森のリードさん
船小屋の漁師達と別れてから、僕等は一旦寝た。まだ暗くて朝食まで時間が有りそうだったから。
目覚めてから食堂に入るともう遅い時間だったようだ。
「おはようございます。よくお眠りで?お客さんたちハンターなんでしょ?お疲れだね。」
女将さんは二人をハンターだと思っているのか、朝食の皿を並べながら労っている。
「チェリルが中庭に魔法みたいに木が生えたっていうのよ。見るとホントに木があるからびっくりしたけど、キレイでいいわね~」
女将さんは能天気なようだ。勝手に木を植えてすいません。
「ホントよ!魔法みたいに伸びる種だったの!」
ちえりも水を運んで来た。
ホントに魔法だよ。魔法のある世界でも信じられない物は魔法みたいと言うのか。どうでもいいことを考えて、次に魔法だと言ってもいいのかと考える。魔法が使える人ばかりなのだから、言ってもいい気がする。
「ねークリスも見たよね」
何と答えたものか迷ったが
「あれは魔法だよ。僕が魔法をかけたんだ」
ちえりは首を傾けキョトンとしている。欲しかった答えとちょっと違ったみたいだ。
「だからもしかしたら枯れちゃうかもしれない」
「えーやだなぁ」
初めて魔法であんなことをしたのでわからない。枯れて倒れたりしたら危ないので白状しておいた。
「どうしたら枯れない?」
「う~ん、お水あげたり?かな」
「お~わたしの仕事だ!」
ちえりはコップに入れた水を持って中庭に行ってしまった。
「魔法だったのかい?凄いねーあたしも今度やってみようかしらねー」
...
...
...
流石、ちえりのお母さんだ。
僕等は部屋に戻り今後について相談する。
「どうしましょうか?居ないことには進みませんね」
「いやぁどうするって探さないのか?」
「そうだよね?探した方がいいのかな?」
彼等は森の中を彷徨って遭難している可能性もある。けど、森に詳しくない僕等が行って助けられるんだろうか?それに他にも気になることを言っていたんだ。
「ねー向こうの国では魔物が多いの?」
「えぇ、そのようです。近衛に居たときから聞く話しです」
「ねー二人のレベルはいくつ?」
「レベルですか?計ったことなどないです」
「オレも無いぞ?何でだ?」
レベルを測定することが一般的ではないとういことは、レベルが強さに繋がっているという概念すらないということか?でも、僕がお母さんを納得させる時はレベルに理解があると思ってたけど。
「バールアカイトにはもっと魔物が居るって言ってだろ?二人はどのくらい戦えるの?」
ここまで来るのにケインで集めて予め駆除して進むことが多かった。戦闘と言える戦いはしていない。
「わからないと言う他ないです。私の剣術は対人戦闘として訓練を受けて来ました」
「オレもだな。」
二人は急に自信を失ったようだ。
「レベルを上げよう!森に行って!魔物と戦って訓練にもなるしレベルも上がる。運がよければ船の乗組員って人達にも会えるよ」
僕は勇気付けるよう明るく言った。
「ハイ、やりましょう!」
「オレもケインより強くなる」
ルーはなぜかケインに対抗意識を持っていた。
まぁ、ケインさんはチート様ですからねぇ。
早速行こう!
森に入ると相変わらず南の森の湿度がじっとり纏わりつき、背の高い雑草が纏わりつく。
ケインを取り出し
『ハイハイ、雑草回収!』
ありがとうケイン、歩き易くなった。
雑草は消えたが木々は密集しており、歩き辛い。木を避け避け歩くと方向がわからなくなる。
もう木を間引くことにした。目指すはスズンの山だ。あのくらいが良かった。ケインを引っ付けて根を魔法で掘り収納しながら森を整備して歩く。
「この辺で一回やろうか!」
トッドとルーは頷き構える。
「じゃあ、一キロ圏内に居る魔獣を回収!」
僕は二人に分かるよう、声に出して言う。
『ハイハイ、回収!』
二頭のバンジアッフェだ。もしかしたら、群れが近いかもしれない。念のため、先にケインを収納する。
この場では、バンジアッフェを二人に任せる。
二人同時に出た。トッドが右のバンジアッフェを細い剣で掬うように脚の表面を切り上げ、上げた剣を左のバンジアッフェの頭上から切り下ろす。脚を切られたバンジアッフェの隙をつきルーが叩き切った。一瞬だった。心配など要らないかもしれない。僕は僕の護衛を頼もしく思った。
そんな事を二日目続けた。何処かで会える可能性を期待してルートは毎回変えて歩く。この辺の森はすっかり様変わりしていた。
二人が六頭のバンジアッフェを相手している真っ最中。
「クリス様~」
誰かに呼ばれた?
声の方を目で探ると何人か走って来る。
あっ!居た!森で会った乗組員の人達だ。
「リード?何してる?」
バンジアッフェ達を倒しトッドもこちらに来て言った。
リードさん?何で居るの?
リードさんは、別れた時と同じくめっちゃ泣いていた。




