25-4・第1部完結
「そう言えば、マスターの姿がありません!何故ですか!?」
「今頃気付いたのかよ!?」
「誰か連絡したのですか?」
「ァタシ、連絡したよぉ」
「ここ(戦場)が解らないか、ここに来る足が無いか、どっちかじゃないばるか?
返信無いばる?」
「・・・ありませんね」
「気付かずに寝てるばるね」
「あんなザコ妖怪相手に、命令強制権だのラピュセルなんて有り得ないから、
居ても居なくても変わらないけど」
「でも、一緒に戦い抜いた仲間なのに、現場に来ないってのは寂しいばるね」
「まぁ・・・その件も含めて、反省会はしなきゃだな」
「確かに、今回のバトルはお粗末すぎたばるね。
ボクたち、なんであんなザコに負けたんだろ?」
「まぁ、敗因については、全員に反省点があるから追求はしない。
約一名、妖怪への攻撃意志を一切見せず、
狼狽えながら、2回も紅葉を殺しかけたバカがいるけど、
そのうちの1回は、あたしが嗾けちゃったワケだし・・・。」
「んぁっ?そ~いえば、ァタシ、焼け死にそ~になったっ!」
「敗戦理由を追及しないのなら。何の反省をするのでしょうか?」
美穂は皆を見回したあと、ジャンヌに視線を止めて説明を始めた。経緯はどうであれ、今までにジャンヌが手を貸してくれたのは4回。セラフが化提灯を相手に戦意を喪失させた時に、光蛇で化提灯を粉砕。ネメシスがザックトルーパーに敗北した直後に、馬で体当たりしてザックトルーパーを弾き飛ばす。ドラキュラとの最終戦で麻由が串刺しにされそうになった時に、光蛇で串刺し杭を相殺。そして今回、ネメシスが泥田坊の攻撃で苗だらけにされそうになった時に、光る蛇で苗を相殺。
「ジャンヌってさ・・・
毎回、遅れて来て、大技で仲間の危機を救うって立ち位置になるつもりか?」
「そんなつもりはないが、連絡がもらえず、所在地も遠い為、
異変に気付いてから来るのでは、
ユニコーンで空を駆けても、どうしても遅れてしまうのです」
「ばるっ!ボクとは違って、お馬さんじゃ、高速移動はできないもんね」
「問題はそこだ!家が遠くて連絡手段も無し。どうにかしなきゃな」
「マスターとならば、テレパシー交信は可能だと思いますが・・・」
「その肝心のマスターさんが来てないばるっ」
「連絡については、誰かが契約したスマホを持ってもらうか、
真奈のテレパシーでどうにかなるとしても、
所在地が遠いのはどうすることも出来ないな」
「こっちに引っ越してくればィィんぢゃね?」
「それは無茶ですよ!簡単に言わないでください。
ジャンヌは本来は、現世には存在していません。
住民票も戸籍もありません。
当然、保証人もいませんから、部屋を借りるなんて不可能です」
「ぢゅ~みんひょ~?ほしょ~にん?なにそれ?そんなの要るの?
ァタシ、そんなのあるかなぁ?」
「あるに決まってんだろ!家に帰って親に聞け!」
「だったら、マナのおうちに住めば?」
「真奈さん自身が居候の身です。勝手に同居人なんて増やせないでしょうね」
「なら、マユのおうちゎ?」
「おぉ!麻由の家なら広いし、部屋もあるから良いじゃん!」
「えぇ!?私のマンションですか!?」
「名案ばるっ!」
「ふむ!そうしていただけると、私も助かります。
思い掛けずに、この身は存続されることになりましたので、
廃墟で寝泊まりするのは、些か辛くなってきました」
「うへぇっ?ジャンヌ、ホームレスやってたの?」
「そりゃ気の毒だ。麻由、面倒を見てやれ!」
「えぇ~~~~・・・チョット待って下さい」
「食事をすれば、体力の回復はしますが、
私は魔力で作られた体なので、魔力供給があれば食事は不要です。
寝泊まりする宿だけで良いので、提供していただけないでしょうか?」
「ばるる~~・・・ご飯、食べさせてあげなきゃ可哀想ばる~」
「どうせ、麻由1人で5~6人前は食べるんだろ?
