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マリアーナとダイアス

──マリアーナ視点──


「セイラ、ほら今度はこっちだよ」

歩きがしっかりとしてきた娘の手をダイアス王子がゆっくりと引く。城の王太子妃専用の庭で"息子"とお茶をしている。ダイアスは妹が可愛いのか、よく私しの所へ訪ねて来るようになった。

アッシュブロンドの髪はセイユース譲りだがふわふわとした巻き髪があの女を思わせる。

「ァ~ア」

セイラが私しを目指し足元に歩みを進めている。ドレスでは抱き上げるのは苦労する。ドレスが皺になってしまうと、ナニーのラライヤが抱き上げると嫌々と脚をバタバタさせる。

「セイラ、お母様に抱いて欲しいんだね。」

私しも手を広げセイラを向かえる。可愛い子。

セイラの柔らかな髪を撫で付ける。

ダイアスは向に腰掛けオレンジ果汁を一口飲んだ。

「マリアーナ様、こちらを」

ダイアスの侍女サイタナが手紙の束を乗せたトレーを差し出す。

その一番上に有る手紙にルアンダとある。度々このようにダイアスに届くが、本人の手に届いたことはない。返事も来た試しがないのだから、私しが止めているのは気付いているはずでしょうに。

内容は、好きなものは何だとか勉強は始まったのか、欲しい物はないかとか。なかなか会えない孫に祖父母が質問するような内容であった為、苦情は出してはいない。それでも、ダイアスとの関係を少しでも良好にしようとこのような手紙を寄越しているのだろう。私しを害した後の事をルアンダは見越している。しかし、今は私しを狙うには間が悪い。セイラが、生まれてから陛下とセイユースがひっきりなしに訪問して来る為、近衛が数多く私しとセイラの周りに常任とされている。この国には姫が三代前の妃から産まれておらず、久しぶりの姫とあって猫可愛がりである。かく言う私しもクリストファーのこともあり乳母を儲けず自ら傍に居るが。

ルアンダの手紙の下の束を取る。ご機嫌伺いと

ダイアスの五歳の茶会に自分の子を招いて貰おうと遠回しな催促がかかれた物ばかりだ。始めは、私しの元へ届いていたが、そんな予定は無いと返事を出したところダイアス宛に届くようになった。十中八九、ルカトル侯爵が嘘の噂を流している。都合のいい家の娘と婚約させるつもりだろうか?そんな目論見が簡単に通る筈もない。自分の娘ですら無理に捩じ込んだ婚姻だったのだ。立て続けにルカトル侯爵家の血筋からなど婚約は反対が多いだろう。目的が不明である内はこの茶会は噂だけの存在だ。

「母上、セイラが寝たので私も読書に戻ります」

腕の中で胸を上下させセイラは眠っていた。

「ええ。ダイアス、お勉強頑張りなさい。」

「はい、ありがとうございます」

ダイアスは美しい礼を見せ部屋を出て行った。

あの子に罪はない。しっかり教育を受けさせてやる以外に彼に償う術を持たなかった。

「ごめんなさいね...」

ダイアスの礼に対し零れたのは謝罪だった。


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