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ルカトル侯爵

「カー!お前はまたここにいるのか 王宮でやることが有るだろう」

男は背の低いずんぐりとした身体に、大きな頭が首を潰しているかのように短いノドを鳴らす。

「何も無いわ!お父様、私何もさせては貰えないのよ。」

娘は父に似ていない美しい顔を歪ませる。

妻に似た娘は自信家なところはあるがとても美しく育った。どうしてもセイユース殿下と結婚したいと願う娘を嫁入りさせる為にかなり金を遣った。娘がシトイットの娘より先に孕んだと言うのだからその甲斐もあったと言うものだ。しかし身重の娘に会いたいと面会を希望しても許可が降りなくなった。父の私がなぜ会えないのか。調べさせるとシトイットの娘も妊娠しているとわかったが、陛下の企みは直ぐにわからなかった。

あの陛下は女神信教に狂っている。王妃が亡くなった後からは酷い。ルアンダを推すためシトイットの娘が妊娠しないことをつついたら、王太子妃を伴ってデージヴァに赴いた。神に懐妊を願って来たらしい。そのお蔭で子を授かったと思い込んでいる。神にもセイユース殿下にも愛されてるのはシトイットの娘だと寵愛しているのだ。私の孫を差し置いてシトイットの孫を王にする腹積もりだと察した時には遅かった。マリアーナ妃の出産の知らせが間もなく広められたのだ。私は陛下に抗議したが、広域な農地の魔獣駆除に国軍を出してやっているだろうと半ば脅された。この国は平和だが職に対し人が余っており軍はそんな人々の救済としての職業で人気がある。戦争など無くとも軍は総出で魔獣と戦ってくれる。その為なのか、バールアカイトやデージヴァのように魔獣で溢れてなどいない。それでも農地は魔蟲に襲われると少なくない被害が出る。畑を捨てた者もいる。軍が来なければ、うちの農地も終わる。

バールアカイトとの交渉もさせては貰えない。個人交渉に行ったが、提示の半分の値で売ってくれると口約束をしたと言う。バカな。私から領を奪うつもりなのではないか?そんな考えが過る。

魔獣被害の少なかった先々代の頃と比べると収穫は半減している。国内流通ですら、値上がりしている状況で国王相手に頭がどうかしていると言いそうだった。

娘の子に、国を継がせるべきだと思った。バカ達が国を潰すと。娘の子になら私の意見も通るだろう。その為に何でもした。

それをこの娘は分かっていない。娘には教えていない。知らずこのように帰ってくる。それが城での自分の立場を悪くすると思っていないのか。

これも大概頭がよくないな。

願わくはダイアス王子は優秀であってくれ。





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