もう一人前くらい、何とかしろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
賛正4 反対0 曖昧1 棄権1(真奈)。因って本案は可決されました。
「ところでさっ!」
「ん?何だ、紅葉?他に何か問題点でもあるの?」
「ジャンヌの連絡方法ゎOKとして、
誰か、今回のこと、ケーサツのナツザワさんに連絡した?」
「ボクが出動する時に伝えたばるっ!」
「場所は?」
「・・・つ、伝えてないばる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
遠くの方からサイレンを鳴らしたザックトレーラーが走ってくる。空は明るくなってきたので、雛子の方で、こっちを発見してくれたみたいだ。
「まぁ・・・いっか。今度から気を付けようか?」
初日からこれでは、今後も、時々、報告を忘れそうだ。全員泥だらけだし、多分、雛子は怒ってるだろうから、家までザックトレーラーで送ってくれないだろう。
-昼・ヘブンズパレス穂登華-
真奈の提案に紅葉が同調して、美穂&バルミィも呼び出され、麻由のマンションで、ささやかな新年会が催される事になった。ジャンヌは、麻由の部屋で居候を開始。
料理は紅葉と真奈が持ち寄ってくれた。ちなみに、美穂&麻由&真奈&バルミィ&ジャンヌは普段着だが、紅葉だけは「これから成人式?」もしくは「七五三?」と聞きたくなるような振り袖着物を着ている。
「紅葉の作った伊達巻き、美味いじゃん!」
「栗きんとんも美味しいばるっ!」
「んへへっっ!」
「このローストビーフは、買ってきたのではなく真奈さんが作ったのですか?」
「うん!実は私、料理は得意なんだよ!」
「どれもこれも美味!まさに『据え膳食わぬは男の恥』ですね!」
「そ、それはちょっと違いますよ、ジャンヌ。」
「ジャンヌさん・・・そんな下品な言葉、どこで覚えたの?」
一通り食べ終わったところで、真奈が満を持して事前に準備してきたA1サイズの模造紙を広げる。
【美穂さんと
愉怪な仲間達】部 ・・・と書いてある。
「・・・・・・・・・・・・んぁ?なぁにそれぇ?」
「私達のグループ名だよ!略して愉“怪”(ゆかい)なんてどう?」
「グループ?漢字が間違えていますよ。『ゆかい』の『かい』は『快』です」
「えへへ!これで良いの!これは私なりの拘りだよ!
怪獣や妖怪と戦うから、あえて『怪』にしたの!どうですか、美穂さん?」
「妖怪とかが発生したときの連絡手段か。
まぁ、ラインのグループ名なんて何でも良いだろ?任せるよ」
「違いますよ!ライングループじゃなくて、私たちのサークルの名前です」
「話が見えないばるっ!」
「優麗高に、私達で新しい部活を発足させるの!
そうすれば、私達が常に一緒にいても違和感は無くなるよね!
もちろん、ジャンヌさんとバルちゃんも学校外では参加メンバーだよ!」
「はぁぁぁっっっっっっっ!?部活名にあたしの個人名って!!?」
「真奈さん、話が極端すぎますよ。
そんな名前のサークルが許可されるワケがありません!」
「私が所属している推理研究会を『美穂さんと愉怪な仲間達部』に改名するの。
元々、推理研究会は、
数年前の生徒会長が発足させた『生徒会長の私兵』グループだったわけだから、
現生徒会長の葛城さんが引き継いでも、何も不思議はないよね?」
「あたし達が麻由の私兵ってのは気に入らん。
生徒会が、あたし達の傀儡になるってなら引き受けてやるけど」
「み、美穂さん・・・それは暴言です。生徒会は、個人の都合には従いません」
「冗談だ!真に受けるな、クソ真面目!」
「でもさでもさ、
ァタシたちが、いつも一緒に居ても不自然ぢゃないのは便利だよね?」
「ばるっ!ボクも賛成ばるっ!」
「だよね!良い案でしょ!」
「うむ!『有象無象』とは、まさにこの事ですね!」
「ジャンヌさん・・・私をバカにしているの?
有象無象は、中身の伴わない集団って意味ね。
こ~ゆ~時は、切磋琢磨するチームとでも言ってくれない?」
「一歩譲って『美穂さんと愉怪な仲間達部』として、
部長は発起人であり、推理研究会員の熊谷さんですか?
