24-2・ゲンジ&バルミィvsドラキュラ~ジャンヌの決断
-鎮守の森公園・中央付近-
妖幻ファイターゲンジ(紅葉)が逃げ回り、マスクドバーサーカー・ドラキュラが追い回す。ゲンジは「巨体のドラキュラでは小回りが利かない」と判断して、木々の間を縫うようにして逃げ回る。ドラキュラは大木を除け、雑木を薙ぎ倒し、雄叫びを上げながらゲンジを追う。
ゲンジは抑えた戦い(?)は苦手。ストレスが溜まるが、美穂に「戦うな」と言われたので我慢するしかない。だが、チョットくらいは攻撃をしたいので、逃げながらステーキナイフ6本を召喚して、左右の手に3本ずつ持って気合いを込める。
「とぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっ!!!」
一斉に投擲!ジャンヌの!黒炎の小悪魔達を見様見真似でパクった奥義・子供が落書きをしたステーキナイフが発動!1本1本が不規則に・・・と言いたいのだが、動きは不規則だけど、6本全部が同じ軌道でドラキュラに向かって飛ぶ!
煩わしく感じたドラキュラは気合いを発して、子供が落書きをしたステーキナイフを弾き飛ばす!妖力が掻き消されたステーキナイフは、次々と地面に落ちた。
「んぁぁぁっっっ~~~~~~~・・・ダメかっ!」
一方、美穂と麻由を乗せたバルミィが、ゲンジとドラキュラを発見して急降下開始!美穂と麻由が変身アイテムを翳す!
「変身!」 「幻装っ!」
異獣サマナーネメシス&聖幻ファイターセラフ登場!バルミィが一定の高さまで降下したところで、同時に飛び降りた!
「アーマードバルカンばるっ!」
バルミィがハイアーマードを装着して、ドラキュラに向かって光弾を発射!ゲンジへの追走を妨害する!ネメシスとセラフは、ゲンジの目の前に着地!細々と作戦を説明している余裕は無いので、「一点突破」とだけ指示を出す!
「んぁ!!戦ってィィんだねっ!」
「オマエらしく、後先考えずに、思いっ切り戦え!」
「よぉ~しっ!!」
ようやく、美穂から戦闘解禁の指示がでた!ゲンジは喜び勇んで、今まで無理して逃げ回って溜めた鬱憤を発散する勢いで、ドラキュラに向かって突進をする!
光弾の雨をかい潜りながら、HAバルミィに接近をするドラキュラ!バルミィは間合いを空ける!飛べるようになったドラキュラは厄介だが、空中移動ではバルミィに分がある!ドラキュラは、体の向きを変えて、再びバルミィを追おうとするが、ゲンジが放った闇色の矢が飛んで来て、ドラキュラの進路を妨害!ドラキュラは矢の発射先に視線を向けるが、ゲンジは既にドラキュラの懐に飛び込んでいた!ドラキュラの頭上を目掛けて、渾身の力を込めた巴薙刀を叩き降ろす!
「んぁぁぁぁっっっっっ!!!」
ゲンジの力任せの“面”がドラキュラにクリーンヒット!ドラキュラは体勢を崩して地面に墜落!ゲンジはドラキュラの落下から数秒ほど遅れて着地!
立ち上がる巨大な怪物!ゲンジは続けざまに突きを入れるが、今度はドラキュラの腕で防御され、束を掴まれた!そのまま、ゲンジを力任せに引き寄せ、マスクをの口部分を開いて禍々しい牙を出現させる!
「げげっ!ァタシを食べる気なのっ!?」
「ばかっ!接近しすぎだっ!!」
戦況を見守っていたネメシスは青ざめる!ゲンジに、ドラキュラの生命力の直接吸収を伝えていなかった!
「ばるっ!そうはさせないばるっっ!!」
HAバルミィの光弾がドラキュラの顔面に炸裂!押さえ付ける力が弱まった隙に、ゲンジは薙刀の石突きを、ドラキュラが大きく開けた口に突っ込んだ!ドラキュラは堪らずにゲンジを薙ぎ払う!
