科学帝国と兵器大国のバランス?…俺には関係ないっ!!
「ハァハァ…やっと追いついた…」
あ、ようやく来たか…。
「って、もうお前には関心がなくなったとこなんだがな」
「どういう事だ!侵略者!」
お前のところの兵器はすべて回収済みだし、半数以上のアンドロイド兵士の機能を停止させて《《用済み》》になった。
と言うと、また顔を真っ赤にして絡んでくるのは目に見えている。
「あちらのビームっぽい何かが気になってな」
俺は、遠方に見える瓦礫を指差して、こう答えた。
「あそこは、お前が兵器と兵士を排除したところだぞ?」
「ん?だから?」
「くっ…しばらく見ていればわかる」
すまん!全く意味がわからん!
ドォォーーン!
ズゴゴゴォーー!
ドン!
「へ?」
「あちらの攻撃を受けて瓦礫になった土地は、一瞬にして科学帝国の領地となる」
「俺よりエグい…」
兵器大国の転生者は、生身の肉体、見た限り、脳だけ保存して、延命を可能としているとみた。
そして、体力がない。
「いやいや、お前の瞬間移動に走って追いつけるわけがない」
「ん?俺はただ、普通に移動してただけだが?」
「は?」
やはり、俺の移動速度に対して、理解ができないらしい。
まぁ、そのへんは無視だ。
「で、ここに人類は生存しているのか?」
「あぁ、地下に生活空間を作ってある。改造はしてない、純粋な人間だ」
ふむ。
見た目、戦争屋であるミリタリーヲタク転生者は、意外と軍事力で民を守っているのかもしれない。
「しかし、どちらも巨大な主要要塞都市が大陸の両側に存在し、各地に点在する領地も拮抗していたのに、一気にこちらの戦力が圧倒的に不利になってしまった!」
「え?なんで?」
「………」
「お前がことごとく兵器を回収し、アンドロイド兵士を機能停止にして消し去ったからだよ!!」
あー。
戦力バランスを崩したのね…俺が。
(という事は…)
「もしかして、あちらにも、同等の戦力があると?」
「当たり前だ!俺は兵器開発とアンドロイド兵士が専門、奴は、バイオ兵器とバイオ兵士が専門…俺は脳だけ機械にして、肉体を動かしているが、奴らは違う…躊躇なく人体実験をして、強靭な兵士と、高度な科学技術で、先程見たレーザー他、焼き尽くす、破壊する、消滅させる兵器を量産している」
更に転生者は語る。
あちらにまともな人類はいない。
すべてが実験材料であり、マッドサイエンティストと化した支配国家だと…。
豊かな資源はすべて掘り尽くされ、破壊され、空気は汚染され、自分らだけがバリアという囲いの安全地帯の中で悠々自適に暮らしているのだとか…。
そして、隙を見せると、先程のように攻撃をしてきて、あっという間に自陣にしてしまうという狡猾さを持っている。
そんな環境から人類を守り、防衛戦を維持してきたのが兵器大国なのである。
「ふむ…見た目だけで判断した俺が悪かった」
俺は素直に謝り、やってしまった尻拭いをすると約束をした。
☆☆☆
「イノリ!そっちはどうなってる?ずいぶん時間がかかってるようだが…」
『そ、それが…』
イノリ達5人には、科学帝国の施設と帝国人に埋め込まれているナノマシンの除去を任せてある。
俺の質問に、イノリは返答に困ったような反応をみせる。
チュィィーーン!
ドォォーーン!
ズゴゴゴォーー!
ドン!
チュィィーーン
ドォォーーン!
ズゴゴゴォーー!
ドン!
そんな一瞬の間に、次々と兵器大国の領地が科学帝国の領地に変えられていく。
(まずいな…)
俺は、イノリが言いあぐねていた内容を推測し、更に自分の失態を取り戻すべく、全員に念話を飛ばす。
「全員退避!俺を座標にして、科学帝国から離脱せよ!!」
俺の念話は、喋っても思い浮かべても、相手の脳に直接、言葉を送る事ができるようにしてある。
だから
「念話って、普通は思念伝達じゃないのか?」
と、兵器大国の転生者が当たり前の疑問を投げかけるのも当然と言えば当然なのである。
魔法を使わないのであれば、本局で発した言葉を、各自の脳に埋め込まれたマイクロチップが受信して会話を成立させる…というイメージだろうか。
だが、そんな事はささやかな問題なのである。
今、優先すべきは、全員を俺の元へ集合させる事。
シュン!
シュン!
シュン!
俺の言葉を合図に、瞬時に全員が行動に移る。
全員、俺の《《やろうとしている事》》を察したようだ。
その光景に、唖然としているのは兵器大国の転生者のみ。
「ねぇ、君。唖然とするのは《《これから》》だよ?たぶん」
「いや、間違いなく」
「だね」
(こ、こいつら…)
転生者にフォローをしてくれるのはいいんだが…。
先程までの『取ってつけたような語尾』はどうした!?
どうせなら統一しろよ!!
と思わなくもない俺だった。
☆☆☆
「ではいくぞ!」
「よく見てなさいよ?ドクターの好き勝手を」
と、容赦のないイノリ。
(まぁ、間違ってはいないが…)
「ふふふ…イノリも言うようになったな」
「ありがとうございます」
褒めてねー!!
って、ま、いいか…。
「まずは…結界回収!」
ザワッ
俺の言葉に反応し、大気が揺らぐ。
続いて
シュゥゥゥ…。
主要都市を含む、科学帝国の結界が大気に溶け込んでいく。
現在、この世界の大気は《《俺の魔力》》で満たされている。
つまり、俺の意思で、魔力を自由自在に加工できるのだ。
で、今やったのは、魔力の『結界捕食バクテリア化』という、思いつきの加工。
これぐらいの事なら、体内に宿る無限の魔力を使う必要もない。
大気中の魔力を操作すれば、造作もない事なのだ。
俺の体内にある魔力を大気に放出
↓
大気中の成分を俺の魔力に変換
↓
大気中の魔力を使ってあらゆる事象を可能にする
これが、《《大気を俺の魔力で満たす》》過程である。
大気がすべて、俺の魔力だから無限なのではない。
体内の魔力は体内の魔力。
大気中の魔力は大気中の魔力。
大気に魔力を放出した時点で、すでに別物なのである。
だが、その大気を利用して、俺は瞬間移動やら何やらが可能だったりする。
自身の体をナノ化する。
↓
大気に溶け込んだ体を、別の場所で再構成。
↓
瞬間移動完了。
てな具合だ。
な?ご都合主義だろ?
これが、死神と邪神の核を取り込んだ俺の能力の一部なのだ。
この件に関しては、《《バレても問題のない》》極秘事項であり、一切の意義は受け付けない内容だ!
ん?
矛盾してる?
これは、わざわざ公開する内容ではないが、バレたところで、相手には、その打開策はとれないから問題がないって事だ。
ハッハッハ!
という事で、次の段階に入ろうと思う。
次は、いわゆる《《嫌がらせ》》だ。
マッドサイエンティストには、マッドサイエンティストなりの攻撃のやり方がある。
「自覚はあるんですね」
とかほざいてる5人を無視し、俺は行動に移る。
「名付けて『マッドサイエンティストの心を折ってみよう作戦』!!」
「「「「「ギャハハハハハ!!」」」」」
「わ、笑うんじゃねー!!」
どうも、俺のネーミングセンスは壊滅的らしい…という事だけは、はっきりと分かった。
そう、わかっただけ。
治す気はサラサラない!!
ふむ。




