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逃亡への準備 2

*サム視点


「お母さん、大丈夫かな?」

クリス様は心配して声をかけてくれる。

「はい、ありがとうございます。妻、コートニーに配慮下さり。」

クリス様は、こちらを見上げ首を傾げる。そんな姿は普通にまだ小さな子供だ。先ほど見せた不思議な魔法や、何時ものバク転など比にならない脚力が嘘のように。

「あれは少々クリス様に執着しております。本来クリス様の傍に仕える身分ではないことも失念している様子も恥ずかしく思っておりましたので。」

「そう?普通のお母さんだったよ?」

クリス様は自身の立場を知らされていなかったからだろう、あれを普通だと受け入れてくれている。

私、アイサム·トゥルは子爵家の生まれであったが三男で、学友であったシトイット侯爵家嫡男のギルダンの家に縁故採用してもらった。就職して一人立ちした時から、もう貴族ではないと言っていい。そしてコニーは元々平民の出であった。マリアーナ様はそんな妻ともご結婚なさるまで、仲良くして下さった。コニーはきっとそれで勘違いしてしまったのだ。しかし、私も息子を護ってやれなかった負い目から強くいいだせなかった。いや、私自身もどこかクリス様を息子の代わりに拠り所としていた。私も、クリス様と距離を置くべきなのだ。

「はい、ありがとうございます。」

クリス様は、暫し沈黙の後。

「サムいい、違うんだ。お母さんが足手纏いになるのは確かだけど、僕だってお母さんが大好きで大事だ。お母さんが危ない時お母さんを庇って僕が危ない目に遭うとするよ。その結果、他全員僕の護衛、つまり全員危なくなるということ。皆の安全の為。」「はい」

「そしてその後もバレたり見付かったりしないこと。お母さんを人質に取られないためにも徹底して潜伏するだ。いいね、それがサムの仕事だから。」

私は、恥じた。私は、護衛の身でありながら自分のこと妻のことばかりだった。たった四つで、賢く優しくこの方が将来王陛下になっていて欲しい。

クリストファー殿下に膝をつき誓う。

「必ずや、殿下の乳母殿を護り抜きましょう」

「そうだ、僕の乳兄弟の名前を教えてくれる?」

クリス様はそう訊ねてくれた。暫く口にしていない名前、しかし忘れたことなどない名前。

「アリアドと申します。」「アリアドかぁ、忘れないよ」そう笑って下さった。



ギルドにて登録する際、偽名を名乗った"アリアド"と






*コニー視点


サムに落ち着くようにと部屋に押しやられた。

あの子が行ってしまう。私を置いて。クリス、私のクリス。死ぬまで傍に居ると誓ったのに、私が護ると誓ったのに。私にあの子を護る力が無いと言われた、見せつけられた。私の子、私のクリス。 ー違う、あの美しさ、あの賢さ、あの強さ。どこを取っても私にもサムにも似ていない。王太子殿下のマリー様の御子。


伴を出来ない私に手伝えることなど何一つ無いと思っていた。

「お母さんのご飯いっぱい作っておいて」

そう言って私にも仕事をくれた。

いいえ、そう、まだお母さんと呼んでくれた。クリスいい子なんていい子。ありがとうクリス大好き、お母さんは最後までお母さんだから、クリスの好きな物いっぱい作るからね。







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