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カタカタと震える黒い招待状

ーー翌朝、アリアのもとに一通の封書が届く。漆黒の封筒に赤い封蝋


「……妙な気配を感じますね。アリア様、お手紙を開封されますか?」


「う、うん……な、なんか、すごいオーラ……」

 震える手で封を開ける


 中から現れたのは、黒インクで達筆すぎる筆致――だが内容は一目で不穏




 “アリア嬢へ。甘いお菓子と厄介な王子に酔いしれた後は、少し苦味のある現実にも口をつけるべきだと思わないか?


 場所は俺の屋敷、時間は日没後。


 茶葉の香りよりも、お前の反応が楽しみで仕方ない。

 断る自由など最初から与えていない。わかっているだろう?


 出席しなかった場合、こちらから迎えに行く。

 その時は、ティーカップでは済まないと思え。

 それでは、当日楽しみにしている。”


 キース・アークレイン伯爵



「ひぃぃぃいいぃ!! こ、これ絶対脅迫状だよね!? ねっ!? セドリックぅぅ!?」

 セドリックに抱きつくアリア


 眉をピクつかせながら冷静

「……ええ、文面に“楽しみにしている”の一文がなければ、逮捕案件ですね」


「ど、どどどどうしよう……行かなかったらお迎え来るって書いてあるよぉ!?」

 ガタガタ震えて膝がぷるぷる


「行かなければ……“ぽやぽや”のまま攫われる可能性が高いです。行くしかないでしょう」


「そ、そんなぁぁ……」

 だがアリアの脳裏に、去り際のキースの言葉がよぎる


  “特別な菓子も用意しといてやるから、な”


「……スイーツ、出るかな……」

 ふと手を止める。セドリック

「そこですか!?今の流れでそこですか!?」


「だ、だって……スイーツは……心の支え……」

 そんなこんなで、黒い屋敷へと“覚悟”を決めて向かうアリア。




 霧がうっすらと立ち込める午後、黒鉄の門の前に、一台の馬車が停まった。その前で――


「……き、来ちゃった……」

 手に汗握るアリア、口元に手を当てて

「ゴクリ……」

 唾を飲む音が妙に大きく響く


 目の前に広がるのは、まるで物語に出てくるような重厚な屋敷。

 石造りの壁は冷たく、門に絡まる黒薔薇の蔓が不穏さを醸し出す


 馬車からすっと降りてきたセドリック

「……お覚悟はよろしいですか、アリアお嬢様?」


「な、なななないです……! けど行かないとさらわれるって……!

 でも行ったら行ったで何かされそうっていうか……!」

 ぷるぷる震えながら、必死に足を前に出そうとするリーナ

 セドリックはため息をつきつつも、やさしく手を差し伸べる


「大丈夫です。最悪、全力で逃げましょう。私が“投げて”差し上げますから」


「ええええぇっ!?」


 そんなやりとりの最中――ゆっくりと門が開き、黒服の従者が現れる

「キース様がお待ちです。……お嬢様、どうぞ」


 ぞわりと背筋を撫でる空気に、アリアはぴしっと背筋を伸ばして

「お、お菓子……お菓子だけを……目指して……」

 スイーツ目当てで気を奮い立たせ、屋敷の中へと一歩を踏み出す。


 アリアとセドリックが屋敷の扉をくぐった瞬間――

 中は静まり返っていた。足音すら吸い込むような厚い絨毯。重厚な調度品。空気に甘くも鋭い香水の香り


 そして――その中央に、待っていた男キース伯爵。

「遅かったな。……俺を待たせるとは、いい度胸だ」


 長椅子に腰かけ、脚を組んだまま。

 黒髪に黒い軍服のような礼装。

 赤い瞳はまっすぐアリアを見据えている

 その唇が、にやりと愉悦の色を含んで歪む


「……来るとは思ってなかった。まさか、本当に“スイーツ”目当てで来たわけじゃないだろうな?」


「うっ……」

 ビクッとなって目を逸らす

「す、スイーツは……あくまで副産物で……ご招待があったので、ええと……」

 しどろもどろになるアリア


 セドリックが静かに一歩前に出る

「招待状の文面があまりに挑発的でしたので、お嬢様の警護も兼ねて同伴させていただきました。ご了承を」


 キースはあくまで余裕の笑み

「ああ、好きにしろ。……ただし」


 ゆっくりと立ち上がり、アリアのもとへと歩く。

 コツ、コツと響く靴音がやけに緊張感を増す


「彼女の視線が俺から離れたら――甘いお菓子も、優しい時間も、すぐに苦くしてやる」


 不意に距離を詰めて、アリアの頬へと指を添える


「ひゃっ……!?」

 ビクッと肩を跳ねさせて


 キースは微笑を深めながら

「歓迎するよ、アリア嬢。……俺の“遊び場”へ」

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