相棒 と幼少期1
『この本に私の記載はありませんね』
(お?え?しゃべった?)
『しゃべっている訳ではないですね、声帯や音を鳴らす機関など在りませんし』
(つまり、心に直接語りかけてくるやつや~!遂にファンタジーが!もしかして賢者の石なのでは?)
『確かに直接語りかけていますが、賢者の石ではないと謂えますね。』
(なんで?)
『私はあなたの魔力の塊であって、それを除けば石しか残りません。私は、あなたなのです。故に繋がっており直接語りかけることも出来ました。他の人とは恐らく不可能でしょう。』
(そっかぁ、でもやっぱりあれは魔力だったんだね!)
『いえ、私はあなたクリスがそう思っているようなのでそのような表現にしました。』
(む?解んないってこと?)
『はい、私はあなたですので、本人の知らないことは知りません。後、今この図鑑は読み込みましたのでこの本にあることなら知っていますし、魔石など載っていたので魔力が有力だと判断しますが。』
(おー今の一瞬で?インストールみたいだね!
やっぱり賢者の石なんじゃない?もっと調べてみよ?後、魔法があるなら使いたいんだけど~)
『りょ。』
(おい、急にフランクか?まあいんだけど)
静かな屋敷の静かな部屋で、静かなに石と会話している。
部屋の本棚にある本と玉が光の糸で結ばれ一瞬強く光る。
『終わったよ。やっぱり魔法はあるみたい、だけど使い方とかは無かっなぁ』
(何をしたの?そして口調は何で変わった?)
『中の情報を集めたんだ。クリスが口調によって賢者の石だと感じてしまってるみたいだったから変えた。』
(むぅ、確かに賢者感は薄れたね。書庫みたいな部屋があるからそっちへ行ってみない?)
『うん、行こう!』
背伸びをしてやっと手の届くようになった、扉を開けて部屋を出た。
暗い廊下をお母さんとかくれんぼした時の記憶を思い出しながら進む。(たぶん、ここだね)
『うん、ここだよ!』(何で知ってんの?)
『クリスの記憶を辿ったからだよ』(あ~そうだった)
扉を開けると埃っぽい空気がインクの匂いとともに漂っていて、口と鼻を袖の布で咄嗟におさえる。この部屋を使う人が居ないのか掃除がされていない。
『じゃっ早速』僕だと言い張るだけあってすぐ行動に移してしまう。光の糸が伸びていく。先程見た光景だが、部屋の本より数が段違いで織物のようだ。(すげー)と感心していると本が十冊ほど飛んできた!(うぁああ!)
『これだよ、たぶん魔法について書いてあるのは』(え?インストールして教えてくれないの?)
『クリスの解らない単語があるので説明出来ないんだ』(どゆこと?)
『クリスの知らないことは僕も知らないんだからね』
(あ~このさ世界のまだ出会ってない単語かぁ)
でもこんなに運べないし。ばらばらに積み上がった本の群れを見つめて途方にくれる。
(一冊ずつにしよう!この本意外を戻してくれない?)
『無理だよ』(なんで?)
『僕には集めることしか出来ないからね』
(そうなの?話せるのに?)
『この力は集めた石の重量に魔力を掛け合わせた引力だよ。それに僕はクリスだからこれはほぼ独り言なんだよ』
(え~ヤダなに?その辱しめ!)
『クリスの外付けの脳か記憶だと思ってもいいよ』
(え~ヤダなに?そのキモいやつぅ)
『...』
(そうだ、お前に名前をつけよう、そうしたら独り言でなくなるよ!)
『強引な解釈ではあるけど賛成!』
流石は、僕だ意見が合うな!
窓からの月明かりが、部屋の埃の存在をキラキラと証明している。
(賢者の石で引力の石だから...)
『賢者の石ではないったら』
(よしっ!ケインで!君はケインだ!)
『いいね!気に入ったよクリス』
(だろ?)
意見は必ず合致するのだ。クリスはそれに気付きかけていたのだが、名前を付けることですっかり忘れた。
(で、ケインこの散らかした本の山をどうする?)
『さぁ?』
結局一冊だけ選んで部屋を出た。残りは端に三冊ずつ積んでおいた。