「ばるぅぅぅっっっっっ!!!」
バルミィが分身を発動!一体がドラキュラの背後に接近して、右手甲から発したジェダイトソード(レーザー剣)をドラキュラの肩に叩き込む!ドラキュラは激痛で仰け反りながらも、両腕を振り回して裏拳でバルミィを弾き飛ばす!1体目の分身が消滅!直後に、空中にいた2体目のバルミィが光弾を発射!ドラキュラに着弾して一定のダメージを与える!更に、3体目の分身がドラキュラの懐に飛び込み、ドラキュラの腹に右手甲の砲門を押し当てた!
回避不能と判断したドラキュラは、魔力を込めた右掌を地面に叩き付ける!
「ぬおぉぉぉぉぉっっっっ!!!」
バルミィのゼロ距離の光弾とドラキュラのカズィクル・ベイ(串刺杭)が同時に発動!地上から出現した無数の杭に貫かれるバルミィ!弾き飛ばされ仰向けに倒れ込むドラキュラ!杭で貫かれた分身は消え、上空に居るバルミィ本体だけが残る!
「んぉぉっっ!すきありっっ!!」
体勢を崩したドラキュラに向かって、ゲンジが突っ走る!だが、ドラキュラは、左掌にも魔力を溜め込んでいた!仰向けに倒れながら左掌を地面に叩き付ける!
「げげっ!すき無かったっ!!」
ドラクル・ディストゥッジェ発動!ドラキュラを中心にして、強烈な衝撃波が土埃を上げながら広がり、突進中のゲンジと、上空のバルミィを弾き飛ばした!
攻防一体の全方位衝撃波が飛んでくると、どんなに押していても全てがチャラにされてしまう。体力の補充をしたばかりのゲンジ(紅葉)はともかく、出ずっぱりバルミィと、既に余力が無いセラフ(麻由)は、直ぐに限界が来る。
「運を天に任せて、体力に余裕があるうちに仕掛けるしかないかっ!」
ネメシス(美穂)は、ゲンジに「ヘルズノヴァ(奥義)の発動」を指示!それが、バルミィ&セラフにとっては作戦決行の合図になる!
-公園内東側-
真奈(緑ザックをマスク以外装着)の視線のずっと先で、閃光が上がり、轟音が鳴り、戦いが始まった事を伝える。
美穂達を見送ったあと、真奈は悔しそうな表情を滲ませて佇んでいる。雛子が避難を呼び掛けても動こうとしない。ジャンヌがトレーラー屋根から飛び降りて寄ってきた。
「これで良いのですか?マナ?」
「何が!?」
「貴殿が直接参戦せずとも、マスターなら彼女達を支援する手段がある。
命令を・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・う、うん
そんなの解ってる・・・だけど出来ないよ。
私だけじゃない。美穂さんや麻由ちゃんだって、それは解っている。
でも誰も言わなかった。
だから・・・私にも・・・出来ない」
「・・・マナ」
ジャンヌは、それ以上は何も聞かず、真奈の「ジャンヌを殺したくない」と言う気持ちを汲み取った。
「・・・解りました」
ジャンヌは目を瞑り、気持ちを整える。
ヴラドとは進むべき道を違えたが、彼の生き方には一定の敬意を払っている。だからこそ、今の怪物を見過ごすことは出来ない。あれは、ヴラドの意志と生き様を無視した姿だ。ヴラドを尊重するなら止めてやらなくてはならない。
召喚された当初は、状況が解らず、ただ、弁才天ユカリの言われるがままに戦った。戦いの中で、天の巫女を憎み、鬼の末裔を目障りと感じた。だが、老婆と知り合い、敵だった者達と接点を持つことで、紅葉が戦う対象ではないことを知る。ジャンヌの攻撃で傷を負った美穂は、何も文句を言わずにジャンヌを受け入れてくれた。麻由は、生前のジャンヌに対して謝罪をして、礼を言った。
もう、彼女達に対するわだかまりは無い。むしろ、ジャンヌの心を氷解させてくれた彼女達に死んで欲しくない。
「では、これから行うことは、あくまでも私の独断です。
マスターには一切関わりの無いことと思ってください」
「・・・え?なにを?」
目を開け、真奈を見つめ、澄んだ笑顔で微笑むジャンヌ。真奈には、ジャンヌの体が蒸発化を起こして、一瞬だけ半透明になったように見えた。
「安心してください。天の巫女達と敵対をする気はありません。
マスターの命令に背き、ワガママを通す私を見逃していただきたい!」
ジャンヌは、数歩前に出て、丹田に力を込めて気合いを発した!首からぶら下げた懐中時計が反応をして青い光を放つ!
