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雨の日は休息

──トッド視点──


なぜ、ここにいる?リード。

私が、近衛となり士爵位を賜ってから、父は仕事をしなくなった。父の行動の意味など全く分からなかった。当時、弟は十ニを過ぎた歳だったはずだ。学校に通わせることもなく、何をしている風でもなかった。親子ニ人ふらふらしているようだったが、借金を作ったりしないので放っておいた。弟に、何かやりたいことや興味の有るもの、そういった話を聞いたことがなかった。一緒に探してやっていたのかもしれない。廃村に移り、母と行動するようになって少し変わったと思っていた。

「ちょっと待って兄さん、俺も行く、四人にしてくれ」

リードが私に何か強請ることなどなかった。どんな些細ことでもだ。聞き分けがいい何て事ではなく聞くまでもない、といった具合に。歳が十も離れているからかもしれないが、そんなリードが我儘を言っている。

「何だ、リードの兄なのか?」

「あぁ、そうなんだが」

私は、少しの混乱と嬉しさを誤魔化して頭を掻いた。兄と呼ばれる程、弟に何かしてやったことなどなかった。

「何でそんな話しになってるんだ。父は知っているのか?」

弟の願いを叶えてやれるだろうか?

「あぁ、連絡係になれって。俺は学校にも行ってないし顔を知られていないから国境からでもこっちに来られる」


(叶えてやれる)

口角が上がるのをため息一つで隠す。


「そうゆうことか。いざとゆう時が有ったらお前を見捨てるかもしれないんだぞ」

「もちろんだ!」

良かった。期待通りの答えで。

「わかった。すまないが四人頼みたい」

勝手に許可をしてもクリス様は何も咎めなかった。



その日の夕食、皆リードを歓迎してくれた。私も素直に嬉しかった。

しかし、隣に座るリードは

「あ~美幼女同士の友情尊い」

......

許可をしたのは間違いだったかもしれない。





──クリス視点──


翌日は朝から雨が降っていた。中庭に咲いたプラムの花が白く積もっている。雨に打たれる枝は秒針の如く世話しない。

「雨強いね」

「そうだね。風がまだ強くないから怖くないよ」

僕の心を深読みしてちえりは元気づけようとしているのか?優しいけど...違うよ?諭すような声音はいつものお姉さんモードのちえりだ。

「お人形あそびしよっ」

「僕、お人形持ってないよ?」

流石に持っていない。ぬいぐるみも持っていない。

「そうだね。クリスより可愛いお人形なんて無いもんね」

何か、思っていた反応と大分違うようだが、褒められるのは嬉しい。

はっ!!この気持ちはマズイのでは?僕もしかして女装に慣れ始めているのでは?

「ちえり!お絵描きとかどうかな?」

違う提案をしてみる。

「お絵描き?紙が無いよ?伝票と台帳のしかないの」

そこに洗い物を終えた女将さんが手を布で拭いながら寄って来て

「古い台帳の紙なら裏が空いてるのが有るかもしれないよ。取ってくるから少し待ってて」

カウンターを探り戻って来た。

台帳の残り半分や裏が空いてるもので、大きさがバラバラだ。

「ありがと、お母さん。クリスは何描くの?」

ちえりは、テーブルに両腕の肘から先を付け乗り出してくる。僕が描きたいものなんて一択だった。

「ちえりを描くよ」

自分で言って恥ずかしくて堪らなかった。熱い顔が冷えるまで、ペンが進む気がしない。

「じゃあわたしもクリスを描く!」

勢いよく描き始めるのを見て僕も落ち着いた。ペンと言っても炭を使った物で、色づきは悪い。その分、修正もし易く上手に描けそうだ。

炭で描くちえりは黒髪が映えて自分でも上出来だった。グリーンの瞳を表現出来ないのは残念だけど、薄い色を利用して陰影をいい感じに出せた。

「クリス、うまいな!」

護衛は勿論後ろに居る。ルーは覗き込んでべた褒めだ。明らかに四歳の絵ではなかった。

「え~見せて見せて!」

ちえりに見られるのは照れる。また顔が熱くなる。

「ほあ~クリス上手。お母さーんお母さーん」

「なぁに?ちえりはもう少し静かにね」

「これわたしだって!クリスが描いたの!」

テンションの上がったちえりはちっとも静かになってなかった。

「あら、こんなに上手に描けるなんて。これ、食堂に飾っていい?」

そんなに大した代物でもないと思ったが

「ハイ。」

嬉しそうなちえりを見たらそう答えてしまった。


小さな紙に自分用としてもう一枚ちえりを描いた。




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