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用意された舞台

何度、こんな日を繰り返したであろうか、高校へ行き、何もせず、帰りたくもない場所へ帰る。やる気のかけらもないことでも割となんとかなる。ただし、それは僕の心ではない。聞いてよ、神様。お願い、私の居場所を、こんな不確かなレールから抜け出させて…

何もつまらない。楽しくなんてない。ただ飽きちゃった。


「華蓮ちゃん、これ、華蓮ちゃんへの手紙」


孤児院の管理人さんに渡された。その手紙は高そうな、黒い色紙に覆われた形をしていた。少し興味を待ち、開くと絶句するような内容が書かれていた。


要約するのであれば、貴女は選ばれました。アイドルになってください。という内容だった。


「僕が…アイドルに…?」


流石に驚いた。

小さい女の子なら一度は夢見る職業。基本的には中高生くらいにはそんな夢を忘れ新たな夢を見つける。大抵の人はなれないし、そんな風に努力してる人でもなれない場合もあるくらいだ。なのに…そんな努力も一切してこなかったわたしが?ーー理解できない。

こんなもん…

そしてよく見たら一次予選書類選考合格と書かれている。

「もしかして…勝手に?」

「華蓮ちゃん可愛いから…」


本当に呆れた人だ。計画性のかけらもない醜い人間。

行くわけない。絶対に。



管理人さんに車を出され半ば強制的に連れてかれた。恐らく私の事が邪魔なのだろうか、

「はぁ…」ため息は誰にも届かない。


「ほら、ついたよ」

「ここって、」

「そう、マジの芸能事務所」

「え、えっと…」

「気にせず行ってこい!」


ドンと物理的に背中を押されて、管理人さんは車で帰ってしまった。

「は、本当に入るの…?」


割と大きい会社。東京とかにあってもおかしくないこの場所は見渡せば家家家の住宅地。こんな所に会社だなんて意味がわからない。


「ようこそお越しいただきました。鳴滝華蓮様」

「はいっ!?」


いつから居たのか分からないその男は恐らく、ここの事務所の関連者なのだろう。


「自己紹介がまだでしたね北嶋と申します」


抑揚の聞いた言い方はかなりのベテランだろうと悟らされた。


とりあえず頷いとく。頷いとけば大丈夫だろう。


北嶋という人は僕が頷いたのを確認してから

「では、こちらへ」

そう導いた。

「他の方々もお揃いになっています」

「は、はあ」

常にニコニコしてる…怖い…苦手なタイプかも…

人間味がないって言うか…


そんなことを考えているうちに案内された場所についたらしい。


その中には3人ほど人が居た。

まず1人は金髪で整ったセミロングをした小さい子。中1くらいにも見える外見はやはり幼い。服装も可愛らしく、自分が幼いと自覚しているようなファッションだった。


そして地面に座るようにしてる人は茶色のポニーテールで見るからに話しかけたいオーラ全開だ。この人もthe陽キャという服装だった。


最後に目が止まったのは扉の真横に居た人。

銀髪のウルフで男らしくカッコいい感じだが顔は意外と可愛い。けど可愛いって言ったら絶対怒るよね…


「ねぇ!名前なんて言うの?」


話しかけたくてうずうずしていたであろう少女がそう聴いてきた。


「え、あ、その…」

「普通は聴く側が先に言うのが筋なんじゃないですか

か?」


そう言いながら私に向かってウィンクしてきた。


「そんじゃあうちの名前は乾風仁美アナゼヒトミ

よろしくね!」

「わ、わたしは鳴滝…華蓮」

「ワタシは皐月心サツキココロよろしく」

「よろしくね!心ちゃん!華蓮ちゃん!」


初っ端ちゃん付けって、本当に陽キャなんだ…


「ちゃん?!」

心はその発言を聞いた後、一気に慌てふためいたような表情になる。戸惑ったのは私だけではないらしい。

「え、嫌だった?」

「嫌じゃないけど…」

「そう?なら良かった…」


仁美はほっと効果音がなってそうなため息を吐き出して後ろを振り返る


「誰か来たみたいだね」

その言葉に両者頷く。そして扉が開く。


扉が開いた途端、3つの影があった。

1人、かなりごつい人がいる。多分関係者さんだと思い、残りの2人に視線を合わせる。


1人は赤いセミロングに高身長。モデルような体型は僕の自信を根こそぎ削ってくる。オシャレな服は本当にモデルをやってるのかと疑う。


もう1人は横結びにしたピンクの長い髪に制服のような服装で本当にここへくる格好なのか?という目線をくらってた。個人的には同感だった。


「お2人さぁん!お名前なんですか?」


またもや満面の笑みを浮かべながら仁美がそう尋ねると

「「あ??」」


2人して同時にそう言い放った。

これには流石に仁美は傷ついたようにこちらへトボトボと帰ってきた。


「華蓮ちゃぁん…」

「え、えーと…」

そんなことを言いながら抱きついてきて更に戸惑う。

「ほーら、また困ってるよ」

「あ、ごめん」

「いえ、別に…」


ごつい関係者さんがぱんぱんと手を叩く。

「それではお時間になりましたので移動を開始致します。ついてきてください」

全員が「はい!」と、元気の良い返事をしたのを確認してからその関係者は歩き出した。

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