スタンまでの道中
朝、起きると雨が降った後だった。雨に濡れた緑の草花は山はまだ生きていると誇らしげである。マルとテス、ロッシはその光景を眺めていた。
「おはよう」
「嬢ちゃんおはようってぇな、おれは朝から寝ぼけたかと思ったぜぇ」
「おはよお嬢。キレイだよなぁ、俺の若い時はまだそこいら中こんなだったんだ」
ロッシは、この光景が気に入ったようだ。雑草だけどね。
「おはようございます。こんなバールアカイトを見ることがあるとは」
それぞれ自国を思っては何か胸の内にあるのかもしれない。
「クリス、おはよ!ごはん出来てる」
リードは一人で準備していたらしい。
「ありがと。皆、行こ」
チクルはまだ寝ているが先に食べる。②のテントで一人で寝ているが女性のテントに誰も入ってはいけない。食べていると、チクルの悲鳴がした。
魔物か?!
「あ~、そうだな」「やっぱり」
「あれは、しょうがねぇな」
ハイ、僕のせいですね。ごめんね。トッドはまた笑いを堪えて肩を小刻みにしている。
「みなさん、あれ、大変です何か変わりました」
慌ててテントに入って来るチクルの両肩を掴んだのはルーだ。突然のルーのドアップにチクルは黙った。
「いいか、チクル、変わることはいい事だ」
イケメンの謎のゴリ押しにチクルは頷くしかなかった。今は、静かにごはんを食べている。
チクルがまだ食べている間に僕らは片付けしよう。
今日も、出発だ。よかった、進行方向は雑草を繁殖させた方とは違った。そちらは、テントがあったので避けた。
皆、歩みは遅いのでそれぞれ話をしている。チクルが僕に話し掛けてきた。
「クリスは凄いね。こんなに小さいのにハンターのお仕事をお手伝いして、やっぱりあたしも強くなった方がいいのかな?」
「それは、チクル次第だと思うけど。チクルはどんな生活をしてきた?これからはどうして生きていきたい?」
「これから ... これからはまだわからないけど。あたし、小さい頃は空き家に隠れ住んでた。子供ばっかりで。七人で寒いけど暖まる方法を考えて、魔法で順番にお湯を出してそこに皆で、足突っ込んで。お腹は空いてたけど、楽しかった。夏の間はね、お肉の無料配布がいつもあるから食べることには困らなかった。冬には、一番年上のお姉ちゃんが居てね、その子が何処かで食べ物を手に入れてきてくれて、それを分けあったの。」
「優しいお姉ちゃんだったんだね。」
いつの間にか、皆、黙ってチクルの話を聞いている。
「うん、優しかった。大好きだったよ、でも居なくなった。南に行くって」
「もしかして、追いかけてきたの?」
チクルは首を振る。
「そうじゃないよ。お姉ちゃんが居なくなったら、次に大きいお兄さんが居たんだけど彼も何処かに消えちゃって、あたしが、最年長になっちゃった。...それで、逃げたの」
それは更に、年の下の子ばかりになったのか。今、いくつなんだ?
「チクルは年いくつ?」
「あたし?十四。クリスは?」
「僕、四歳」
「え?おっきいね!」
アハハハ、まあね。
「お嬢、四つ!??なわけないだろ」
話を聞いていたロッシが異議を申し立てた。
「じゃあ六歳で」
「じゃあってなんだよ」
皆、笑い、チクルの話を聞こうか迷うが、本人が続けた。
「そうか、それを聞いてちょっと安心するなんて薄情だよね?」
チクルは僕を見て苦笑いを浮かべている。
「後は十一と十歳二人と八つだからクリスよりずっと上。だから、大丈夫だよね?」
「本当に?そう思ってないよね?」
チクルは何も言わない。後悔しているけど、戻るのも怖いといったところか?公都はどんな状態にあるんだろう?
登山で汗を掻いた体を秋の涼しい風が冷やす。公都は寒いときく。内心、子供たちは気掛かりだ。しかし誰も言葉にしなかった。
それから十日歩き続けた。ロルディアの平地ばかりとは違い、山道を上下しての徒歩は大変だった。
「あの見えてるのがスタンだ」
ロッシが遠くを指して故郷を紹介する。あまりまだ見えていないように思うが、ロッシにはもう懐かしい景色なんだろう。走り出そうとした、ロッシにアンダーラインの方から馬形の魔物が跳び出して来た。ロッシは咄嗟に後ろに避け、それと入れ変わりにルーが大剣を走る馬の横腹に突き立てた。大剣の根元まで刺さっており、魔物はそのまま倒れた。
(ケイン、この魔物は何?初めて見たよ)
『これ、アイゼバインだって。脚が鉄のように硬いから腹を狙うこと』
(お~ルー知ってたのか?)
他にも、居ないかと皆、警戒中だ。
「よし、注意して進もう!」
僕とチクルを円で守りながら進む。アイゼバインを収納してスタンに入った。




