出航
朝、船は出航した。浜辺でいつも感じていた潮風とは違う、空気の敷き布団でおもいっきりムチうたれるような、厚みと勢いで流れていく。
昨夜は眠れず、ずっと甲板に居た。その横にずっと泣いてるリード、もう酔ってしまったルーは僕の様子に言い出せなかったんだと吐いていた。そんなルーにトッドが治癒魔法をかけていた。そうすれば、酔わないのか、便利だ。そんな皆のお陰で何とか僕も朝方ベッドに入った。船のベッドは硬い。それでもケインに魔力を充填するだけで僕はいつだって熟睡だ。
『大丈夫だよ、クリスには僕がいるんだ。忘れてないよね?それとも僕より、女の子の方がいいのか?そうか~チートの僕より~?』
(それと、これとは全く違うだろ?それとケインは僕なんだろ?)
『そうだ、僕はクリスで君の力だ!だから、思う存分僕を使えばいんだ!』
(ありがと、絶対暫くは頼りっぱなしになるからよろしくね!)
『おー、でも充填は忘れないでね。』
(うん、いつもやってるだろ?)
『ハイハイ、おやすみ』僕は魔力を込めながら
(おやすみケイン)横になり眠る準備だ。完全な魔力切れになる前にケインを収納しておく。寝ている間にケインが落ちてしまったら大事だからね。船に穴を空けてしまうかもしれない。
目覚めたら夕方だった。お腹が空いた。三人皆、同じ部屋にいたのでご飯を食べようと外に出た。この部屋は狭くて二段ベッドが二つ壁沿いにあり、人一人通るだけの間が空いているだけなのだ。ホントに狭い。
船の中の階段も狭い。通路は一応すれ違うことの出来る幅があった。
甲板に出た。夕陽を見るだけで寂しさが込み上げる。いや、今はご飯を食べなきゃ。
勝手に甲板にテーブルを出して椅子を出す。そして料理を並べ、食べようとした。
「「「おぉ~」」」
三人甲板で仕事をしていた乗組員が声を上げた。
「スゲー、どっから出した?」
「スゲー、うまそうだ」
「スゲー、お嬢がやったのか?」
それぞれの感想を声にしながら寄ってくる。
「なんだお前ら見張りはどうした!」
「お前こそチェックの時間だろ?」
「俺はもう殆ど終わってんだ。」
なんだか喧嘩腰だ。どうしよう?
「あの~食べますか?」
宥めようと誘ってみた。
「いいのか?お嬢」
「これくれ!お嬢」
「お嬢が作ったのか?」
何か元々世話しない人達なのかも。スッゴイ食べてるし。僕等も食べる。
「俺はテスだ、お嬢よろしくな!これ上手いぞ」
「僕が作ったんじゃないよ?」
「じゃあ誰がつくんだ?俺はソルジ。」
「僕のお母さんだよ」
「う?母親はどこ行った?おっちんだか?」
「オイ、流石にデリカシー無いぞ。」
「バートにも無いだろう?」
リードは皆を知っているので既に気を許している様子だ。
「うるせーリード」
「大丈夫。僕のお母さんは生きてるよ」
「なんだ、そうか、よかったな。こっちの国じゃあ親が魔物に殺られたなんて話しはざらなんだ」
ソルジの声は凪いでいる。物騒なんだな。
「そうなのか?」
ルーは護衛としてもそこは引っ掛るところなんだろう。トッドも頷いている。
「あぁ、数が多すぎるんだ。年々増えてってるって言われてる」
魔物の増殖の理由は何だろう?
「何故か理由は有るんですか?」
トッドも同じ疑問を持ったらしい。
「はっきりしたことは誰にも分かってないが、皇国が生み出してるって俺らの内じゃあ思ってる」
デージヴァ皇国、そう言えばこの国の勉強はまだしたことなかった。地図で大間かに示されて聞いただけだ。
船に乗っている間に聞いた方がいいな、色々。
「そう言やお嬢、酒はないのか?」
バートだ。
「一切有りません!」
「ちぇー!」
魔物の話しより、不安になった。




