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声なき声

作者: ぐり

 西暦2×××年。日本。


 この国は深刻な少子高齢化に苛まれていた。高齢者にかかる費用は、年金などではとても賄えなくなっていた。


 個人の家庭においても、晩婚化の影響かダラダラと続く不況の影響か子どもの数が減り一人ッ子が多数を占めるようになっていた。

 晩婚による高齢化出産により、子育てと介護が同時期に重なる事も珍しくなくなりつつあった。


 結婚もせずに介護生活に陥り、仕事を続ける事も出来ずに貯金を使い果たし、介護して見送った後職に就けずに悲観して自殺する人数も右上がりとなり政府としても無視出来ない状況になっていった。


 数年前、政府は一つの法案を通した。

「高齢者及び重篤な病気を持ち、自立した生活を送れなくなった者に対する積極的尊厳死法案」

 完治またはそれに準じた状態への回復が望めない患者に対して、又は意思表示、自発的な栄養の摂取が出来ない患者に対して延命処置を施す事は基本的にしない。意思が事前に伝えられていたならば尊厳死も認めるという法案である。


 初めは、家族の選択肢として延命処置をする方向で進めようとしたこの法案は試行段階でなんの結果も得られなかった。

「親を見殺しにするような事は出来ない」が、それは建前で、「親を見殺しにしたと言われるような事は出来ない」と言うのが本音だとネットの掲示板を見るまで分からなかった。


 自分からは出来ないけれど、法律で決まったならしょうがない。マスコミも掲示板を取り上げ始めた。

 声なき声≪ほんね≫


 膨れ上がる高齢者医療費。政府は法案を通した。


 一人っ子の介護の問題も深刻さを増していた。

行政の相談所には、「子どもは自分しか居ない。子どももまだ学校でお金が掛るので仕事を止められない。仕事を止めて介護をすれば生活出来なくなる」といった相談が押し寄せていた。


 政府は、介護保険制度の見直しを余儀なくされた。ヘルパーを多く派遣出来るようにしても相談は止まない。声なき声に押し切られるように、在宅でも生活が可能な状態でも入所施設に入所する方向で取り決めた。が又

「姥捨て山に親を捨てるようで忍びない」と声が上がる。結局要介護認定が降りた患者は障害の度合いに応じた入所施設を作りそこで生活するよう法令化した。



 声なき声は、見えない圧力を増し。年寄りを生活空間から見えなくした。


 ついには、一定年齢になった老人は老人だけが集まるコロニーで生活する事になった。


 年寄りを締め出した声は次に子どもに向った。それは、コロニーに強制的に移される前に自分の人生を楽しむ人が増えたからだと推察する評論家もいた。

 親に孫の面倒をみて貰えない為にか、次に声は「子供」へと向かった。


 やがて、子供は産まれれば「子供専用のコロニー」で育てられるようになった。お互いに会いたい時は自由に行き来出来るようになっていたが、子供が大きくなるにつれ希薄な親子関係は途切れがちになっていった。




「もう…いい」

 日本国内閣総理大臣は、苦痛に顔をゆがめている。

 少子高齢化に歯止めをかけるべく、色んな機関・研究者にシュミレーションを作らせていた。


「このシュミレーションは最悪だ」


このままで行くと、そんな世界があるかも知れない。

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