたら1%未満だろうけどさ。

 そのバイクが見付かれば、ギター担当を引っ張り込めるかもしれないんだ。

 バルミィも、そのバイクを見たら教えてくれないか?」

「どりーむしーびーななひゃくごぢゅぅふぉーって言うばるか?

 チョイチョイ見るばるよ」

「まぁ・・・偶然でも無ければ、簡単には見付からないと思うけど・・・・・・

 えっ?今なんて言った?」

「大型宇宙船がどうなったのか気になって、たまに羽里野山に見に行くからね。

 羽里野山の道で、何度か、このバイクが走ってるのを見た事があるばる」

「見間違えじゃないのか?」

「ボクの星には、こんな乗り物は無いから、興味を持って見てたばるっ!

 ばいくは、くるまとは違って珍しいから、見間違えないばるっ!

 無理矢理スピードを上げてて、エンジンが泣いてるみたいな音がして、

 ばいくが可哀想だったから覚えているばるよ」

「マジで!?このバイクが、何処に帰ったか解る?」

「ずっと見てたわけじゃないから、そこまでは解らないばるっ!」

「そっか・・・そりゃそうだよな」

「バイクって泣くの?」

「機械に興味があるヤツには、

 エンジン音が泣いてるみたいに聞こえるんだろうな」


 火車=盗難バイクは繋がらないけど、田村環奈が見た渡帝辺の生徒が乗ってたバイク=盗難バイクってのは繋がってきた。ビンテージの高額バイク(300万くらい)を高校生が所持してるってのも無理があるし、いくら底辺学校のバカでも、祖父や父親から贈与されたバイクなら、雑に乗り回したりはしないだろう。


「なぁ、バルミィ?

 暇な時だけで良いから、またそのバイクが出てくるか見張ってくれないか?」

「良いばるよ!でも、見付けてどうするばる!?」

「決まってんだろ!盗難車で決定なら奪い返しに行く!」

「んぁっ?討ち入りだねっ!ァタシも行くっ!」

「無茶言うな、紅葉!」 

「腕をケガしてて討ち入りは無謀ばるよっ!」

「でもでも、もし、ミホの言うのが正解で、バイクが火車なら、

 ァタシがトドメを刺すしか無いんでしょ?」

「げっ!まさか、紅葉に論破されるとは・・・」

「こりゃ、連れてくしか無いみたいばるね」

「連れてく代わりに、紅葉は絶対に無茶をすんな!

 あたしの指示に従え!これが条件だっ!」

「ぅぃ~~~っすっ!」

「・・・スッゲー不安」


 バルミィは、「早速見張りに行く」と言って、空高く飛び上がった。紅葉と美穂は、バルミィを見送ってから再び歩き出す。2Bの模擬店企画が無事に動き出した現状で、次の目標はライブを成功させる事。その為には、盗難バイクの返還が必要なのだ。


「ところでさぁ・・・ミホ?」

「ん?なんだ?」

「バルミィがバィクを見付けたとして、どうやって教えてもらうの?」

「そりゃ、もちろん電話かメールで・・・・・・・・あっ!」


 今までは、バルミィが一方的に会いに来るだけ。バルミィとの連絡手段が無い。1個ずつ処理をしてスッキリさせてくつもりだったけど、まだまだ、問題は山積みだ。

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