実験
「マル許さん!俺もちゃんと見たことないのに」
お風呂から上がるとマルさんの首をリードが絞めている。
「何してんの?ごはん出来た?」
マルさんが持ってきたフライパンと鍋は凄い!火を使わず調理出来る。小国の商品らしい。
「もうすぐです。食器を出して欲しかったのです。覗く気はありませんでした。ごめんなさい」
マルさんは言い訳のように、弁明しているが
「別に疑ってないし、怒ってないよ。リードが何で怒ってんのか、そっちの方が訊きたいね」
僕がマルさんを庇うと、リードはシュンと肩を窄める。
「クリス、今度一緒にお風呂に入ろう」
「全然、答えになってないよ。そして絶対入らない!」
シュンとしても騙されないぞ。僕は食器をテーブルに置いた。そこへテント③班がやって来た。
「終わった。こっちはどうだ?」
ルーが、テントの中に立っても頭に屋根は当たらない。よかったね~ルー。テントは快適だ。
「もうすぐだって。でも、椅子が足りないんだ。」
屋敷から持って来た椅子は六脚。
「おれ達のことなんか気にすんなよ、嬢ちゃん」
「おっぼくも気にしません」
テスさんとマルさんはそう言うが、何か嫌だよね。
「お嬢、ちょっといいか?」
ロッシさんが外へ行こうと誘っている。何だろう?
「お嬢、いっぱい雑草あるだろ?あれ見せてくれ」
「いいですけど、?」
ロッシさんは何かしようとしている。僕は雑草の山を取り出した。
「ええと、これだな、これとこれ」(?)
「お嬢、見てろよ」
ロッシさんは草を編み始めた。しかもめっちゃ早い!直ぐ籠だとわかった。形になるまであっと言う間だ。それから別のを編む。こちらはくるくると大きくなって行く。座布団だね!ロッシさんはそれを籠の上に置いた。
「座れるの?」
「ああ、平気だ」
ロッシさんは僕をヒョイと抱き籠椅子に座らせた。
(おー思ったよりいい!)
「凄い!ロッシさん凄いよ」
「なに言ってる、お嬢より凄いヤツなんて居ねーだろ?それに俺のことなんかロッシでいい。ロッシと呼んでくれ」
「ああ、嬢ちゃんおれのこともテスだ。それにしてもロッシ、上手いもんだな」
「クリス、椅子あったのか?」
ルーも出て来た。ロッシが作ったとは思わないだろうね、なんせ早技だった。
「ロッシが作ったんだ、今!」
ルーもしきりに感心している。
夕飯は、ロッシの特技の話で盛り上がった。
皆が順番にお風呂に入っている間、やりたいことがあった。
「皆、僕の実験手伝って」
この国の食事情を改善する一歩を考えていた。
「昼間に僕の魔法見たよね?」
「草増やしたヤツな。ありゃスゲー」
テスの言葉にロッシとマルは頻りに首を上下させる。
「ハイ、お嬢さんは聖女です」
違う。
僕は手に麦を数粒出し、土に植えた。そして魔法を使う。穂を付けるところで止まるように。
「お~麦だ」「こんなに早く」「麦まで」
僕はもう数粒取り出した。また植える。
「こっからが実験だ!いくよ!」
今植えた分の一部を芽が出るとこらでストップ。
「じゃあロッシさん、この芽が出る程度を望んで下さい。芽が出るだけの魔法です」
「うん?わかった。やってみよう」
ロッシは見たばかりの様子だ、はっきりと思い浮かべることが出来た。
ニョキ、ニョキニョキ、ニョキ
「うぉ~やった!俺にも出来た」
ロッシは自分に驚愕している。そして魔力切れになってない、まだ数を増やしていいと思う。
「じゃあ次!いくよ!」
僕の方の芽が十五センチ程まで伸びた。
「これ位かな?じゃあ、マルやって」
「ハイ、うーん」
マルは、ロッシの出した芽に向かって魔法を使おうとしているが、ダメだった。
「よし、ストップ。テスさんと交代!」
「おぅ、やってやる。ロッシに出来たんだ」
「いい?今僕がやった分だけを意識して願うん
だ」
テスは麦の成長を願い欲する。すると麦は二十センチ程伸びた。(よし、実験成功だ!)
「よっしゃ~どうよ?おれにも出来た」
テスはふんぞり返っているが、本当にこれが実験したかったことだ。
「うん!テスのお陰で実験成功だよ!お手柄だ!次、いくよ!」
僕の苗に更なる成長を願う。穂になる部分が少し見え始めた位まで。
「じゃあ、ルーやってみて!」
「おぉ、実はやってみたかったんだよなぁ」
ルーは、僕がプラムの木を種から育つまで魔法をかけたのを一度見ている。それだけにやってみたかったのかもしれない。女将さんがやってみると言うのを聞いたときから、この計画はあった。
ルーは願う今みたものを、ただ成長を願い欲した。僕のよりテスの方が伸びていたのでルーの魔法はすぐ終わったがしっかり発動した。
「出来た。案外簡単か?」
「うー、何で俺だけ」
項垂れたマルは素が出ている。いつもそれでいいのに。
「よし、じゃあ、モッカイマルだよ!最初に見たこの穂が出てきた麦を目標に魔法を使って!」
「うん!今度こそ!」
マルはなんだか使命感を抱いているように見える。気負い過ぎずやって欲しい。
マルは魔法を発動させる。穂が出てきた。うん!やっぱり!
「出来た、出来たよ!」
マルははしゃいでいる、子供らしい一面だ。
「よし、よし、実験は成功だー!!」
「「「「おー」」」」
盛り上がっていると、リードがお風呂から上がって来た。
「兄さん、次だろ?何やってたの?」
喜び合っている皆の中に入って行けない、バルドー兄弟だった。




