相棒と幼少期 3
翌朝、お母さんに
「これ読んで」と本棚に然も以前よりそこにあったかのように昨日入手してきた本を差し出す。
「あら?何の本かしらね~」
お母さんは何も疑っていない様子。
「こんな本があったからしね?"魔力との正しいつきあい方"?これは、いい本ねぇ」
(?啓発本のようなものかな?)
単語も新しく覚えていきたいし、お母さんに指を文に走らせるように読んでもらう。床に直接座りその膝に乗って本を僕の膝に乗せている。
「お母さんは魔法は使えるの?」
「え~もちろん」
意外な答えが返ってきた。涼しくなってきた朝の弱々しい光が母の赤茶色の髪を膨張させて見せている。元より少々ふっくらしている姿をより大きく感じさせた。
「凄い!お母さん凄いね!見たいな魔法見せて!」
「ふふふ。いいわよ」
人差し指を立て「ほら」小さな火を灯した。指と相まって蝋燭みたいだ。
(は?呪文とかの詠唱とか杖とかいらないの?)
「そんなにすぐ使えるの?魔法って」
お母さんが凄い人なだけだろうか?
「何言ってるの?誰だって出来るのよ、こんなのっ。ふふふ。」
(えっ???誰でも?よくゆう適性とかないのかな?)
「他には?何が出来るの?」
お母さんは軽く握った手を顎の下に当てつつ考えるポーズで思い出し羅列する。
「そうね、水を出したり傷を治したり風を起こしたりかしら。後は何かを温めたり冷やしたりなら誰にも出来るわ~」
と言ってのけるおっとりとした母に驚愕する。
(治癒誰でも出来るの?神官とか聖女とかの特権のようなもの無いの?この世界のこと益々解らない)クリスは頭をむしるように掻いた。
「お母さん、僕にも出来る?」
「もちろんよ~欲しいと思えば得られるわよ」
欲しいものが得られるのが魔法?何か魔法のイメージとちょっと違うかも?兎にも角にもすぐ行動にするのがクリスである。両手を酌に水を欲してみる。直ぐ様一杯となり下にある本の危機である。「わわ~!」水に消えるように願った。
「クリス?凄いわ水が消えるなんて!」
?ん?ん、そっち?
初めての魔法が発動したこととかは凄さないのか?魔法で出した水は消えないものなのか?疑問が増えていく。
「水って消えないの?」
お母さんは珍しく表情を歪ませ
「クリスには魔法のお勉強より普通のお勉強が先のようね」
「普通?」
この世界の普通って何よ?
この後から勉強が始まった。
勉強とは即ち簡単に申せば理科だった。化学という程でもないし生物という程でもない簡単なもので、あの水をただ消したのがおかしいということを言われた。つまり、湯気や霧のようにならないといけなかっようだ。勉強内容は正直既に知っていることばかりで特に意味はないように思えたが、一般的にはこれに沿って魔法を使っていることはわかった。治癒魔法も一度怪我でもすれば治癒していく様子は観察出来るものなので誰にでも出来ることらしい。それは二日で全て終わる内容で本当に簡単だった。そしてその夜、ケインを取り出し
(よっケイン)
『単語が大方解るようになったね 本の内容説明出来るよ』
(よぉし 教えて!)
暗い部屋でケインの光と向き合っていると目がおかしくなってくる。カーテンを開けて窓の側に腰を下ろした。