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山中でのトレーニング後

前回のタイトルをべんりーどと読んでしまった方は内容を読んで、間違いに気付いてくれましたか?

そう!びんりーどでした。リード便にしようと考えていましたが、逆さにしてみました。

ガオン達の中継ポイントの真北でマルと別れ線路まで辿り着いた。明日から山に入る。前回と違い山が一部連なっていて低い山である。すぐに終わりそうだ。明日の朝から始めようとテントを取り出す。

山でのトレーニングはザットはやったことがない。明日に向け特訓している。僕が放つサンドディスクをザットがランスをぶつけ潰す。ザットのランスは一時期使っていたホーンレイという魔物の角をクヒが柄を取り付け握り易くしたものだ。なかなか大きくてカッコいい。

僕が放つサンドディスクはケインで集める速度には到底及ばない。それでも大きいランスを振り続ける特訓くらいにはなるだろう。半時ほどやりつづけるとザットも僕もヘトヘトになった。これは案外僕の特訓にもなるね。

翌朝、早速山に入る。この山は岩山で、もとよりあまり草木が生えないのか、枯れ木が目立つという状況にはなかった。そこは山だが違和感がある程、蟹が居た。サイズは三十センチ位だろうか?

「これ魔物だよね?これが飛んで来て切れるのかなぁ?」

「わからないな、ダメなら叩くしかないだろう?」

ルーは叩くことが普段から剣技の一つだ。

「私は刺すことになるでしょうか。」

「じゃあ俺も刺せばいいのか?」

細剣のトッドとランスのザットは刺すのか。短剣はどうしたらいいの?僕が習っているのは長剣の型での剣の扱い型で短剣のスキルがあるわけではない。体型に合わせ短剣を持たせて貰ったので短剣を長剣のように使っている。

「短剣は折れるかもな。防御魔法使うんだろ?殴ってみたらどうだ?」

ルーは、僕がやったこともないような拳術を薦める。

「俺の母ちゃんも拳で戦うぞ。」

そうだ、セスさんはナックルをしていた。

「誰かに習ったことなんて無いけどなんとかなるって言ってたぞ?」

そんなはずはないだろうが、魔物を倒すことだけが目的ならなんとかなるのか?

「うーん、切れなかったらやってみるよ。」

山頂にて、全員ケインを背後に構える。

『ハイハイ、回収!』

「皆、来るよ!」

ケインの声は僕にしか聞こえないので合図は僕が出す。登山中に見た蟹が甲羅をこちらの方に向け飛んで来る。岩を投げられていかようだ。そこに他の魔物が混じる。剣がやはり蟹に効かない。硬い、ホントに岩なんじゃないかなぁ?仕方がないので殴ってみたら、倒せる時と倒せない時がある。

(違いがわからない。)

それでも起動は変えられるので殴ることにした、痛みは一切ないからだ。短剣を片手にし、蟹意外は切る。両手の攻撃になり前回の山トレーニングより手数が増えやりやすくなった気がする。

始まって二分ちょっとで終わった。

「ぐあーなんだこれ~疲れた。いてー!」

ザット君は大分負傷したようだ。治癒魔法を掛けてやる。

「あ~助かる~クリスの魔法は効くなぁ。母ちゃんのは全然ダメだったんだよなぁ。」

痛い思いをして痛い思い出を呼び起こしたようだね。

「お~クリス、いっぱい倒せてるな!」

僕が立っていた場所に溜まった死骸を見てルーが感心して言う。そう言うルーも死骸が山となっていた。

「クリスは、片手剣の方が向いているかもしれないですね。」

トッドは、何か閃いたようだ。

僕等は連なっている山を渡る。りだり手に川に続く断崖、右に線路が小さく見えている。

こちらに渡ると山羊や鹿が多い気がする。もしかしたら、普通の動物か?この国に入って普通の動物はあまり見ない。鳥くらいだ。そしてまだ鳥の魔物に会ったことはないのだ。居なくはないが、他の魔物のように異常な繁殖をして異常に増えることはない。それが何故かは解明されていない。普通の動物が居るならケインは上に投げた方がいいか?

