表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/67

4-3・紅葉の単独行動&宇宙船~バルミィの戦い

―頂上―


 美穂とバルミィが飛んでった方角を眺めてた優麗高の生徒達。今は昼食タイムなんだけど、さすがに、この状況で、弁当を食う気力は湧かない。やがて、生徒から事態を報された先生方が集まってきて、「熊谷真奈と桐藤美穂以外は無事か?」を確認する為に、グループごとに点呼を取る。


「あれ、源川は?」

「・・・さあ」

「え・・・・・・・まさか・・・・だよね?」


 A組の真奈と、C組の桐藤以外で、B組が1人不在。亜美が一抹の不安に襲われる。まさか、座して待つって事が出来ずに、追い掛けていったのか!?




―北側の登山道―


「何処だぁ~~~っ!!出てこい、誘拐魔~~~!!」


 紅葉が、誘拐魔を探しながら登山道を駆け降りている。だが、誘拐魔が大声の呼び掛けに応えて、「は~い!」と出て来るわけがない。

 進行方向で、登山道は二股に分かれる。暫く行くと再び合流するのだが、右側は遠回りになるが緩やかなルート、左側は近道だけど険しい。真奈を拉致った連中は、人質を抱えたままでは、険しい山道は困難って理由で右ルートを進んだのだが、状況を知らない紅葉は迷う事なく左ルートへ突入!木で作られた階段を軽やかに駆け降り、最後の5段くらいは軽やかに飛び降りる!




―千石釜池―


 懸命に抵抗する真奈を、バルカン人2人が担いで運んでいる。その進行方向の道に向かって、バルミィが空から急降下!地上スレスレまで来たところで、背に乗っていた美穂がジャンプして降りて、バルカン人の進路を塞ぐ!美穂を見た真奈は目を潤ませる。


「よぉっ!熊谷だっけ!?災難だったな!」

「き、桐藤さん?助けに来てくれたんですか?」

「まぁ・・・結果的にはそうなるのかな?

 悪いけど、今から見る事、皆には内緒な!」


 更に、再び空に飛び上がったバルミィが、退路を塞ぐようにして、2人の背後の道に着地をする!バルカン人の男達にとっては、真奈は人質、兼、出先のお土産で、探していたド本命はバルミィだ。獲物が自分から寄って来て、「ひょっとして俺達すっげーラッキー?」と不敵な笑みを浮かべる。


「クックック・・・観念して出てきたか姫。」

「そうやって、最初から大人しく投降しておれば良いのだ」

「やかましいばるっ!!投降なんかじゃないっ!!オマエ達をやっつけるばる!!

 命が惜しかったら、その子を置いて、さっさ地球から失せろばるっ!!」

「相変わらず、威勢がいい」

「ところで、そっちの雌は何者だ?」


 異星人共に雌(動物)呼ばわりされた美穂はムカッとする。つい先刻の「未知の敵を相手に、ちゃんと戦えるか?」とかって不安は、瞬時にどうでも良くなった。


「ちょっと成り行きで、オマエ達をブッ倒しに来た地球人代表だ!

 同じ学校の奴がさらわれるってのは、気分いいもんじゃないんでね!」


 バルカン人の男達を挟んで対面側に立っているバルミィが、少し不安そうに美穂を見つめる。「この場所なら戦力になれる」と言ってたけど、一体ど~ゆ~事だろうか?地球の科学力が、バルカンの科学力に比べて、大きく劣っているのは明らかだ。 目の前に居るバルカン人の男達は下っ端だけど戦士。地球人の戦闘能力で勝てるとは思えない。地球人とは、それすら解らないほど知能が低いのだろうか?

 バルミィが心配をしていたら、美穂がポケットからカードケース=サマナーホルダーを出して、直ぐ脇の池の水面へ向けた!水面の一部が乳白色に濁って光を発する!


