西へ東へ
テントで、入浴後、服を洗い、ケインも洗ってやる。異空間に入れると次に取り出すとすっかりキレイになって出て来るけれど、一応気分的に洗いたくなるのだ。一日に沢山働いて汚れたように思えて仕方ない。
(ねーケイン、ギルドの情報を調べたでしょ?)
『うん、調べたね』
(それでドラゴンとか載っている物はあった?)
『無いよ?そんなの~ナイナイ』
ケインは少し紫色を薄くして光った。馬鹿にしたのか?何となくそう感じた。
(え~、異世界なのに~じゃあ、魔物ってなんだろうね)
『それはエイムが言ってたよね?同じ事しか書いてないよ?』
(そうだけど、そんな風になった理由は?)
『分かってないみたい。百二十年前に最初の魔物を確認したとあるけど、確認したのがそれが最初ってだけだね。初期の魔物は今の魔物より人間を襲うことが多かったようだよ。』
(え~何でだ?)
『理由はわからないけど。誠魂燈石が中に有る魔物は、人を積極的に襲うことは分かっている。つまり、初期の魔物は今より数は少ないけど誠魂燈石を持っていたってことじゃないかな?』
(気性が荒いと石が出来るのかなぁ?)
『さぁ?』
ケインを布で磨き浴槽の湯を入れ換えておく。
(ピカピカだよ、ケイン!)
『うん!ありがと』
夕食を食べながら雑談した。その中で気になっていたことを訊いてみた。
「マルはどうして子供たちを助けたいの?チクルよりマルの方が年下なのに」
「お、僕も助けて貰ったので、その恩を返すのもいいけど、それを誰かに散撒いてもいいなと思って」
「確かにいいね」
ア·ルーヤに降りたって感じたのはマルと同じ思いだったように、今気付いた。
事前に聞いていた話だともっと殺伐としている国だと想像していたのに、皆いい人だ。きっと誰にも助けて貰えなかったなんて人は少ないのだろう。僕も手が届く範囲なら助けてあげよう。
それから五日、駆除して走る駆除して走る、時々岩を収納してを繰り返した。後一日で折り返しまで行かなくては。距離感が合っているのか不安だな。
次の日二回駆除してコーコーイ川まで着いた。川って運河?大きな川だな。汽車がなかった頃は川で荷運びしていたらしい。川が近いと流石に、まだ緑が残っている。つまり魔蟲も多く居る。素早く、トッドとロッシが何かを切っている。
ロッシの短剣二本は、回転しているかのように残像を残し、トッドの長剣はリボンのように残像を見せている。見てる場合じゃないな。
(ケイン、魔物を集めて!)
『ハイハイ、回収!』
もう、夕方は暗くなってきている。ケインの放つ紫色の光りは僕にしか見えてないなんて嘘みたいに目立つ。
魔物を纏ったケインをルーとリードが我先にブスブス剣で刺す。スゴイ狂気な場面だ。目を逸らしてしまうよ。
川なのでスライムが居ると思っていたが、一匹も居なかった。
(まぁ、一応やってみる?)
『ハイハイ。誠魂燈石ね?』
(うん。集めて)
『ハイハイ、回収!』
二十個も集まった。ロルディアより魔物も多いし当たり前か?
そこから南下し、次はラインの下を駆除しながらモンス基地まで帰る。三人とは明日の朝、一旦別行動になる。そこで、マルがリンゴを分けてくれと言う。何するかわからないけど僕もちょっとやってみたいことがあったので、チクルから受け取った種を埋めた。目が出るように魔法を掛ける。それに更に大きくなる様に魔法を掛けると、マルよりちょっと大きいくらいまで伸びた。その木に花をつけるよう魔力を込めた。花は結構咲くなぁ。受粉作業をテスがやってくれた。何か魔物の尻尾を使っている。え~!と思ったけど、僕には背が届かない。それにまた魔力をたっぷり込め魔法を掛ける、赤い甘いリンゴを欲する。
沢山実ったリンゴをいくつかもぎ取りマルさんは何かするらしい。ルーが僕を抱き上げてくれたので僕も自分の手で実を取った。ケインを使わず、皆で手伝いリンゴ狩りをした。
マルはフライパンでアップルパイを作ってくれた。オーブンとかで焼く物だと思っていたけど、色々応用が利くらしい。
「ホントはバターとか玉子とか要るらしいですが、やってみました。」
「美味しいよ!」
そういえば、お母さんもクッキーやパイを時々作ってくれたなぁ。元気かな?手紙届いたかな?
次の朝、三人と別れ、折り返す。
この辺りは最初のスタンへの道筋と違うのでラインの南と言っても初見だ。川からいくらか行った所に村がある。こちらも人が溢れているようでテントが外に広がっている。南と言ってもまだラインの近くにも拘わらず、こんなに人が多いなんて。リンゴの種を二つ植え、二本の木が大きくなって花が咲くまで魔法を掛けた。風をぐるぐると吹かせてると、花弁が舞った。それから実がなるように魔法を掛けると二本の木は沢山の実をつけた。
「よし、行こう!」
これから、もっと北で暮らして貰わないとだめだからね。リンゴを味わって貰って、北にもリンゴの木があったとか噂を流してみるのもいいかもしれない。ちょっとした、保険に。冬になるし、移住して貰えないかもしれないからね。
アンダーラインより南は魔蟲と小型の魔獣しか居ないのだが数は多かった。大型に狙われ憎く小型が増える傾向にあるのだろう。途中で僕が作った草原も通ったが、既に魔蟲が集まって繁殖している様子だ。魔蟲の卵と幼虫も駆除しておいた。一週間で折り返しからモンスまで帰ってきた。
途中、チクルを訪ね次のリンゴも渡し、発酵したものは受け取った。
僕の麦も四袋分になったと村人が渡してくれた。そして「あれまた、やってくれ」とせがまれたので麦畑を作った。前回見逃した人も集まって手品のように披露する。脱穀してくれる人達に任せ、取り分半々でお願いした。
モンス基地でエイムに報告、序でにスタンで麦が買えるようになると宣伝して欲しいと伝えた。
エイムには、討伐証明があるか訊かれ、あるにはあるが要らないとこたえた。丸ごと収納されているので有るには有るが、数が多すぎてめんどくさかった。リードとマルが捌いた物だけ取ってあったので渡した。貰った報酬、それをリードに丸ごと渡す。それでも、金貨十五枚分位の金額だったそうだ。いっぱい貰ったねというよりは、いっぱい食べたねと感じた。男ばっかりで走り回っていたら、それくらい食べるんだよ。
また明日から北で殲滅活動して西へ向かう。




