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マルの行先

───マルバ(マル)視点───


「...それで、逃げたの」

チクルの言葉にマルの記憶が呼び起こされた。


「公都から逃げてきたんだな?」

昔、出会った時のガオンの台詞。

「よく、やった。頑張ったな。」

逃げて褒められるのか?

「行く宛てはあるのか?」

マルは首を振る。

「よし、いいぞ、俺が何処にでも連れて行ってやるぞ。何処にでも行けるようにしてやる」

ガオンは俺の肩を抱いて、歩き出す。

「まず飯だ!おい、ソルジ、飯の用意してくれ!」

「何だよ、自分でやれよ」

そう言いつつソルジは、親指を立て後ろをクイクイと示した。

そちらへ行くのだろう。付いて行くとそこにもう一人居て、既に何か作っていた。

「誰だ、お前?食うか?」

「ガオンが拾って来たんだよ」

「まぁ、やっぱりな、そうだと思ったよ、オレはバートだ。食え」

「食ったら行くぞ!」

「ガオン何処に行ってた?」

いつの間にか消えていたガオンが再び現れた。

「これだよ、これ」

ガオンの手に一本の竹槍があった。

それから、食べ物を貰い、戦い方を教わり。ガオンたちと過ごす時間は楽しく、充実していた。公都で過ごしていた頃の事など思い出したりしなかった。

俺も、孤児で二三才の頃から一人だった。

公都は、領土が有っても住めない土地の貴族達とハンター、娼婦それと孤児の街となっている。娼婦も数が多ければ値崩れする。食べ物を買う程のお金にならない。公都では、ペットも家畜も禁止となっている。馬車の馬さえ公王しか持っていない。魔物になるからだ。そこで、値のつかない娼婦達は、家畜の代わりに絞った乳を売る。その為にわざと妊娠して、乳が出なくなると子を捨てる。孤児は増える一方だった。

公都に居た時は、そんな情景ばかり目にした。子供の教育に適した場所なはずなかった。汚れた場所で汚れた人間の中に居ると自分が汚く思えた。俺は、逃げた。全て要らないと思って。

「本当に?そう思ってないよね?」

クリス様。

この人は、俺には図り知れない程純粋に見えた。穢れていない、穢してはいけない。

俺の声を聞かせるだけて穢れてしまいそうに儚く思えた。そんな純真な存在は、「子供たちを助けてあげよう」なんて言い出さなかった。予想外であったが、この方は、もっと崇高な域に存在していた。

スタンは、今や麦畑である。しかも、これは誰にでも使える魔法だと無差別に教える。この子は、このお方はこの国の全員を救おうとしている。

そして、それが出来る人なんだ。

きっと叶う。

それなら、俺が今、チクルの家族だけを助けてもいいのではないかと思えた。俺が、上っ面なだけでも結局誰も最後にすくわれるなら。行こう公都に。




───リード視点───



近頃、クリス様の益々の尊みに目を開けるのもやっとの思いだ。〈実際は寝顔をずっと見ている為に寝不足なだけだ〉

昨日から、可愛らしい帽子を被っている。それを押さえながら見上げてくる様は、なんて言葉で以て表せばいいのか。毎度、脳をバキューンと死なされている。最高だ。ダナさんいい仕事するよな。もっと、色々発注してみよう。

リードの注文に応えダナさんはこの先、ヒット商品を沢山生み出すことになる。






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