「マスクドチェンジ!!」
ジャンヌの全身が発光をして、青銀のプレートアーマーで覆われ、マスクド・ジャンヌに変身完了!ユニコーンを召喚して、背中に飛び乗る!
「マナ・・・貴殿が、私のマスターであってくれた事、感謝いたします!」
「ジャンヌ・・・さん?」
ユニコーンは、マスクド・ジャンヌの発した気合いを合図にして、戦場方向の空に向かって駆け上がっていった!
空を行くジャンヌを見送った真奈(緑ザックをマスク以外装着)は、込み上げてくる気持ちを抑えることが出来なくなり、戦場に向かって走り出そうとして、雛子に腕を掴んで止められる。
「止めないでっ!」
「無茶はよしなさい!貴女は他の人達とは違って、無力な人間なのよ!
解るでしょ!?貴女まで行ってしまったら、貴女のお友達が困るの!」
「私だけ何も出来ないなんてイヤ!!私だけが待ってるなんて我慢出来ない!!
ジャンヌさんに命令できるのは私だけなんです!」
「こらっ!待ちなさいっ!!」
真奈は雛子の制止を振り切って、戦場に向かって駆けていく!
雛子は真奈を追おうとするが、直ぐに立ち止まった。真奈を止めるべきだが、雛子には、それ以上にやらなければならないことがある。中途半端にしてしまった公園の封鎖を完了させなければならない。もし、この公園に部外者が立ち入って被害が出たら、美穂達がここを戦場に選んで命を張っている行為を無駄にしてしまう。
「貴女たちを信じる・・・だから、誰も死なないで!
一人でも欠けたら、一生恨むからね!」
雛子は急いでトレーラー運転席に乗り込み、公園内の避難勧告を徹底させる為に、戦場から離れていく。
-公園内中央-
ネメシス(美穂)が作戦決行の指示を出した!あとは、ゲンジ(紅葉)の「ヘルズノヴァ(奥義)発動」のタイミングに委ねる!戦いに集中をしている時のゲンジなら、最も有効なタイミングを、本能で判断するはずだ!
「頼んだぞ、紅葉!オマエの野生の勘にっ!」
ゲンジがドラキュラに向かって突進!ドラキュラの周りを飛び回っていたHAバルミィが、ドラキュラの背後を取る!ドラキュラは一足飛びでバルミィから離れ、バルミィとゲンジを充分に引き付けてから、右掌で地面を叩いて衝撃波を発生させた!この動きを呼んでいた(ってか、衝撃波を誘っていた)ゲンジは素早く身を引き、吹っ飛ばされながらもダメージを最小限に抑えて、直ぐに体勢を立て直して大木の幹に着地!一方のバルミィは、1つ目の分身が衝撃波に煽られて消滅するが、空に居た別のバルミィが、ドラキュラに向けて光弾を発射!防御姿勢になるドラキュラ!更に、隠れていた3体目のバルミィが、ドラキュラの懐に飛び込んだ!ドラキュラは左掌を地面に叩き付け、衝撃波を発生させる!接近中だった分身バルミィが消えて、空中に居た本体だけが残る!
「今だっっ!!」
ゲンジは、このタイミングを待っていた!両手に溜められた魔力が放出された直後!加速力のある攻撃なら、次の魔力が堪る前にドラキュラに届くはずだ!
「んぁぁぁっっっ!!!
