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22-3・ゲンジvsヴラド~ヴラドの弱点~バレンの戦闘放棄

-鎮守小学校グラウンド-


「はぁぁぁっっっっっ!!!ウルティマバスタァァーーッッッ!!!!」

「ぬぅぅぅぅ!!!」


 マスクドヴラドは、ハイアーマードバルミィから手を離し、両足を踏ん張らせて防御の態勢になる!直後に、真上から飛んで来た神鳥の光がヴラドを直撃!

 神鳥の光の中から妖幻ファイターゲンジ(紅葉)が抜け出して、仁王立ちをしているヴラドの足元に着地!仰向けに倒れていたバルミィを救出して、ヴラドから間合いを空けた!


「ダイジョブだった?」

「ばるるっ!助かったばるぅ~。」


 コア(ゲンジ)が無くなった神鳥は、ヴラドの防御に凌ぎきられて消滅をした。マスクドヴラドは、ゲンジを見つめて首を傾げる。


「手応えが薄い。今の攻撃、本気ではないな?・・・何故だ、ゲンジよ?」

「今の攻撃ゎ、オマエを倒す為ぢゃなくて、バルミィを助ける為だもんっ!

 オマエ、卑怯な事がキライみたいだから、

 不意打ちでやっつけるのはズルいって思ったっ!」

「正々堂々と雌雄を決する腹積もりか!・・・気に入った!!」




-杉田邸の東側にある空き地-


 ネメシスとザック部隊が激突をする!ザック部隊が火力に物を言わせた力押しの攻撃ばかりなので、ネメシスがひたすら回避を続ける。回避運動をする度に脇腹の傷がうずく。隙を突いて懐に飛び込みたいのだが、持ち前の瞬発力を発揮できない。


「チィィ!思ってた以上に体が動かない!」


 トレーラーでネメシス達を追ってきた雛子は、戦いを見守りながら違和感を感じていた。真奈が隣で目を潤ませながらネメシスを見つめていたので、「何かあったの?」と尋ねる。


「美穂さんは、先日、大ケガをして、まだ戦える状態じゃないのに、

 私を守る為に・・・。」

「あの子・・・それほどの覚悟で?」


 動きが鈍いネメシスに対して緑ザック2人が突進をしてくるが、白鳥型モンスター=キグナスターが接近して弾き飛ばす!だが、体当たり程度では緑ザック達は倒せない!

 直接打撃をするなら、殺さない程度の匙加減は容易だが、モンスターを嗾ける場合は加減が難しい。




-鎮守小学校のグラウンド-


 ゲンジ(紅葉)が接近戦でマスクドヴラドを撹乱し、HAバルミィが空から光線を放つ!ヴラドがゲンジ目掛けて巨大杭を振り回し、ゲンジは後方に引いて回避をする!

 ゲンジはバルミィから「ヴラドの巨大杭との接触には気を付けろ」とアドバイスを受けているが、それ以前から巨大杭の危険性は知っている。初戦でヴラドの攻撃を受け止め、ドラクル・ディストゥッジェ(竜公の破壊)の直撃を受けて、意識を失って敗北をした。巨大杭は、触れる事さえ危険な武器だ。いつもなら考え無しに敵の懐に飛び込むゲンジだが、今回ばかりは、敵の武器と接触しないようにフットワークを駆使して冷静に挑んでいる。


「この前の戦いみたぃにゎいかないよっ!」

「ふっ!相変わらず、すばしっこい!」


 ゲンジが巴薙刀を装備して接近をして、マスクドヴラドが牽制の為に巨大杭を振り回し、ゲンジが回避をして、ヴラドが間合いを詰めようとすると、バルミィが空から攻撃をしてヴラドの動きを妨害する。そして、また、ゲンジが接近をする。ヴラドが空にいるバルミィを攻撃しようとすれば、ゲンジがヴラドに接近をして妨害をする。お互いに、踏み込まず、踏み込めず、決め手に欠く攻防が続いていた。


「んぁ~~・・・イライラしてきたっ!」

「紅葉っ!短慮はダメばるよっ!」

「ダイジョブ!ワカッテルっ!」


 ヴラドの巨大杭を警戒して、なかなか近付けないゲンジは、接近戦を諦めて素早く間合いを空ける!そして、「ならば遠距離攻撃!」とYスマホの画面に「弓」と書き込もうとしたが、ヴラドが隙を見過ごすわけが無く、一足飛びにゲンジに近付いて、5m程度離れた地点で、魔力を込めた巨大杭を地面に叩き付けた!魔力充填率が30%程度のドラクル・ディストゥッジェ(竜公の破壊)発動!ゲンジを弾き飛ばすほどの破壊力はないが、周辺の地面と大気を揺らす衝撃波が発せられ、ゲンジは体勢を崩して尻餅をついた!


