出発まで残り四日。
ルーは手紙を託す為、朝から商隊が戻って来るのを外で待っている。
僕等は、食堂でお絵描きをしているちえりと居る。
「クリスみたいに上手に描くの!」
そして座って居るようにと言われた。僕は、モデルさんなのである。ちえりはなかなか納得出来ないようで、紙は無くなってしまった。
「うーん、こんなのクリスじゃない。」
「何がぁ?上手に描けてるよ?ごめんね。クリスちゃん。お昼食べましょう」
女将さんは別のテーブルに皆のお昼を用意してくれた。ルーの分も用意してくれたが、今は居ない。
「わたしも絵が上手になりたいなぁ」
食べながらそうポツリとこぼす。
「大丈夫、続ければ上手くなるよ」
「そっかぁ!」
そんな一言だけで元気になるちえりだった。
「お昼終わったら、急いでお洗濯してしまわないと」
「はあい」
午後は遊べないのか。
「ねぇ、お洗濯、僕もお手伝いしてもいい?」
「えー?」
ちえりは目を見開きキラキラさせている。
「お母さん、いい?」
「でも、お客さんよ?」
女将さんの言葉に二人でシュンとする。
「いいじゃねぇか。」
キッチンから声がした。ダニーさんだ。ちえりのお父さんは客の皆に気楽にダニーと呼ばれていた。そんな身内の会話に僕等は入れないし、遠目から見ているだけだった。そんなダニーさんからの助け舟にちょっと緊張してしまう。
「まぁ、そうゆうなら、一緒にやるかい?」
女将の色好い返事にちえりは両手を上げて喜んでいる。
盥の中のシーツをちえりと転ばないよう背中合わせに両腕を絡ませて踏んでいる。
「「いち·に·いち·に·いち·に·いち·に」」
声を合わせるとどんどん楽しくなっていった。
洗濯は風呂場で残り湯を使って洗っている。
「ハイ次こっちね~」
女将さんは次に踏む盥を用意して手招いている。
僕等が次のを踏んでいる間に先ほどの盥のシーツを濯いでいる。いつもこんな風に連係しているのだろう。濯いだ後は、盥の石鹸水で風呂場を擦り掃除をしている。大変だなぁ、宿の経営って。
「クリス、面白いね!」
ちえりはいつもと同じ事をしているだろうに、楽しいと言っている。
「あら、ふふいつもはまだ~?ってそればっかりなのにね。」
「今日は面白いの!ねー?」
ちえりは頭を僕の肩の乗せて顔を向け、同意を求めている。(うっ!)
二人係で絞ったシーツは一つの盥に全部入れた。
「お母さーん」ちえりが呼ぶと女将さんはその上にもう一つ盥を乗せてひっくり返した。
そしてその上に女将さんが乗る。するとまだじゅわ~と水が流れた。
「よし!お母さん干してくるね~」
「はぁい、次は浴槽内のブラッシングだよ!」
ちえりは僕に棒ブラシを渡しながらそう言う。
ブラッシングをしながら、大浴場だと聞いていたけど一度に五·六人しか入れないと思った。ちえりは棒の無いブラシでシャカシャカやっている。
「これ、前、棒が折れちゃったんだよ。」
話をしながら楽しく掃除をした。
「あら、二人ともご苦労様!お湯も入れてくれたの?」
水を流そうと思ったが水道が無いことに気付いた。このフィント事態に水は来ていないらしい。いつも魔法で流すと言う。だから僕が水を出して流した。流した後は魔力が足りないのでダニーさんを呼んでお風呂は溜めるとの事だったので僕が魔法でお湯も溜めた。
「ふふ、二人共、びしょびしょに濡れて。せっかくだからお風呂、入っちゃいましょ。」
「はぁい!」「え?」
これはマズイやつでは?
......おぉ、どうしてこうなるんだ?
今、僕の頭をちえりが洗いちえりの頭を女将さんが洗っている。
「クリスの髪気持ちいいね~」
どうしてワンピースという服はあんなに頼りないだ?一撃で全てを奪われた。僕に逃げ場はなかった。
「 ザバー」 頭に湯が流される。
いや、言い訳だ、もう全部見てしまった。
ごめんなさい、あ~誰か僕を逮捕してくれ。
兎に角、僕の男の子を必死で隠した。
その日の夜はずっとベッドでのたうち回っていた。
手紙を渡したという報告もそっちのけで。
出発まで後四日。