「あれは、普通の山羊?」

「あ?違うぞ、たぶん魔物だ。」

ザット君は見たことがあるのか否定した。

「あれ知ってるの?」

「いや、しらないが。あいつとあいつ妊娠中だこの時期の山羊は出産は終えた後のはずだ。」

成る程、詳しいね!

「何でそんな事知ってるの?」

「俺が小さいとき、山羊が三頭村にいたんだ。この国では家畜もペットも今は禁止されてる。山羊と野菜を交換したんだ。街に持っていけば禁止されて値がつかないからな。暫くは普通に出産もして乳も採れた。突然、突然謎の獣を産んだ。ヒブリドだ。それからはそんなのしか産めなくなった。禁止されてる理由を理解したよ。」

ザットは山羊を可愛がっていたのだろう、寂しそうな横顔だった。

その山でも殲滅兼トレーニングをして、山を下りる。次の山とは山頂が繋がっていない。

翌日、翌々日も山を殲滅して、何事もなく終えた。あの山意外で蟹の魔物は見ていないが。

これから一週間休みを貰っている。北に進むにつれ買い出しに出掛けるのに、時間が掛かる。往復で一週間はないと、休みにもならないのだ。

これから、ブ▪ペンツェに向かう。


ブ▪ペンツェに入ると門の傍で声を張り上げている白い外套を羽織った男が居た。

「寄附をするだけで、あなたは死後生まれかわる。今世がどんなに辛くとも幸せな来世があなたを待っています。さあ、わたしと一緒にお祈りをしましょう!」

男は身振り手振りで大袈裟に語っている。僕の前世は幸せだったし、死んだ覚えも全くないのだ。産まれて間も無く命を狙われこんな遠くで回りくどく、自分の未来を切り開いている最中だ。来世が幸せになる保証も無いのに、いい加減な事を声高に叫ぶ男にムッとした。