「んんぁっ!しまったっ!」


 ヴラドが、尻餅をついた直後のゲンジに突進をしてくる!バルミィは慌てて光弾を放つが、動きを呼んでいたヴラドは、素早く脇に避けて回避をしつつ、ゲンジの足元目掛けて巨大杭を放り投げた!巨大杭がゲンジの足元の地面に深々と突き刺さる!だが、立ち上がったゲンジは回避をするどころか、ヴラドに向かって突進をしていた!そして、Yスマホ画面に指で「冥鳥」と書き込む!


「はぁぁぁっっっっっ!!!ウルティマバスタァァァッッッッッ!!!」


 冥鳥が、地上から出現した無数の杭を砕きながら、ヴラドに突撃する!ミドルレンジからの、いきなりの大技の発動!駆け引き抜きの力業勝負だ!


「なにぃっ!?」


 慌てて正面で両腕を交差させて、冥鳥の直撃を食い止めるヴラド!しかし、弾き返す事が出来ずに押し切られ、冥鳥を受け止めたまま足裏を滑らせて後退をする!


「んんっ!やっぱ、ガンジョー!でもっ!」


 ゲンジは「このまま受け止められ続けたら必要以上に体力が消耗してしまう」と判断して、ヘルズノヴァの発動を解除して、ヴラドの足元に着地!ガラ空きになっているヴラドの腹に、拳の連打を叩き込んだ!


「グゥゥゥゥッッ!」


 姿勢を崩すヴラド!ゲンジは素早く数歩退いて腰を低く落とし、再び冥鳥の闘気を身に纏って、ヴラドに体当たりをした!

 ヘルズノヴァの2連撃!ヴラドは両掌を突き出して再び防御をする!拮抗する冥鳥とヴラドの魔力防御壁!ゲンジは今度こそ力業で押し切ろうとするが、ヴラドも負けてはいない!冥鳥を押し返すほどの勢いで、魔力の放出を続ける!


「ぬおぉぉぉぉっっっっ!!」


 マスクドヴラドの体が僅かに薄くなり、冥鳥ゲンジの目には、ヴラドの中に召喚主(真島)が見えた。


「んぁぁぁっ・・・・・・・んぁ?」


 一瞬の動揺がヘルズノヴァの突進力を弱める!ヴラドは、その僅かな隙を見逃さない!渾身の魔力を放出させて冥鳥を押し返した!力負けをしたゲンジは、弾き飛ばされ、地面に墜落をして、纏っていた冥鳥の闘気が消える!

 肩で息をして立ち上がり、ヴラドに対して構えるゲンジ!一方のヴラドも、片膝を地に付いて肩で息をしている!


「ん~~~・・・何か、わかっちゃったかも」


 ヴラドは召喚主に憑いているから、魔力の変換や発動が流暢になり、前回よりも強くなっている。召喚主の中にヴラドの魂が有り、ヴラドの魔力が鎧のようにして召喚主を覆って、ヴラドの形を作っている。その為、ヴラドが、魔力を正面防御に集中させたのと同時に、ヴラドの全身を形作っている魔力が不足して、召喚主(真島)が丸見えになったのだ。


「んっっ!」


 ゲンジは、本能で攻略法を理解した!ヴラドが召喚主に憑いたことで攻撃に隙は無くなったが、かわりにヴラドは自分自身と召喚主を同時に守らなければならない!

 ゲンジは気勢を上げ、マスクドヴラド目掛けて突進を開始!ガス欠覚悟で、Yスマフォから4発目の冥鳥変化の八卦先天図を発生させ、更にディスプレイに指で「アタシのコピー」と書き込んだ!


「マユに出来たんだから、アタシにだって出来るハズっ!」


 ゲンジが翳した左掌から、絵心が無い人が描いたラクガキみたいなゲンジが出現!ラクガキゲンジが、正面にある八卦先天図を通過して、冥鳥に変化!翼を広げてマスクドヴラドに向かって飛ぶ!


「うルティまばすたぁぁっっっ!!!とワぁぁっっっっっっっっっっ!!!!」


 マスクドヴラドは魔力を込めた巨大杭を地面に突き立て、カズィクル・ベイを発動させて地面から出現した無数の杭で迎撃をするが、冥鳥の闘気は物ともせずに杭を打ち砕き、ヴラドに突っ込んだ!ヴラドは両掌を突き出して、魔力を放出して再び防御をする!予想通り、ヴラドの体が薄くなり、覆われていた召喚主の姿が見える!

 直後、冥鳥ラクガキゲンジの真後ろにいた本物のゲンジが、飛び上がってヴラドの頭上を越えて背後に回り込み、丸見えになった召喚主に拳の連打を叩き込んだ!