「誘拐犯の雄ごときが、舐めた事ほざいてんじゃね~よ!・・・変身っ!!」


 美穂は、鳥が舞うようなポーズを決めて、勢い良く、千石釜池に飛び込んだ!えっ?喧嘩を吹っ掛けておいて、いきなり水の中に逃げた?バルミィ&バルカン人の下級戦士が唖然とした直後、水の中から、異獣サマナーネメシスが飛び出してきた!バルカン人♂は言うまでもなく、バルミィや真奈も予想外の出来事で呆気にとられて、ネメシスを見つめるばかり!!


「何ッ!?き、貴様は一体!?」

「き、桐藤さん??」

「ばる~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?!?」

「あたし等にチョッカイを出した事を、後悔しやがれっ!!」


 ネメシスは、レイピアを振るってダッシュ!バルカン戦士達は咄嗟に横っ飛びで回避!しかし、バルカン♂達が体勢を崩してくれたので、担がれていた真奈は、「今だ!」と戒めから脱出して、ネメシスに駆け寄って背後に隠れる!


「しまった!」 「逃げられた!」

「バ~カ!人質を取られてんのに、本気で攻撃すると思ったか!?

 逃がす為に、わざと、避けやすい攻撃をしたんだよ!」

「くっ!地球の雌めっ!」

「その言い方、すっげームカ付く!」


 バルカン♂×2に対して身構えるネメシス!一方、バルカン♂その①がネメシスを、その②がバルミィを睨み付ける!


「まさか、地球の技術力で‘アーマード’が出来るとは思わなかった!

 これは、報告案件だな!」

「姫はともかく、地球人ごとき蛮族との戦いで、

 アーマードを披露する事になるとは!」

「アーマード?なんだそりゃ?」

「美穂っ!コイツ等も本気になったばる!気を付けるばるよ!」


 バルカン♂①&②が、気合いを込めて両腕をクロスさせて頭上に翳した!途端に、両手のブレスレット&両足のアンクレットが輝きを放つ!


「アーマードバルカンっ!!」×2


 2人のバルカン人を光が包み、胸当て、脛当て、ヘッドギア(顔は見える)、腕当て等のプロテクターが実体化して装着される!バルカンアーマード①、バルカンアーマード②登場!


「アーマードバルカンばるっ!!」


 続けて、バルミィも両腕をクロスさせて頭上で翳す!同様に両手のブレスレット&両足のアンクレット&両耳のイヤリング&頭のサークレットが輝きを放つ!

 バルミィを光が包み、胸当て、肩当て、腰当て、脛当て、ヘッドギア(顔は見える)、砲門の付いた腕当て等のプロテクターが実体化して装着される!ハイ・アーマード・バルミィ登場!


「姫のプロテクターは、ハイ・アーマードなのか!?」

「狼狽えるな!所詮は地位で得た武装だ!実力が伴うワケではあるまい!」


 ①と②のプロテクターは軽装備で、バルミィのプロテクターは重装備。パッと見でも解るくらい、露骨な差がある。


「え~~っと・・・アイツ等と同族だよな?

 スッゲー差なんだけど、バルたんはお姫様だから重装備って事?」

「大雑把に言えば、そんな感じばるっ!」

「なんか‘如何にも雑魚’をやっつけるみたいで、

 チョッピリ気が引けるけど、まぁいいか!」


 改めて身構えるネメシス&バルミィと、その①&その②!




―羽里野山・北側登山道―


 美穂達を追いかけて飛び出した紅葉だが、分かれ道で迷わず近道を選んだので、肝心の美穂達が戦ってる千石釜池を見事にショートカット。何時まで走っても美穂とバルミィが見つからないので、ちょっと焦ってしまう。


「んもぅ、何処まで行っちゃったんだぁ~っ!?」


 異形を感知した反応で、アホ毛がピンと立った。


「・・・・・・・・・何!?近くに変な奴がいる??」


 だが、精神集中してみても、詳しい姿とか強さとかが何も伝わってこない。つまり妖怪ではない。さっきバルミィの存在を察した時と同じだ。ひょっとして、2Aの熊谷真奈をさらった奴等の仲間かも。本能が感じるまま登山道から外れ、雑木林の急斜面を登り、やがて林が途切れて視界が開けた場所に到着。目前に、見上げるような巨大な建造物が鎮座してる。地球の一般的な建造物と違う。


「何だぁ~~~~~~こりゃっ!?」


 咄嗟に物陰へ飛び込んで身を潜め、チョコンと顔を出して様子を窺う。バルミィは、「奴等のUFOは山の北側に着陸した」と言っていた。これが、「奴等のUFO」なのだろうか?捕らえられた真奈や、先行した美穂&バルミィは何処に行った?既に、UFOの中に突入して交戦中かな?

