ありふれた物語でも結構
「この田舎者が! 故郷に帰りやがれ!」
あの上司の言葉は胸に刺さるナイフのようで。
ズタズタにされる私をみてケラケラ笑う傍観者。
君なら私の味方になってくれるのかな?
「辛酸を舐めて一人前になれるのよ」
それが本当ならば、もうとっくにそうなっているよね? 3年経って思わず毒づいた。
学歴底辺の出来損ない。
騒がしい東京から静かなる宮崎に帰還。
「ただいま」
私が見渡すクルスの海は眩しい大都会のネオンに比べて何だか寂しいや。
それでもこれほどまでに生暖かい絶景なんて私は知らない。
地元ローカルのマスコット。そのキーホルダー。
コイツがどんなブランド品よりも価値がある私の財産。
別に変に粋がっているワケじゃないよ?
華の周りに生える雑草でも華より綺麗に見える事だってある。
ボーっとしていたら何十年ぶりかの着信。
『お久しぶり。帰っちょるって聞いたっちゃけど?飲みに行かんと?」
六本木ヒルズ真反対級のド田舎で育った私。
そんな私の綴るこの物語が正しいのか、間違っているのかなんて。
どこかの誰かに言われる筋合いもないよね?
誰かを馬鹿にして笑い続けるよりも誰かと一緒が楽しくて笑い続ける人生でありたい。
やっと思えたの。
これからもずっとこの町にいるよ。
うん。この町で怒って。この町で泣いて。
この町で最低な私を映しながらも。
これからの話をしよう。
都会で泥まみれになっても諦めてない私から夢を抱けない君たちへ。
思いだせば青二才の私はスマホやテレビなんかに映る夢の世界に現を抜かした。
自分ならできる。自分ならできるかも。
味方をしてくれていた大人もまた一人また一人と消えていった。
尊敬もされないし可愛げもない私。
それでも数少ないマブダチと2人きりの家族から受けた愛。
雨の中で泣いている人の涙にだって気づける人になりたいと思うの。
今でも思っているの。
夢破れても思っているの。
いきつけの店のチャーハンが何よりの贅沢品。
そんな私だから余計にね。
目に映る全ての物語が名作。
男に裏切られても母の手1つで私を育てた彼女は唯一無二のヒーロー。
カッコつけたことを言いながら今夜も質素な生活で床に就く。
ライトを浴びることがなくたってライトを浴びている人に負けないぐらい輝くの。
そんな自分が密かに好き。
別れてやった元カレに立ててやった中指。
でも、そこにそっとつけ足した人差し指。
だから、これからの話をしようよ。
都会で泥まみれになったことですらイイ思い出に変えられた私から夢を抱きたい君たちへ。
さて、どうしよう?
迷惑をかけた地元に恩返し。
近所のコンビニでバイトを始めたけどドンくさい私はドンくさい私のまま。
「この町はヤダ! 何もなくてヤダ! 何もかもつまらない!」とか言ってきたね。
でも間違っていました。すいませんでした。
この町にはまぎれもなくこの私がいたよ。
地元でも私を馬鹿にする人はいるけど何にも気にならないの。
届かない片思いより届く片思いのほうが幸せ。
下を向いて未来を絶望するより上を向いて未来にワクワクするのーー
あれから何年たったかな?
この町もちょっと賑やかになった気がする。
2人きりの家族が1人きりの家族になったけど。
だからこそ私はこの町でこの物語を書き続けようと思う。
「いらっしゃいませー!」
この私の物語はありふれた物語でも結構――
∀・)僕らの大スター綺羅めくるちゃんに田舎者の小娘を演じて頂きました。
∀・)これはそんな文学です。
∀・)ご一読ありがとうございました♪♪♪
・∀・)いでっち39歳、これからも小説を書き続けます☆☆☆彡