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運命の赤い糸はとんでもない!  作者: 竹輪㋠


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兄の頑張りを妹は知らない

  そうしてハージ兄と呪いを代わった私だったが、次の日からも頻繁にハージ兄から代わってくれと頼まれた。


「まだ腹の調子が悪いから、呪いを代わってくれ。今日はコラン様がお休みだからプレスロト国の観光に連れて行ってもらえるぞ。ほら、俺の分も楽しんでこい」

「今日も……? 丈夫なハージお兄様がこんなに苦しむなんて、なにか悪い病気なのでは……」


 その日は、朝起きて早々にハージ兄に呪いを代わったのだが、朝食後にまた腹痛がぶり返したと言い出した。

 いくらなんでも、こんなに続くと心配になる。


「だから、ちょっと下しているだけだ」

「そうは言ってもう四日になります。お医者様に……」

「わかった。じ、じゃあ医者に行ってくるから!」

「本当ですね? ハージお兄様は昔からお医者様が嫌いだから……」

 医者に行くと言って誤魔化し、結局行かなかったことが多いハージ兄の言葉は信用できない。

 私が不信感を滲ませた目で睨むと、ハージ兄はしぶしぶ白状した。



「あのな、恥ずかしくて言えなかったが、実はケツにできものが出来ているんだ。命に別状はないから心配はいらん」

「……できもの。まさか恥ずかしくて下していると言っていたのですか?」

「そ、そういうことだ」

 大きな体の兄が恥ずかしそうに縮こまっている。


 お尻におできが出来ていたなんて、いい大人が言いにくかっただろう。

 突っ込んで聞いて申し訳ないことをしてしまった。

 連日、呪いは私がほとんど受けることになっていたのだから、相当大きなできものなのだろうか。

 じっとハージ兄のお尻を見つめると、隣のコラン様が下を向いて肩を震わせている。

 それを見たハージ兄がへの字口をして肘でコランお兄様をつついていた。

 仲のよろしいことで。


「本当に、私が行っていいのですか?」

「いいから、行ってこい。お前とコラン様が繋がっているのがバレるとまずいから、場所は限られているけれど、欲しいものをたくさん買ってもいいからな。ほら、小遣いだ」

「こんなに……私は欲しいものなんて」

「コラン様から俺たちに日当がでているんだ。気にするな」

「それは、お母様に送ってもらう約束で……」

「ああ、もう、いいから! 行ってこい!」


 お金を渡して私を追い立てるハージ兄。

 本当ならデートするのはハージ兄だったろうに、かわいそう。

「わかりました。……その、早く治るといいですね」

 心配してそう言ったらハージ兄に微妙な顔をされた。

 恥ずかしいのに何度も言ってすみません。


「では、行こうか」

 コラン様がそう言い、ハージ兄が血を合わせるために絆創膏を外した。


「待ってください。出かける仕度をしてから呪いを受けます」

「ああ、そうだったな。仕度しておいで」

 二人を応接間で待たせると、私は急いで出かける準備をした。




「……アイラ、その恰好は?」

 戻ってきた私の姿を見て二人は驚いた顔をしていた。


「長時間一緒にいるなら、このほうがよろしいでしょう?」

 なぜだか侍女さんたちには新しくそろえたという(いつの間に?)ドレスを勧められたが、私は山で着ていた軍服を出してきた。

 コラン様のために気を利かせたのに、二人の反応はよくなかった。


「こうすると、ほら、男の子に見えるでしょう?」

 髪を後ろでまとめて帽子をかぶってみせるとハージ兄が頭を抱えた。


「アイラ、お前、コラン様に贈って頂いたドレスがあっただろう?」

「え? コランお兄様が贈ってくださっていたのですか?」

「部屋で勧められなかったか?」

 あれは……コラン様が贈ってくれていたのか。

 たしかに、ロザニー様のお古は胸がスカスカだものね。

「ありがとうございます。またの機会に着させていただきますね!」

 コラン様にお礼を言うと、彼は口に手を当てて顔を赤くしていた。

 照れているのかな? 感謝されると嬉しいよね。


「ド、ドレス姿も見たかったが、これはこれで激しく可愛いからな……」

「コラン様? なに言って……」

「でしょう?」

 山で歩いていた時もこの姿の時のほうが落ち着いていたのを知っている。

 私は出来る『妹』ですからねぇ。

 コラン様の好みも把握済みなのですよ!


「いや、でも、ダメだ! アイラ、ドレスに着替えてこい!」

 ハージ兄は不満そうにしつこく言うが、コラン様はこっちのほうがいいに決まっている。

「ハージお兄様は早くおできを治してください。それまでは私がコランお兄様を守って差し上げますからね」

 胸を叩いて、任せなさいと意気込むと、ハア、とハージ兄のため息。

 代わりに行く私に嫉妬するのはわかるけど、それもこれもおできのせい。

 早くお医者様に見せたらこんなことにならなかったのに。


「時間がもったいない。行こう。ハージ、なんとか頑張ってくる」

「コラン様、俺、身を削ってるんですからね……ほんと、アイラを頼みます」

「わかった。ハージの気持ちは無下にしない」

 なるほど、ハージ兄がお医者様にかかるのを近くで見ると、コラン様には心配しすぎちゃうのか。

 私を観光に連れて行くのも、気がまぎれるようにかな? 

 出来るだけ、明るく接しないとね!


「ハージお兄様、頑張ってくださいね!」

 私もコラン様が気に病まないよう気を紛らわせてみせますから! 

 呪いを受けて、コラン様の腕にまとわりつくと、まんざらでもなかったようで、そのままコラン様が歩き出す。

「アイラが私のことをもっと好きになってくれるように、頑張るからな」

 もっと好き?

 いや、もう十分好きなのだけれど。

「お兄様として、これ以上ないくらい好きですよ?」

 満面の笑みで答えたと思うのに、コラン様が私を見て複雑そうな顔をしていた。


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