ギャルちゃんのお弁当箱はタッパーです
「ヲタクくーん! 家にフィギアとかある系?」
同じクラスの飯島玲那がうざい件。典型的なギャル風の見た目で、明らかに俺を馬鹿にしている。じゃらじゃらつけてるアクセサリー、濃いメイク、短いスカート、派手な髪色など校内でも目立つギャルだった。
「俺はヲタクじゃねーよ!」
それに俺はヲタクじゃない。敬虔なクリスチャンだ。聖書ヲタクといえばそうだが、高校卒業後は神学校に通う予定だ。その為に放課後にバイトして金も貯めている。こんな姦淫の罪を犯しているようなギャルに興味はない。絶対に男が途切れてないギャルだ。イゼベルの悪霊とか、悪霊憑きかもしれない。
そんな印象の悪い玲那だったが、ある昼休み、そのお弁当を見て驚いた。
タッパーの手作り弁当だった。中身はもやし炒め、白米、漬物。いかにも夕飯の残り物を詰めてきましたっていうお弁当だったが、妙な味わいがある。家庭的ともいえよう。そもそもこんな頭が悪そうな派手なギャルが手作り弁当???
「そうだよ。ウチ、ママが入院中だし、家事もやってるんだよねー」
案外家庭的なのか?
「弟達の面倒見ないといけないしぃー。放課後のめっちゃ忙しいから。今日も特売のたまご、買わないと!」
こんなギャルが親の代わりに家事をやっていたとは。人は見かけによらないのか???
ふと聖書の「神は心を見る」という言葉を思い出す。そうだ、外見ではなく、心がどうかが肝心ではないか。
「ヲタクくんもウチの漬物食べるー?」
相変わらず揶揄ってくる玲那だが、今は少し見直す。なぜか心臓もどくどくと響くのだが。
「ヲタクじゃねーよ!」
口ではそうは言いつつ、俺は玲那のタッパー弁当を眺めながら、笑ってしまっていた。