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運命の赤い糸はとんでもない!  作者: 竹輪㋠


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宮廷魔術師団2

「では、ちょっとここで待っていなさい。誰か、アイラにお茶でも入れてやってくれ」


 私を置いて、ホラム様を加えた三人は離れたところに密談をしに行った。

 うんうん。きっと男同士の結婚だもの、色々と障害はつきものだよね! 

 興奮を抑えながら勧められたテーブルに座ると、葉っぱみたいな生き物が私のところへやってきた。

 ……魔獣? 

 こんな可愛いのがいるんだ……。襲ってくる気配もない。


「その子はハッパちゃん。魔物だけど人に危害を加えない、いい子なんだ」

 黒い前髪でほとんど顔が見えない女の人? が私に説明してくれた。


「私はアイラ=コートボアールです。よろしくお願いします。ハッパちゃんと……」

「僕はミラ。あ、こんななりだけど、男だからね」

「ミラ様。よろしくお願いします」

「よろしくね、アイラ」

 ハッパちゃんがお茶菓子をその葉の上に乗せてきてくれた。下を覗くと葉の下の茎のところが二股に分かれていて二足歩行していた。

 すごい。

 ミラ様が銀色のポットを持ってくる。

 すると蓋を開けると空っぽなそこに水がみるみる現れた。


「わあ! 水の魔法ですか?」

「うん、そう。アイラの属性は?」

「わ、私も水です!」

「じゃあ、僕と一緒だね。リンリ、お湯にして」

「はいよ」


 向こうにいたオレンジ色の髪の女の人(今度は間違いない)がこちらも見ずに指をパチンと鳴らした。

 途端にポットの中の水が沸騰したようでカタカタと鳴った。


「わわ、お湯に!」

 私が驚いていると、今まで知らん顔していた魔術師たちがあちこちから寄ってきた。


「何この子、面白い」

「魔法が珍しいの? どこから来たの」

 集まった六人くらいの魔術師たちに囲まれる。みんな私に興味津々だった。

「ええと、アイラ=コートボアールです。 ロメカトルト国から来ました、貧乏貴族です! よろしくお願いします」

「はは、貧乏……言わなくていいから。アイラちゃん、ね。私も貧乏だったよ。私はリンリ。火属性だよ」

「ロメカトルト国かあ。ラルラ王の言い伝えがある国だね」


「ラルラ王って? 有名なの?」

 リンリ様が首をひねって聞いている。

 コラン様も知っていたし、他国の人でもラルラ王の話を知っている人がいるのだな。リンリ様は知らないようだけど。


「ロメカトルト国の数代前の伝説の王様です。悪魔から国を救った英雄なんですよ」

 私が簡単に説明するとミラ様が詳しく話を続けてくれた。

「僕、伝説とか好きで知ってるんだ。ええと、確か、数百年前に悪魔がロメカトルト国に現れて、その悪魔をラルラ王が倒すんだよ。いつも乗ってた愛馬が悪魔の使う魔術を防いで、ラルラ王が悪魔の心臓に剣を突き立ててやっつけるんだけど、愛馬はそのまま死んじゃうって悲しい話だったな」


「ミラ様、詳しいですね。その愛馬がコートボアールって名前でしてね! 私の家はその愛馬の墓を守っている家なのです」

「え、そうなの?」

「そうなんですよ! でも、お墓があるだけでなーんにもない荒地なんです。国から援助も一切出ないし、お陰でコートボアール家はずっと貧乏です」

「あはは、そこで貧乏がつながるのか!」

「アイラちゃんて面白いね……」

 ケラケラと皆で笑う。このネタ、コートボアール家の鉄板である。


「それはそうと、コラン様と一緒に来ていたけど、妹ってなに?」

「ええと。コラン様が妹にしてくれたのでお兄様になってもらいました」

「へえっ! あのコラン様が。笑える! でも、なんで妹なんだよ」

「家族はセーフってことなんじゃない? コラン様の女嫌いは筋金入りだよ。俺、あの人に『女が寄ってこない薬を作ってくれ』って真剣に頼まれたことあるよ」

「ひえーっ。さすが、プレスロト国一のモテ男!」

「コランお兄様はそんなにモテるのですか? あ、ハッパちゃん、ありがとうございます」


 ハッパちゃんがお茶が入ったカップを差し出してくれたのでお礼を言って葉を撫でた。

 すると気持ちよさそうにハッパちゃんが指にすり寄った。かわいい。


「モテる、モテる! あの容姿で騎士団長だぞ。普通に廊下歩いているだけで、ファンの子が何人か熱上げて倒れちゃうよ」

「ええっ! そんなに!」

「ちょっと、それは話盛りすぎ!」

「あ、やっぱ、そう?」

 さらにゲラゲラと笑う魔術師たちはみんな楽しそうだ。

 たまにハッパちゃんが指にすり寄るので撫でながら話を聞いていた。

 うーん、このお茶も絶品だ。


「アイラちゃんはコラン様が怖くないの? あの人が女の人に優しくするのを初めて見た」

 改めてリンリ様に聞かれる。コラン様はそんなに女性が苦手なのか。


「怖くないですよ? コランお兄様はハージお兄様が好きなので私にも良くしてくれるんです。ハージお兄様は実の兄ですが、とっても優しくて頼もしいんです」

「ハージ殿はいい人だもんな。へー。赤い糸の呪いって好感度が上がるのかな?」

「一緒にずっといると好感度が上がるなら興味深いね。でも、過去、相手が衰弱して死んだって文献もあったから、たまたまコートボアール兄妹がコラン様と相性が良かっただけじゃない?」


「僕の方で調べた記録には……むしろ悲劇しか残ってなかったよ。くっついていないといけないだけで好感度は関係ないと思う」

 魔術師のみなさんはいろいろと博識なようだ。

 赤い糸……一緒にいるなら気が合う方がいいだろう。


「うわぁ。だったら、コラン様はラッキーだったね。だって、ここからロメカトルト国まで行って帰って来たんだろ? 相性良くないとできないよ」

 ムフフー。やっぱりお兄様たちは相性が良かったのか。


「アイラちゃん、そのお菓子は器がクッキーでできているんだよ、そのまま食べたらいいからね」

 私が小舟の形をしたお菓子を手にしてどうやって食べるのか悩んでいるとリンリ様が教えてくれる。

 なるほど、この器はクッキーなのか。中にアーモンドヌガーが入っている。


「……お、おいしい!」

 私がもぐもぐと夢中で食べていると、魔術師のみなさんがこちらを見ていた。


「か、可愛い……可愛いぞ!」

「こ、これも食べて!」

「俺、追加でお菓子持ってくる!」


 なんていい国なんだろうプレスロト国! 

 なんていい人たちなんだろう宮廷魔術師団!


 それからいろいろなお菓子をごちそうになって、美味しいお茶もいれてもらって……私はホクホクだった。

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