僕のこういった機微に敏感なトッドは僕の視線から男を遮るように体を入れ

「行きましょう。」

と言った。僕は頷き笑顔を作る。心配要らないと示す為だ。

僕等が通り過ぎる時、男は子供を抱いた女性に声を掛けている。

「あなたのお子の為にお祈りしませんか?今は食べる物に困る生活でも、来世は立派な貴族の家に生まれることだって出来るでしょう。」

「貴族…」

女性は子供の顔を覗く。子供の額を一撫でして、男を見て頷き

「お祈りをお願いします。」

「金貨一枚でいいでしょう。本当は金貨五枚からなのですが、あなたの母心にわたしは強く共感しました。」

「金貨…金貨も銀貨も有りません。雑銅貨ですが、これでなんとかお願いします。」

女性は雑銅貨を三枚、男に差し出す。

「いえ、これではちょっと無理ですね。神も大いに働いた者に救いを与えるのです。金貨はその証拠、証ですから。」

「そんな、仕事なんて…」

女性は弱々しい声を続けることは出来なかった。働いていないことは確かで、この国の南のブ▪ペンツェであっても仕事などなかった。

ゆっくり身を返し歩いていく女性に声を掛ける。

「おねぇさん、赤ちゃん見せて!」

戸惑いながらも、少し屈み嬉しそうにおくるみの中の子供を寄せる。

「どうぞ、シャオっていうの、お兄ちゃんは?」

「僕はクリスだよ。かわいいね!」

「ええ、そうなの可愛いの、可愛いのよ。」

そう言いながら涙がつーと頬をつたった。

「どうしたの、赤ちゃん病気なの?」

「いいえ、違うわ、元気よ。心配しないで。」

「じゃあ、どうしたの?」

「この子は元気で、乳もよく飲むの、でも、近頃私の乳では足りなくなったようで、離乳食も始めなくてはいけないのに何も買うお金がないの。」

そう話す女性は、痩せていて、自分が食べる分もないようだ。

「来いよ、アスナに。」

ザットが女性の後ろからそう提案した。

「アスナ?ですか?」

「ああ、アスナだ、あんたみたいな母親ばかりの村だ。今は、食べる物に困らないぞ。」

「本当ですか?お願いします。連れて行って下さい。」

「もちろん!任せておけ!」

ザットが話を進めてくれて良かった。僕の村ではないし、勝手に連れて行っていいものか分からなかった。チクルの時もそうだったけど、僕の周りは優しい人ばっかりだなぁ。お陰で僕は今世も幸せだと思える。

アスナ村はセスさんが母子を保護して作った村で、全員子持ちの女性だ。上手くやっていけるだろう。

「じゃあ、とりあえず何か食べて買い物している間に荷物をまとめておいて貰えるとすぐ行けるよ!何か食べたい物ある?」

「え?何でもいいのですか?」

「うん、どんな物でも食べたいだけ、食べよう!」

「でも、私は…」

「お金の心配なんていいよ。あ!そうだった、討伐部位を換金しないとね!」

もちろん、誠魂燈石も買い取りしてもらう。

女性をザットに任せて、ギルドで換金してきた。今回は百五十個も買い取ってもらえた。

金貨一万枚を越える額だが、誠魂燈石は小国が高く買い取っているので、最終的にギルドは大きく儲かるのだ。なので、罪悪感はない。

女性は、待っている間、食べたい物をずっと考えていたのか、僕等と合流するなり、

「か、カステラが食べてみたいです!」

勢いに任せてそう言った。会ったばかりの人達にお願いすることが恥ずかしかったのだろう。気合いを入れないと声にならなかったのだ。カステラは卵を使っているのでかなりの高級品だと思われる。ロルディアでも卵はあまり出回らない。自分で鶏を飼うしかない。いや、飼おう!

「おねぇさんのお陰で良いこと思いついたよ!」

これで、スイーツも作り易くなるだろう。おねぇさんの案内でカステラのある店を訪ね、カステラを買い占める。

「卵って何処で手に入れるんですか?」

僕が、そう訊くと、店員のおばさんは態度が悪くなった。

「鶏を飼うのが禁止だって言いたいのか?そんなこと言われても止める気はないし、脅されても何も出ないよ!」

僕は金貨を五十枚並べ、

「違うよ、僕も飼いたいんだ、雛と雌鳥は今は何羽居ますか?そちらが譲って支障の無い分を売って下さい。」

そう、言って更に金貨を五十枚並べた。

「凄い…」

後ろから女性の呟きが聞こえる。

「ちょっと付いて来な!確かめに行こうじゃないか。」

「店はいいのか?」

ルーが訪ねると、失念していたことに気付き金貨の山を苦々しく見ており、今にも手を出しそうだ。

「では、後程もう一度来るよ。そしてその時、売れ残っている商品は全てこちらで買い取り致します。それで、店仕舞いにして頂くというのはいかがでしょうか?」

「全部?」

「ええ。」

「分かった、そうしようじゃないか。」

トッドが、話を纏めてくれた。

僕等はカステラのお金だけ払い店を出る。店の前に椅子が 有ったので女性を座らせ、カステラを差し出す。赤ちゃんはザットが抱いている。慣れたものだ。

「おおおいひ~!」

彼女は口の中の水分を失いながらも感動を伝えた。

「うん、カステラ美味しいね!」

僕も食べた、前世で食べた物は、ザラメのところが苦手だったがこれはそれがない。

「トッド、コーヒーが飲みたいよ!絶対今食べたのは失敗だ。」

「確かに、コーヒーでも紅茶でも今すぐ欲しい。」

ルーも同意している。

「では、とっとと買い物を済ませてしまいましょう。クリス、鶏をどうするのか、教えてくださいね。」

トッドの怖い笑顔を見た。




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