 紅葉は、Yスマホを取り出して、画面にベルトと書き込んで和船ベルトを召喚。続いて現れた紅メダルを、ベルトの帆の部分に挿し込む。


「げぇ~んそうっ!!」


 妖幻ファイターゲンジに変身完了!巴薙刀を召喚して肩に担ぎ、力強い足取りで一直線に大型UFOへ進む。自動で開いた扉をチラと見て、迷わず内部に潜入。


「ミホ~~~~~~!!バルミィ~~~~!!クマガヤさ~~~~~~~~ん!!」


 ゲンジがやってる事は、一般的には【潜入工作】と言う。なるべく静かに敵地に潜入し、人質救出とか破壊工作などの目的を果たす事だ。だが彼女には関係ない。遠慮なく大声を張り上げながら廊下を歩き回る。そんな有り様なので、即座に、侵入者を報せる警報が船内に鳴り響き、真奈をさらった奴等と同じ格好をした男達5人がゲンジを発見して駆け寄ってきて取り囲む。


「何者だっ!?」

「ァタシゎ源川く・・・ぢゃなかった、ゲンジですっ!

 ミホ達が何処に行ったか知らないですか?」

「ミホ?なんだそれは?」

「え~っと・・・ミホゎ、ちょっと、おっぱいが小っちゃい女の子ですっ!」

「そんな物、知らん!」

「ありゃ?知らないの?違うUFOに来ちゃったかな?

 ごめんちゃい!来るところを間違えちゃったみたいです。」


 ゲンジは、ペコリと頭を下げ、バルカン人♂達に「バイバイ」と手を振って、UFOから退艦する為に、来た道を戻ろうとする。バルカン人♂達は、ゲンジの緊張感の無さにつられて、思わす、「お気を付けて」とお見送りをしようとするが、我に返ってゲンジを追い掛け、再び取り囲む!


「ありゃ?」

「地球人めっ!この宇宙船を見られたからには、生かして帰す事はできん!

 我らに捕獲されるか、ここで死体となるか、好きな方を選べ!」

「んへぇ!?帰らせてくれないのっ!」

「その通りだ!」

「アーマードバルカンっ!!」×5


 5人のバルカン人を光が包み、胸当て、脛当て、ヘッドギア(顔は見える)、腕当て等のプロテクターが実体化して装着される!バルカンアーマード③&④&⑤&⑥&⑦登場!ゲンジに対して身構える!




―千石釜池―


 身構えるネメシス&バルミィ!その①とその②が突進を開始するのを合図に、激突が始まった!ハイアーマード・バルミィは、素早く宙に飛び上がりつつ、向かってきたバルカンアーマード②と、ネメシスに突進をするバルカンアーマード①に向かって、右手甲の砲門から、光弾を2連射!


「地位で得た武装じゃなくて、実力で獲得した武装ばるっ!」

「ぐわぁっっ!」 「うぎゃぁぁっっ!」


それぞれの光弾が、①の腹と、②の胸を貫通!何処からどう見ても致命傷!バルカン♂達が、悲鳴を上げて倒れる!バルミィが強いのか、バルカン人♂が弱いのか解らないまま、戦闘が終了した!


