相棒と幼少期 6
部屋の隅々まですっかり明るくなってから目が覚めた。体を揺すり掛け布団の中へと潜り光より逃げながら両腕を目一杯伸ばし最大限の伸びをして手足の先まで目覚めさせる。
「おはようございます、クリス。そんな風にしてたら赤ちゃんの頃思い出しちゃうわねぇ。いっぱい寝て偉いわね~さぁ着替えたらご飯にしましょ」
まだ、三つのクリスは寝坊して叱られることなんてない。温かなタオルで顔を拭われ、寝間着を奪われたと思えばシャツの袖を素早く通されズボンを差し出されたので、跨げばグイッと上げられベストを着ればフィニッシュだ。
朝ごはんを口いっぱいに咀嚼する。お母さんの様子がいつもと変わらないので昨夜のことは見られてなかったと確信してからお腹が一気に空いたのだ。そして、昨日のことを思い出す。水の盾を出そうとした時と大量の水を出したとき何か違った。掴みかけてるヒントが何なのか定まらない。
しかし、レベル上げの方法ならもう思いついていた。その為に今日はやることがあるんだ。
「お母さん、お庭で遊んでいい?」
「いいけどルーの目の届く範囲でね。」
「えー」
ルーは朝門番に立つ。その前の夜中はトッドで夕時前程から夜中までがサムの三交代で見張りに立っている。前世の感覚では確かに大きな家に入るかもしれないけど、郊外にある住宅ならこんなものなんじゃ?という程度だ。しかし、治安のよい日本なら一々門番など見かけない。この世界の治安がどの程度か分からないとはいえ、この家に警備が要るのか納得出来ないでいるままだ。ましてやここはとんでもなく田舎だ。なぜ一日中門番がいるんだろう?魔物に襲われたことも無いと思うんだけど。
「わかった、ルーにお願いするね」
「はいはい、お外のルーのところまでお母さんと行きましょ」「ハイ」
少し前までの季節が帰ってきた様な陽射しは眩しくて、背の高いルーを見上げるのはやっぱり辛い。
「おはようございますルー」
「おはようございますクリス様、お散歩ですか?」
「いいえ、クリスがお外で遊びたいそうなのだけど、今日はお天気がいいので早くお洗濯を済ませたいの。少し見ていて差し上げて下さい。」
「わかりました。でもトッドかサムを見かけたらこちらへと」
大人四人の中で一番若いルーは皆に丁寧に話す。礼儀正しい大男だが、体育会系なノリではない。もっと上品で上流階級といった雰囲気なのだが、これは男性人三人共で、こんな田舎で警備など似合わない。
「えぇ、もちろん。私も終わったら直ぐ来ます」
お母さんは手を振り去っていった。
「ね~ルー、見てて。」
小枝を拾い生垣に叩きつけた。「やー」
「おっクリス様剣術を習いたいのですか?」
「うん、僕もルー位のデッカイ剣が欲しいな」
これは昨夜見た自分の姿が金髪イケメンになりそうだと知ってから、なら某ゲームのキャラみたいに大剣を振り回したいと思ったのだ。
しかし、この行為には別の目的がある。見張りの居る門を通らず外に出られなければレベル上げに行くことが出来ない。よって、生垣に通れそうな隙間がないか探しているのだ。
「ではまず真っ直ぐ上から下へぶれることなく振り下ろせるようになるまで素振りです。クリス様」
なんと、行動を制限されてしまった。でも、そんな事を守ってはいられない。目的の為少しずつずれて行きながら枝を振り上げ振り下ろす。
(出来るだけ門から離れたところに見つけたい)
「クリス様、あまりそちらに行かないで下さい!」
「はーい」
門扉のあるところから屋敷裏手に入る手前に子供なら潜れそうな間があった。「よし!」頭を突っ込んでみると肩まで抜ける。(やった行けるぞ)
仕事を終えルーの元へ帰る。
(うひゃー疲れた)
地べたにほぼ大の字と言われても反論出来ない位に脚を広げ腕を後ろに着いて天を仰いだ。
(体力を付けるのもやっていかないと)
日本人の自分からするとこのクリスの身体は外国人で、三歳半とはこんなに大きいのか?と感じる。
(どう見ても五歳位じゃないかな?きっと直ぐ体力も付くだろう)
「お疲れですか、クリス様。後、二月もすれば四つですから、それから鍛練を始めましょう。あっ、ほらサムが来ましたよ。ご一緒にお水を貰いに行って下さい」
「ハイ」
立ち上がりサムの手を引っ張ってキッチンへ向かった。




