長いプロローグ 幼児期1
あ~僕は転生した。今時、転生しないやつなんて日本人とは言わないと言っていいと思う。
ただ、僕は死んでない。死んだ覚えは全くないけど、現在は赤ちゃんなのだ(泣)
自分の状況は粗、把握しておらず泣いては乳を貰い失禁を余儀無く晒す矮小なる存在である。
ヤダ、また泣いちゃう!「おぎゃあんっっあ~ん」
「はぁいクリス。どうしたかな?お母さんは此処に居ますよ」
この母親らしき人が今は僕の世界の全部と言えるのだが。まだまだ視界がぼやけていてよく見えないし、
なんと転生しているというのに、言語チートがない!つまり、情報が殆ど無い状況下なんだ。
まぁ、彼女の話す言葉が赤ん坊へ向けての短い表現でなんとか少し覚えてきたし、聞き取れるようになった。
しかし、この母乳を吸う作業とはなんと疲れることか。酸欠も相まってまた、眠く...
(はっ!!!)「ガラころガラころ」
なんだ、なんなんだこのがらがら鳴っている手にあるものは!妙に興奮♪p(´∀` )♪しちゃうんですが~
目は少し見えてきたが、逆に耳や嗅覚は以前より鋭いように思っていた。その聴覚が柔らかな音色に刺激されては脳を活性化させている。(はぁ~たまらん!)
「ガラごろガラごろ」
いゃ~止めらんない!!(ぺかー!)
突然、光に包まれる。唐突な現象に光の出所も何が起こったのかもさっぱり判らない。判らないままにとてつもない眠気に襲われ、そのまま眠りについた。
眠る赤子に手に握られていた玩具は消えていた。
首が据わり、お座りまで出来るようになった。
「変ね~またガラガラないね~」
お母さんが僕の為に玩具を探し周っているが、いつも見付からない。また、新しいのを用意するのだろうか?
アイツはいつも楽しんでいるところでぴがっとなっては消えるのだ。知ってる。毎度違う柄になっていたのでもう既に四つ消えていて今日で五つ目だった。
「そうね、お天気がいいし、今日はお外に行ってみるぅ?」
ふぁ!行きます!行きたいです!
抱っこされ脚をバタバタさせている僕にお母さんは楽しそうに微笑んで
「じゃあ行きましょう、クリス」
僕が聞き取り易い様にか、お母さんはゆっくりしゃべる。それが優しそうなお母さんによく似合っていて僕は好きだ。
庭に出たのは初めてだ。部屋の外側に縁側の様な廊下が有りそこまでしか行ったことがない。それも抱っこだけどね。庭は見たことしかなかった。
裸足で芝にしかれたシーツを畳んだだけの、レジャーシートに座らせてくれた。お母さんは僕の背面に座る。花や木を指差し、名前を教えてくれる。ふんふん、前の生で見てきた物と同じようだがここは地球なのかな?そう思っていたところに
「コニーさん、今日は外なんですね。クリス様こんにちは。いいお天気ですね、お座り上手ですよ」
現れたのは大男だ、でけーと思うが立っている背の高い人の顔まではまだはっきりは見えない。
「えぇ。ルー殿ごきげんよう。初めてのお庭なんです」コニーは嬉しそうだ。ルーと呼ばれた大男は一気にしゃがんで顔を近付けてくる。お~案外若いなぁ成長早い人だな、羨ましいぞ。そして見える様に成ったのは顔だけではない。剣だ!この人帯剣してる。日本では勿論ないし英語圏でもない、剣を携える危険な国なのか、地球ではないのか答はまだわからないなぁ。
ルーは拾った石ころを手渡して言う。
「クリス様これは石ですよ。初めてでしょう?」
おぅおぅ、馬鹿にしてんなぁ初めてなんかじゃないよっ!と思いつつも手にしてしまう石ころ。この指が掴みたがって仕方がないのだ。石、石、なんか興奮しちゃうのなんで~!僕は石を手にぶんぶんする。
「ルー殿は定時の見回り?よろしくね」
「はい。クリス様が表にいらっしゃいますしいつもよりしっかり見回りますよ。そういえばさっき食材が届いたので置いておきましたよ。」「そう...」
二人が話している間も僕の興奮は増している。ぶんぶん、あ~なんでこんなに楽しんだ?びがっ光が包んだ手に石は無かった。あ~っ眠くなって...きたぞ...
頭が重いクリスの体はぽすっとコニーの方へ倒れた。
「あらあらお外がきっと気持ちよかったのね~」
緩い時間が流れる。遠い鳥の鳴き声が響いていた。