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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

キスの話(百合。幼馴染女子高生)

作者: 飛鳥井 作太

 *こちら(https://kakuyomu.jp/works/1177354054921243863)のお話の二人の、その後のお話です。が、単体でも読めます。

 幼馴染の女子高生二人が、お試し期間を経てお付き合いをするお話のその後。

 ちなみに、話に出て来る兄たちは『近くて遠い』『春の引っ越し』の二人です




 五月。中間テストも終わって、平和なある日曜日のこと。

 今日も今日とて、莉音りおん陽火はるひの部屋に遊びに来ていた。

 いつも通りのお休み。しかし。

「はーちゃんっ、あの! キス、どう思うっ?」

 今日は、少し様子が違った。

「……と」

 莉音の真剣な眼差しに押され、陽火は口を開いた。

「それは、一応聞くけど魚のキス……じゃ、ない方の?」

「じゃない方の」

 莉音が、こっくりと頷く。

「ちなみに、私はお魚のキス、好きだよっ」

「奇遇だな、アタシもだ」

 天ぷらが好きだな、と陽火が言って、美味しいよねぇと莉音が言った。

「……」

「……」

 そして、しばしの沈黙。

「で」

「うん」

「……ちゅー?」

「ちゅー」

 真顔で莉音が首を振る。

 年下の幼馴染兼恋人は、どうやら真面目にキスについて考えているらしかった。

「お兄ちゃんに、聞いてみたんだけど」

 莉音の爆弾発言に、陽火が吹いた。

「き、聞いたのか……?」

「このあいだ、帰って来た時に」

 莉音の兄は、陽火の兄と付き合っている。

 お隣同士で、それぞれ付き合っているのだから面白い。

 ちなみに、兄たちは少し遠いところの大学に入学したため、二人とも家を出ていた。

「で……?」

 何て?

 陽火は、ごくりと唾を飲み込んだ。

「『雰囲気で』って」

 雰囲気。

「あの二人は雰囲気で初ちゅーしたのか」

「あ、初キス自体は事故で小学校の時にとは言ってたけど」

「事故で小学校のとき」

 何それ気になる。

「でも、その雰囲気がわからないなあと思って」

「そうだなぁ……」

 陽火は、うーんと唸ってから。

「とりあえず、今は何か違う気はするな」

「だよね」

 莉音も苦笑した。

「ところで莉音は、どう思ってるんだよ?」

「私は……」

 彼女は、少し困ったように首をかしげ、

「その、出来たらいいなって……」

 えへへ、と微笑んだ。

 はにかんだその笑顔は、何処か恥ずかしげで。


 きゅきゅきゅーん!


 陽火の胸が高鳴った。

「なるほど……雰囲気ね……」

「はーちゃん?」

 陽火は、おもむろに手を伸ばして、莉音の頬に触れた。

 それから。


 ちゅっ


「!!」

 柔らかな頬に、キスをひとつ。

「……今は、とりあえずほっぺで」

 陽火は言った。

「……」

 こちらも照れで頬が朱い。莉音の胸も高鳴った。

 可愛いなあ、嬉しいなあ。

 そんな気持ちが、彼女の胸から零れ出る。

「えへへ、ありがとう」


 にこっ


 それが、可愛らしい笑顔に乗った。

(唇でも、良かったかな)

 と陽火が思ってしまったのは、まだ彼女だけの秘密だ。


 END.



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