部長会の規則で、部長の兼任は出来ませんから、
私以外にやっていただかなければ。」
「部長は美穂さん!そして、私が副部長!」
「ただでさえ、戦闘で忙しいのに、
学校内の下らない依頼もクリアしなきゃなのか?
田村の父親のバイク探し(火車事件)みたいな、
やる価値の有りそうな依頼ばっかなら面白いんだけどな」
「だから、生徒会の私兵って肩書きが有効なんですよ!
依頼は全部、生徒会経由にするんです!
葛城さんが取捨選択して、価値の有りそうな依頼だけを引き受けます!」
「生徒会の私兵って肩書きが気に食わん!」
「なんなら、アミにも入ってもらおっか?ゲリラライブのメンバーだしっ!」
「亜美を、このチームに巻き込むのは拙いばるよっ!」
「そっかぁ~~・・・アミ、あたし達が戦ってるの知らないもんね」
「知ってるけど、気を遣って知らないフリをしてる・・・んだけどな。
まぁ、どっちにしても、一般人を巻き込むのはマズいだろう」
「『美穂さんと愉怪な仲間達』・・・私は、マスターが望むのであれば従います。
司令塔とも言うべきミポリンをリーダーに据えるのは理に適っています」
「ん?ミポリン?」
「知恵者のマユユが、依頼の取捨選択をするというのも適材適所だ」
「はぁ?マユユって?」
「そして、比較的身軽なクーチャンとミーミーと私が実働部隊!
良き人選です!」
「んへ?くーちゃん?」
「ミーミーってボクばるっ?」
お堅いジャンヌの口から、聞き慣れない固有名詞が飛び出してきた。
「はい、何かおかしいですか?
私は、新参ゆえに、まだ貴殿等と上手く馴染めていませんからね。
マユユに相談したら、愛称なるものを利用すれば、
親密度が上がるとアドバイスをいただいたのだ」
「麻由、オマエの入れ知恵か!?」
「た、確かにアドバイスはしましたが、それで、マユユ・・・ですか?
名前負けしそう。この名は、有名な元アイドルの愛称なんですけど」
「くーちゃんて、ヤセーバクダンってお笑いコンビのメンバーにぃるょぉ」
「ジャンヌの場合は、愛称以前に堅苦しい喋り方を何とかした方が良いばるっ」
「マスターマナ!皆を愛称で呼ぶ許可をいただけるか?」
「えっと・・・命令権で『その愛称で呼べ』と言えば良いの?」
「真奈の事だけは普通に呼ぶんかいっ!?
命令権はやめろ!ジャンヌが、あたし達を変な渾名以外で呼べなくなる!」
「お気に召さぬか?
ならば、『匹夫の勇、貧乳、ヘタレ、元気の押し売り』と言う渾名も考えた。
その場合は、皆に合わせて、マナの事は、マスター臀部と呼ぶつもりです」
「ひっぷのゆう?ヒップの優?・・・お尻のおっきいマナの事?」
「真奈さんは『マスター臀部』。話を聞いていなかったのですか?
『匹夫の勇』とは『血気に逸るだけのバカ』・・・おそらく紅葉の事ですね。
それよりも、『ヘタレ』は、もしかしたら、私の事を言っているのでしょうか?
もはや、渾名ではなく悪口では!?」
「マスター臀部はちょっと恥ずかしいな」
「『元気の押し売り』はボクばるか?
確か、お笑い芸人がタレントさんに付けた渾名ばるよね?」
結論!クーチャン、ミポリン、マユユ、ミーミー、マスターマナの方がマシ!
「・・・てか、愛称が1990年代のレジェンドアイドルと同じで、
活動チーム名が『美穂さんと愉怪な仲間達』って・・・。
いててっ!完治していない脇腹が痛くなってきた。
この設定は、今後に引き継がれるんかい?」
【妖幻ファイターゲンジ・紅葉と愉快な仲間達 第一部・・・・・完!!】
紅葉と美穂の出会いからジャンヌの参加の「メインキャラ集結」までで第一部は終了。引き続き、紅葉の父と母の出会いを描いた外伝を投稿します。
第二部でメインキャラの過去の掘り下げやチームの結束がテーマになり、第三部で新しくメインに加わるキャラが投入され、第四部がラスボスグループと衝突する最終ストーリーになります。
・・・が、こちらのサイトでは、現時点では第一部の投稿で終了予定です。
カクヨムでは同ストーリーはかなり先行しており、そろそろ最終回となります。