「ぐはぁぁっっっ!!」


 リベンジャーと召喚主が一体化をした為に、召喚主の受けた痛みが、そのままヴラドへのダメージとなる!マスクの下で苦悶の表情を浮かべて仰け反るヴラド!集中力が揺らいだ為、冥鳥を防いでいた魔力防御が低下をして力負けをする!コピーが纏ったヘルズノヴァが、ヴラドの防御を押し切った!


「ぐぉぉぉっっ!し、しまったっ!!」

「んげげっ!!やべっ!!」


 ヘルズノヴァの直撃!爆発が発生してマスクドヴラドを弾き飛ばす!ついでに、ヴラドの真後ろにいたゲンジも弾き飛ばす!

 自分で発動させた奥義の射線上に居るんだから当然だろう。コピーと本体で挟み撃ちをする発想は見事だが、さすがは、ほんのチョットだけ頭の悪い子だ。


「ばるるっ!・・・なんて戦い方ばるっ!」


 HAバルミィは呆気に取られて成り行きを見守る。

 ヴラドは何度も地面を転がって、ダメージと魔力消耗で変身が解除され、大の字に横たわった。一方のゲンジも何度も地面を転がって、変身が解除をされ、紅葉の姿に戻ってしまう。

 冥鳥4連発+コピー召喚で、戦闘開始から3分弱でガス欠。だが勝負はあった。肩で息をしながら立ち上がる紅葉。空には、ほぼ無傷のバルミィが待機をしている。そして、ヴラドは大の字に寝たまま動けない。




-伝武小学校のグラウンド(美杉邸の近く)-


 対峙中の聖幻ファイターセラフ(麻由)と聖幻ファイターバレン(ユカリ)が、同時に南方向(鎮守小方向)に違和感を感じて視線を向けた!


「これは?」 「チィィッ!」


 セラフの索敵力では、妖力ゲンジについては詳細に感知できるが、魔力ヴラドについては漠然としか解らない。ゲンジが激しい妖力を放出しながら“何か”と戦って、ゲンジも‘何か’も急激に消耗したようだ。

 一方のバレンは、経験値が高い分、妖力以外の詳細も感知できる。魔力の状態からヴラドが敗北をした事を把握した。


「ふがいない王めっ!」


 バレンはセラフに向かって光弾を数発撃って牽制すると、全身から光を放って光球に姿を変えた!眩い光に照らされて瞬間的に目を覆うセラフ!光球は戦いを放棄して、南方向(鎮守小方向)に飛び去っていく!


「くっ!逃がさないっ!」


 セラフは、離れていく光球に対して光の矢を連射する!そのうちの一矢が光球に追い付いて命中!しかし、光球はお構い無しに、その場から去って行く!


「逃げた?・・・いや、こんな簡単に逃げるとは思えない」


 ユカリ(バレン)は、負け戦を力業でどうにかしようとするタイプではない。むしろ、劣勢と判断すれば直ぐに撤退をするタイプだが、今回は退くのが早すぎる。


「追うべき・・・よね。」


 これで終わりとは考えられない。セラフは、光球バレンを追って、南方向(鎮守小方向)に駆けていく。




-杉田邸の東側にある空き地-


「・・・あの光?」


 ネメシス(美穂)にも、近所から光球が飛び立って、南方向(鎮守小方向)に飛んでいくのが見えた。ネメシスには、紅葉や麻由のように闘気や妖気から戦況を察知する能力は無い。光球の正体は弁才天ユカリだろうけど、麻由が倒されてユカリが戦場を離れたのか、ユカリが負けて逃走をしたのか、もっと別の理由があるのかは解らない。ただ、おそらくは、「麻由が倒された」可能性は低いだろう。ユカリが襲撃をする目的は真奈の奪還だ。麻由が倒れてユカリがフリーになったのなら、南方向(鎮守小方向)ではなく、こちらに来るはず。


「麻由はまだ健在で、アイツ(ユカリ)は“勝った”以外の理由で動いたか、

 麻由が南に逃げていて、アイツ(ユカリ)が追っているか、どっちかだな?」


 ネメシスが脇見をした隙を突いて、振動ソードを構えた赤ザックが突進をしてきた!ネメシスは慌てて回避!脇腹が痛み、僅かに体勢を崩すが、レイピアを振って追撃を振り切りつつ、直ぐさま立て直して構える!


「危ない危ない・・・他人の心配をしている余裕は無かった」


 ユカリの動きや麻由の事が気になるが、今は眼前の敵と戦うので手一杯だ。ザックトルーパーの事は舐めていた。「プロテクターを付けた普通の警察官」程度と思っていたが、実際に戦ってみるとそうでも無い。脇腹を痛めて存分に戦えない状態で、楽勝できる相手ではなさそうだ。

 ネメシスの勘は「南に飛んでいった光球は、膠着状態を悪い方向に動かす」と感じている。いつまでも、こんな所で、刑事如きと戦っている暇は無さそうだが、傷が痛んで体がロクに動かないのだから、どうしようもない。

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