長いプロローグ 幼児期3
「クリス あーん 」かぷっ
お母さんの差し出すスプーンを咥える。
モグモグしつつ昨日のことを思い出している
あの小さくなった石のことを。あれはこっそりポケットに入れていたはずだったが、寝てる間に着替えさせられており何処へやらだ。
只あれは自分で引き起こしている現象だと気づいた。凄い石が存在していたわけではなく、僕の力のようだ。魔法かな?でも、石を小さくする魔法ってなんだ?意味ある?
「はい、あーん いい子ね~クリスぅ」モグモグ
わかんないけど、地球ではないのは決まりだ!
そして、僕を必ずファンタジーが待ってる!なんて期待が増してる。早くおっきくなりたい!
しっかり歩けるようになってきて、ご飯もつかんで自分で食べることが出来るし、前歯が上下四本ずつ生えてきた。言葉も単語を発音が少し伝わるように出せるようになった。そして恐らく一歳半を過ぎてる僕です。まだまだ赤ん坊丸出しですが、石ぴっかり作業は日に三個まで可能となっている。意味は相変わらずわからないけど、続けているのはあのぐっすり睡眠が癖になっているのだ。なので最近は部屋に石を持ち込み寝る前にぴがっってやる。そしたら、直ぐ朝なんだ。
朝ごはんをしっかり食べたらお母さんが、
「今朝は、河原の方までお散歩してみる?」
お~、庭よりもっと外だぁ!「あいっ」必死に意思を伝える。「ふふふ。」
お母さんは嬉しそうで僕もちょっと得意。
「トッド様、これからお休みでしたのに申し訳有りません。」
「少しの時間ですよね?問題ありませんよ。クリス様を元気に大きく育てる為に運動は必要でしょう?私もすぐに休むわけでもありませんでしたしね。」
トッドは少し早口で話すが、とても聞き取り易いいい声だ。室内で会うと真っ黒な髪だと思っていたが陽の光りに照らされると緑がかって見える。細めの長剣を腰に携えているが、長剣だと思わせない程に脚がスラッと長い。ルーが顔では一番イケメンだがトッドもなかなかモテそうだ。もしかして、乙女ゲームの世界に居るのかな?と考えてしまう。それから、やっと言葉がしっかり解ってきたので気付いたのだが、大人の男、三人からは様付きで呼ばれているんだ。
何でだろ?
僕大人より偉いの?
河原に着くと、さすがに河原だけあり石がいっぱい転がっている。庭の石もちょっと見つけるのか大変になっていたので、助かります。僕が河原を進もうとしたところ、
「クリス様、お待ちを」
トッドは前に出て、剣を抜き横一閃。
背の高い草たちが、その場へ倒れ落ちる。
(ふぁ~はえ~かっけ~)
男の子なら憧れる後ろ姿だ。
「クリス様、コニーさんどうぞ。」
「ありがとうございます。クリスほらこれ、アザミよトゲトゲ痛いのよ」
お母さんの指差す落ちている草を見る。大きな棘が沢山張り出して威嚇しているようだ。でも、もうお前はトッドに討ち取られたからね。
「あーと トド」「いえいえ、足下にお気をつけ下さい」
よし、と僕は意気込んで石をポッケに詰め込んだ。