長いプロローグ 幼児期4
そんなことを繰りかす日々で一年以上が過ぎた。僕も結構大きくなった。最近では、絵本を読んで貰いながら文字を覚え、読むことは出来る。知らない単語は読めても意味はわからないけどね。書くのは難しい。大きく汚ない文字に仕上がるのをみんなが笑顔で褒めてくれるのがムズムズする。この家族が好きだ。でも、家族の内容は恐らくサム、ルー、トッドは使用人か護衛だと感じている。どうゆう家なんだろうね?お母さんのコニーはというと解らない単語を訊ねると、知らないことが度々あり、そのつど三人の誰かに訊ねる事になる。女の人はあまり教育を受けられないのかなぁ?そうゆうの嫌だなぁ。
僕に敬称を様と付けるがお母さんのコニーにはさんを付けるのみだし。女性はどんな扱いなんだか、その辺は多いに不満だ。
「これは"渓谷"ですね。この国は平野が多いですから見る機会もなかなか作れませんが山々の見える場所なら...」
お母さんの知らなかった単語を説明にサムがやってきた。そうだ、この国って何て国なんだろ?サムの言葉に疑問を増やしながら耳を傾ける。
「ねぇサム、この国は何ていう国」
サムとお母さんが静かに目を合わせ、二人同時にこちらに視線を向ける。?なんだ今の間?
「ロルディア王国でございます」
その声には何か含まれているようで耳に残った。
「クリス、今夜は満月なんですよ。外に出て観てみない?」
お母さんはいつもより更に優しげにそう訊いた。
「うん!見たい!」
月を見上げたことなかったなぁ、まぁまだちびっこの僕は夜は寝てるしね!綺麗なのみたい!
三人で手を繋ぎ庭へ出ると、門のとこでトッドを見つけた。
「今夜は月が綺麗ですよ。」
月明かりに現れたトッドに令嬢でも口説いているかのような声掛けがされる。本当に綺麗な月が出ているがそれどころではない!
地面にも星が散っているのだ。(綺麗...でもこれはなんだろ?)
「お母さん?光ってるのは何?」
「月よ。今日は満月なの。おっきいまん丸ね。月の光の色はクリスの髪の色ね、ふふふ。」
ちっがーう、
「そうじゃなくて、それだよ」
「あぁダリアねもう萎れちゃったのよ」
ちっがーう、って
「ちがうよ、その光ってるやつ!」
「??あ~夕時に水やりしたから反射して光ってるのね」
え?もしかして、お母さん見えてないの?サムの
顔を伺うとどうもこちらににも見えていないようで、ご機嫌に月に見入っている。おかしい。
「冷えるといけないのでそろそろ中へ」
そうサムが促し、トッドに手を振った。
「おやすみなさい、クリス」
ベッドに入れられ頭をお母さんの手が撫で付ける。気持ちいい
「おやすみなさい」
「ガチャン」
ドアの閉まる音を確認して、ベッドを降りる。
先程、庭の散らされた星達を見た後、家中を見ると同じ星の塵が外よりもっとある。今まで気付けなかったそれらは、今この部屋の中に特に沢山見受けられる。その一つを摘まんで掌に乗せた。
(これって!石だ!ちっさくなった粒だ!)
部屋の隅のかどや床の板の間に挟まって掃除では取れなかったんだね。粒だけど重さは石の時と変わらないから箒じゃ掃けないんだ!なんでこれまでは光ってなかったのかな?
次々に拾っては手に乗せ拾っては乗せ塩一摘み分程になったか?まだ、部屋の其処ら中に光がある。掌を覗き込み考える、これに再びいつものやったらどうなるんだろ?好奇心が即行動に移させた。掌の石の星達は一つに成っていく。直径で五ミリに満たない一つの玉となり、中心は赤紫の光がチロチロ灯っている。
(うぁー固まったぞ、もっと集めたいな)
そう、願ったとたん彼方此方にあった粒が飛んで集まってくる。
(おぅ、自動で集まってきた!流れ星みたいだ!キレイ)
自動で集まってきた粒は、自動で玉に吸い込まれていき徐々に大きくなっていった。占い師が使う水晶玉位になり終わった。
(重さを感じない?)
手に触れている感触だけで重さを与えない玉は内側に光を閉じ込めほんのり明かりを放つ。そしていつものもう一度やってみると、ゴルフボール程まで縮んだ。(これってなんだろう?)
本棚に寄り鉱石について載っている本を探す。
(うーん、届かないや、あれを取りたいんたけど)
そう、思いながら見上げた本棚から二歩後退ると、目当ての図鑑が飛んできた!
「うおっ!」(なんで飛んでくんの?)
そして、手の中の石にくっついた!
(うん?本の重みもないぞ!)
床に置くと重さが帰ってくる。
本を開きパラパラ捲る(みつかるかな?)、すると石が光ると同時に本が凄い勢いで光った。
『この本に私の記載はありませんね』
輝かに石が僕に語りかけてきた!