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旅立ち

まだ、夜明けと云えど暗い朝、まだ眠い。見たことも無いような豪華なお屋敷に忍び込んでいる。ルーにつれられやってきた。これが離れだと?貴族っておかしな生き物だ。カギが開けてあった。中に入ると燭台に火が灯され、微かに見渡せる、玄関ホールに無造作に並べられた大きな麻袋が五つ確認出来た。

躊躇せず異空間に全て入れた。

「ほぅ、それが例の魔法か?」

不意に、声がする。

「侯爵様、お久しぶりでございます。」

ルーは声の主に覚えがあるようで即座に挨拶をした。察するにシトイット侯爵のようだ。

クリスも頭を下げ挨拶をする。

「初めまして、協力に感謝致します。僕、クリスです。おじいちゃんはずっと待ってくれていたのですか?」

「うん、まあ孫の顔の一つも見ようとな。セイユース殿下に瓜二つだな。」

「それは王太子ですか?」

クリスは、多分そうだろうと当たりを付け訊ねる。

「そうだ。なんも知らんのだな、君の父なんだがな」

シトイット侯爵の顔が蝋燭の揺らめく炎に照らされ怖い。

「まぁ、そうゆうのはこれから追い追いです」

ルーは恐怖より居たたまれなさの方が勝っているようだ。頭をポリポリやっている。

「これも、持って行きなさい。」

シトイット侯爵はクリスの頭程ある革袋を三つ目の前に置いた。床の大理石をゴツと言わせ、袋の中身がガシャっと鳴る。

(これ絶対お金だ)

クリスは祖父の顔を見上げる。祖父はそれに答える。

「釣りだ。あんなもんよく用意出来たもんだ。釣り銭は全て銀貨にしてある」

銀貨なら一般的なのか?助かります。

「ありがとう、貰って行きます」

袋も異空間に収納した。

「では、侯爵様我々はこれで」

「あぁ明るくなれば目立つからな、行きなさい。二人共元気でやりなさい。ルー、クリストファーを頼む」とシトイット侯爵は頭を下げた。

自分のせいで娘や孫に迷惑をかけていると思っているのかもしれない。

「もちろんです。命にかえても」

ルーの迷いのない宣言に僕は気圧されそうだ。

「行ってきます、おじいちゃんまたね」

出来るだけ明るく別れを告げた。







馬をシトイット侯爵がくれたのでそれに乗り屋敷に急いで戻る。ちょうどトッドも帰る途中で、馬で走って来る為警戒された。屋敷に戻ると、サムも既に戻っていた。サムは森を抜け西の街まで行ってギルドに登録に行った。森はまだ魔獣が少ないらしく安全だったそうだ。

最後に皆揃ってご飯を食べた。僕の大好きなブロッコリーがどろどろに溶けたシチューとサーホルボアのサイコロステーキを味わった。

食事の後、クジおじさんが用意した旅装束に着替えた。女の子用だ。仕方ない、バレないためだ仕方ない。

肩に着かない位まで伸びた髪を結んで、頭の左にちょこんと白いリボンを付けられた。似合い過ぎていて、こわい。その姿を見てリードさんは鼻血を出している、こわい。......



「じゃあやるよ。」

偽装を施した、家に火を放つのは僕だ。

皆、見守っている中、前に出て炎を思い浮かべ欲する。現れた炎は、小さな炎だったが遺体の背に着火すると少し燃え広がった。そこから離れ、玄関を開けて振り返る。そして再び、欲する。大きく燃えろと。すると瞬く間に炎は大きくなりホールを飲み込んだ。外に出て屋敷に向いて皆で揃って黙とうする。


燃え広がった屋敷を背に皆との別れの時。

お母さんはもう大泣きだ。それに次いでリードさんも凄く泣いている。お兄さんのトッドと別れるのが辛いのだろう。しかし、トッドは僕の護衛は一生続けると言うので、お願いするしかない。トッドを見ると苦笑いされた。

「クリス、元気でね。毎日、ちゃんとご飯食べて。あなたの無事を祈ってるから」

「うん、お母さんも、落ち着いたら連絡するからね。」「えぇ、待ってるずっと」

涙の止まらないお母さんの掠れた声を抱っこされながら聞いた。

その後ろからサムが抱きしめてくる。川の字で眠った夜を思い出す。


馬はお母さんにあげた。僕とトッドとルーは南へ、お母さんとサムは西へ、バルドー家は一旦シトイット侯爵に完了を知らせに、それぞれ旅立った。




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