相棒と幼少期 5
廊下を階段の方へ歩いていくと、階下から人の気配がする。
(大人は流石にまだ起きているなぁ)
落とせばとんでもない音を立てそうなケインを一端異空間に入れる。廊下から階段に至るまでカーペットが敷かれておりまだ体重も軽いクリスに足音など元よりないが気分的に忍び足になって階段を降りる。たったこれだけでも大冒険の気分を味わえる。(ドキドキやばー)
階段を降りきれば小さなホールこの先はもう玄関だが、この大きな扉を音も無く開閉するのは今のクリスには到底無理だ。階段の裏手にあるダイニングのドアに耳を当て中を窺えないかと集中した。(まぁ、もし中に誰かいたらノドが渇いたとでも誤魔化そう)
そう決めドアを開けたが無人であった。(よしっ!行こう)
ダイニングの大きな窓からなら外に出られる。ダイニングの外は裏庭でそのまま真っ直ぐ進んで木の影に入る。誰か窓の外を覗いていたりしたら直ぐ様見つかる。よって、炎なんかの練習は出来ない。ケインを取り出し
(水の魔法で攻撃魔法の出し方とか書いてた?)
『いや、この世界の魔法は基本、生活魔法だね。攻撃に使っていた人がいたらしいけど真似を出来た人は皆無だったようだね。ほぼお伽噺だとされてるよ。』
(えーどうすんのよ!魔法で戦えないならレベリングは?剣術とか習うしかないのか?何年先の事になるんだぁ?自信ないし)
クリスはその場にしゃがみ込んで頭を抱える。『何言ってんの、クリスには僕があるのに?』
(ほ?何か策が?)
『僕とクリスは魔力で繋がってるから、魔物を集めて引き寄せておけば身動きなんて出来ないよ』
ケインは自慢気に光った...ように見えた。
(...うん、今さらだけどやっぱり魔物が居るんだ‼️怖いかな?僕死なない?身体強化の魔法とかあったらいいなぁ)
『そういったのも...なさそう。自分流でやってみたら?』
この世界の魔法は具体的に想像出来れば、願うと叶うと認識している。クリスは身体強化を具体的に考えると可笑しなくらいムキムキの自分を想像してしまった。
(これで魔法発動してしまったら大変な事になりそうだ)
『盾を作るとかではダメなの?』
(お~それやってみよう!流石相棒)
『相棒だけど、僕は君だからね』
クリスは前方を見据え念じる。
(圧縮された水の盾)
水は現れたが瞬時に氷となりその場に落ちる。ごとりと地面との接触と重さを耳に届けるので、焦ってしまう。
(うわぁ、何か氷になったしー音立てちゃうし)
木の影から屋敷を見やる。(大丈夫かなぁ?)
先程の氷の塊を触りつつ思考する。
(こいつの固さはどの程度なんだろう?アニメみたいに浮かせておく事は出来そうな気がしないし。化学に詳しくないと上手くいかない気がするなぁ)
『何でもやってみて出来ることを増やせば何時か何かに役に立つだろうって!ちょっと魔力の半分くらいの量の水出してみてよ』
(ケインはいいこと言うよね。いいヤツだな。半分の魔力かぁ~どれくらいか分かんない)
『そうだね~大きめの石に魔力を流してた一個分位?』
ケインはクリスが褒めてももうつっこまず流す。
(オケ)
クリスは日に大きな石二つ位は小さくしていた。
小さな物であれば6~8個は出来た。
石に魔力を流していた感覚を思い出し水を欲する。すると、まるで湖の水全てをくみ取ってそこに置かれているような水量が、屋敷を津波が襲っているかの如くの圧迫感と伴にそこに現れた。
(おーい大いよ!けせ、消せない)
前回の様に屋敷の危機に直ぐ消そうとするが消えない。
『これを消すには魔力が足りない。僕が水を集めるからクリスは水を異空間に入れるんだ』
ケインは勝手にコロコロ前進して行く。
(成る程、任せて)
ケインは水を集め始めると水球の中心となっていった。
(ケインと繋がってる)
クリスはケインとの繋がりを確信してそこから異空間を広げ直接水球を穴へ落とした。
(今日はもう寝よう)
気疲れに眠気を連れてこられた為、部屋に帰った。