ウルティマバスタァーーーッッッ(ヘルズノヴァ)!!!」
足場にしていた木の幹を蹴り、左掌から八卦先天図を出現させて通過!冥鳥となってドラキュラに突っ込む!
同時に、身を隠して温存をしていたセラフが、ドラキュラに向かって突進!バルミィはゲンジを援護する為に、ドラキュラ目掛けて光弾を放つ!
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」
ドラキュラは、マスクの口を開いて、エナジードレインを発動させる!セラフ、バルミィ、そして冥鳥から生命力が強制的に放出され、ドラキュラの体内に吸い込まれていく!
「んぁっっ!」 「ばるっ!」 「くっ!」
バルミィは、エナジードレインの圏外に逃げたいのだが、それではゲンジとセラフが今以上に生命力を吸収されてしまうので、その場に踏み止まる!冥鳥は放っていた妖気が減少して突進速度が激減!ただでさえ、理力が枯渇しているセラフは、目眩がして走れなくなり、地面に片膝を付いてしまう!
冥鳥がドラキュラに突っ込む!両手で冥鳥を防御するドラキュラ!放出妖力が少なくて、冥鳥が押し戻される!今のヘルズノヴァでは、ドラキュラの防御を正面に集中させて、背後を隙だらけにすることが出来ない!
「まだまだぁっっっ!!」
ゲンジはヘルズノヴァを維持しながら、更なる妖力を体内で練り込む!セラフは、まだ動けそうにない!だが、ゲンジは作戦を諦めていない!状況を見守っていたネメシスが、ゲンジの起死回生を信じて、セラフの代わりにドラキュラの背中に向かって突っ走る!
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」
「んぁっ!?」 「ばるっ!?」 「なっ!?」 「えっ!?」
次の瞬間、ドラキュラは両手で冥鳥の突進を防御したまま、右足を上げて、四股を踏むようにして大地に打ち下ろした!右足に込められた魔力が地面に溶け込み、ドラクル・ディストゥッジェが発生!
全方向に広がる衝撃波によって、冥鳥の突進力が更に勢いを失い、セラフとネメシスは為す術もなく弾き飛ばされて木に激突!セラフは変身が強制解除されて麻由に戻ってしまう!
だが、まだ終わらない!ドラキュラは左足を上げて、大地に打ち下ろした!ドラクル・ディストゥッジェの2連打!ゲンジを覆っていた冥鳥が消し飛び、推進力を失ったゲンジが防御も何も出来ずに弾き飛ばされる!どうにか空中で一発目を凌いだバルミィも地面に墜落をする!
大誤算だった。ヴラドでは奥義の4連打など不可能だった為、ドラキュラも同様だと思い込んでいた。注意すべきは掌のみと思い込みすぎていた。2連打すら満足にクリア出来ていないのに、4連打なんてクリア出来るわけが無い。仮にドラキュラが奥義を多用してガス欠になっても、エナジードレインで直ぐに回復をしてしまう。
エナジードレインによる生命力の強制搾取と衝撃波の併用をされたら、ヘルズノヴァですら妖力を奪われて、ドラキュラには届かない。ネメシスの作戦は根底から崩れ去った。
ドラキュラは4人を見回し、麻由の方に体の向きを変える。ドラキュラの本能は、神の力を感じ取っていた。自分を灰に変える神の力は、真っ先に摘み取る必要がある。
両掌に魔力を込め、地面に向かって打ち下ろした!麻由は、意識が朦朧として、立ち上がることさえ出来ない!カズィクル・ベイ(串刺杭)発動!無数の串刺し杭が、麻由に迫る!
その時!
「はぁぁぁっっっっっっっっっっっっっ!!!」
麻由の後ろから蛇のように伸びる光が飛んで来て、地面から出現した無数の杭を破壊!青銀の騎馬兵が飛び込んできて、麻由を抱えて空中に飛んだ!
「まだ、生きていますね!?天の巫女!」
「アナタは・・・?」
マスクド・ジャンヌ見参!
ジャンヌは、ネメシスの近くでユニコーンを着地させ、抱えていた麻由をネメシスに預ける。




