逃亡への準備 3
*テレサ視点
「預かるわ、クリス様の所へ」
王都を離れ此処へ潜伏して四年。
(終わるのか、この生活が)
ギルドに登録し行商の護衛や魔物の駆除を仕事をしていたあたしがクジと一緒になって子供が出来てからは王都に定住した。都会だなんて言われているが退屈な生活だった。息子の成長していく姿は嬉しいものであったが、ある程度大きくなれば何てことはないモノだったしね~。
それが此処へ来てからは毎日、森に入って狩りをした、リードにも狩りを教えた。楽しかった。どこかに行くならまた、田舎がいい。
「う~んこのオーバーローデントはどうやったら
こんな仕止め方になったのやら」
どうやらクリス様はとても楽しいお方のようだ。
(あたしもクリス様についていきたいね)
このウサギの様な魔物は動きは速いが単調で慣れれば簡単に仕止められる。その分感に鋭く罠には掛かりにくい。こんな、傷の少ない状態でどうやって倒したのか。ナイフを刺す。「ブシャッ」
水が吹き出た。(うわっ)水?水を飲みに川にいた時にでも捕らえた物だったのかね?
*リード視点
何時もは親父が食糧を届けている、兄の職場。
近衛騎士であった自慢の兄が今ではこんな廃村に隠れている子供のおもりだ。正直気にくわなかった。
「おはようございます、皆さん」
親父の挨拶にあわせて頭を下げた。その先の見える透き通る金髪がサラサラと陽射しを反射していた。白い肌はきめ細かく作り物めいてはいてもわずかに上気した頬は幼い子供らしく柔らかそうな。美しい子供だった。ズボンを履いているが前情報がなければ、男児か女児かもわからないだろう。
「実は、狩りに森に入ったのですがね、あちこちで魔物と思しき動物たちが息絶えいて、どうも森で何かあったようでしてね」
親父の言葉に脅えているようだ。紫がかった深い紺に僅かに柿色が混じった瞳を揺らし不安げだ。
(そうか可愛そうにこのバカ親父が脅したんだ)
俺がきっと解決して上げよう。母さんが魔獣や獣の狩り方も教えてくれて、一人でも森に入れるんだ。あの美しい子供を笑顔にしたい。
それから時折屋敷を覗きに行った。いや、覗きではない、ただ冬だし狩りも畑仕事もなく暇だっただけだ。
兄さんと剣の稽古をしている。兄さんの動きは相変わらず洗練されていて、手足の長さがあって上品に見える。今は、初心者の為にゆっくり教えているのだろう、それが更に優雅に見える。その隣で木剣を振っている金髪は絶対クリス様だ。後ろ姿も可愛い!剣に真剣に取り組んでいるようだ。あれはきっとこの世の四歳の中で一番上手だ。そんな事を思っていると兄さんが振り返った。ヤバイ!目が合った!走って帰った。
今日は珍しく兄さんが家に助けを求めてやってきた。侵入者に襲撃を受けたらしい。クリス様は無事なのか?そんな視線を全員から受けたが兄さんは笑って頷く。よかった。
皆で屋敷に向かいクリス様と話しをする間、屋敷の周りの見張りを頼まれた。よし、俺が護ってやる!
話しが終わって兄さんが戻ってきた。
「ここはもう捨てる。それで手伝って欲しい」
そう言われ、兄さんに付いて部屋に通された。クリス様のお部屋だ。緊張する。
「この袋を使って。その誠魂燈石を詰めてね。あんまり一度に売却すると目立つんだって、凄く珍しい物なんだねこれ」
クリス様が俺に話している。可愛い。慌てて返事をする。
「ハイー、俺も狩りをしていますが誠魂燈石を見付けたことは二回だけなので」
何とか言葉を返した。
「だから、おじいちゃんの所に纏めて買い取って貰うのがいいそうでお手紙書くからそれと持って行って下さい。」
「はい。」「ありがとう」
クリス様に仕事を頼まれた。お~やるぞ!
俺がお使いに闘志を燃やしている間、クリス様は一生懸命手紙を書いていた。可愛い!
シトイット侯爵邸の執務室に通されていた。侯爵様は机に置かれた革袋を覗くと次いでクリス様の手紙を読む。
あの"可愛い"の祖父とは思えない顔をしている。大きな顔は迫力があった。そこに着いてる大きな目も迫力があった。手紙を読み顔を緩めている。怖い...
「よし!まず、わかったと伝えてくれ、明後日の朝離れに全て用意をすますからと。ルーに訊けば離れの場所も分かるだろう。日が登る頃に」
「ハイ伝えておきます。」