「・・・・・・・・・・・・へ?もう終わり?あたしの見せ場、無し?」

「ばるっ!」


 ハイアーマード・バルミィは、倒れているバルカンアーマード②の横に着地!②の頭をムンズと掴み、右手甲から光状の剣を発生させて、まるで雑草でも刈るかのように、②を斬首!眺めていたネメシスと真奈が青ざめる。しかしバルミィは、気にもせず、続けて、バルカンアーマード①に近付いて、同じように何の躊躇いも無く斬首!2つの首を並べて、左手甲の砲門から光線を発射して浴びせて、氷り漬けにした。そして、ネメシス達の方を見て微笑む。


「さぁ、救出完了!皆のところに戻るばるっ!」

「あ・・・あぁ・・・・うん」 

「そ、そうですね。助けてくれて、ありがとうございました。」


 日本では、武士の時代に敵将を斬首して晒したらしいけど、バルミィがやったのは、そう言う行為なのかな?腐らないように塩漬けにして上司に届けたりしてたらしいけど、氷り漬けにしたのは、そういう行為なのかな?バルカン人の文明では、日本の500年前の常識が一般的?バルカン人達は、「地球の技術が遅れてる」だの「地球人は蛮族」なんて言ってたけど、どっちが野蛮だ?


 ネメシス&ハイアーマードバルミィが変身を解除して、3人で戻ろうとしたら、美穂のスマホが着信音を鳴らした。ジャージのポケットから取り出してディスプレイを見たら、相手は亜美だった。頂上から千石釜池まで飛んで来て戦い終わるまで、約10分くらいである。夢中で気がつかなかったけど、その短時間で亜美から5回も着信があった。


「どうかしたっ!?」

≪美穂ちゃ~んっ!今、何処~っ!?≫

「千石釜池・・・あ、そうそう。熊谷なら無事だから、先生に伝えてくれ。」

≪ホント!?良かったっ!!・・・ところで、クレハ一緒?≫

「いや、知らね」

≪えええ~~~?だったら、何処に行っちゃたんだろっ!?≫

「ひょっとして、あたし等を追っ掛けてるのか?」

≪わかんない。行方不明で、電話をするんだけど、出てくれないの。≫

「・・・あのドアホっ!人騒がせなっ!解った!探してみるよ!」

≪ごめん、お願いね≫

「了解!」


 通話を切った美穂は、バルミィと真奈に、事情を説明する。事情を聞いたバルミィは、「嫌な予感がする」「ちょっと持ってて」と言って、氷り漬けの生首2個を美穂と真奈に預けて、空高く飛び上がった!


「え゛っっ!?」 「これをっ!?」


 生首を持たされた美穂と真奈は、もの凄く嫌な気分。出来る事なら生首と顔を合わせたくないので、正面を反対側に向ける。一方のバルミィは、上空にで山の北の方を眺めて、大型宇宙船から煙が上がっているのを発見!急降下をして、美穂達のところに戻ってきた!


「紅葉って子、地球人にしては、ちょっと変わった能力を持ってるみたいだけど、

 もしかして、美穂みたいにアーマード化を出来るばるか!?」

「アーマードって変身の事?紅葉が変身できたら、どうだってんだ!?」

「山の北側に着陸してる、ボクを襲った大型宇宙船から、煙が上がってるばるっ!

 きっと誰かが、奴等と戦っているばるっ!

 美穂以外に、変身して戦える地球人なんて、いるばるか!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 美穂以外で変身できるヤツで、既にバルミィと敵対する連中の本陣に乗り込んでいる慌てん坊。美穂の脳裏には、該当するヤツが1人しか思い浮かばない。多分、バルミィの‘嫌な予感’は、正解だろう。


「熊谷、この道を南に進めば、20~30分くらいで皆のところに戻れるからさ、

 悪いけど、1人で先に戻っててくれるかな?」

「え?桐藤さん達は!?」

「紅葉のバカが1人で先走ったみたいだから、付き合って、もう一暴れしてくる。」

「わ、解りました。気を付けてね、桐藤さん。」


 美穂とバルミィはアイコンタクトを取った後、地表スレスレで飛行ポーズになったバルミィの背に、美穂が飛び乗る。真奈は、美穂を乗せたバルミィが、空高く飛び上がって北の方に飛んで行くの見送ったあと、優麗高の皆の居る山頂に戻っていった。

 誰も居なくなった千石釜池の畔で、首を失ったバルカン人♂の体が、ドロドロと溶けて消える。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