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メイドのイザベラさん ~ご主人様、ソシャゲの周回もできますよ~  作者: KOKUYØ
第二章 コンパニオンのソフィア
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第七話 居座るソフィア


「と、言うわけでわたし、しばらくここにいまーす」


 帰宅してそうそう、ソフィアが爆弾発言をした。


「ダメです」と、イザベラ。「迷惑です」


「でももう許可はとってありまーす。ね、そうですよねお父さん!」


 どうやらソフィアは栗栖の父親を味方につけたようだ。


「まあ、好きなだけ泊まっていけばいいよ」


「つうか親父、いつ帰ってきたんだよ」


「さっき、ほいこれお土産。沖縄名物ちんすこう」


「後でお茶請けにでもしましょうか、紅茶と合うそうですし」


「わたし、ここに居てもいいでーす。知ってまーす、この家で一番えらいのお前じゃなくてお父さんねー。だからわたし、臆面もなくいられまーす。これ日本語あってます?」


「ま、お前は臆面もないな。厚顔無恥ともいう」


「難しい日本語わかりませーん! とにかく天下御免でここにいまーす!」


「はあ……本当に良いのですか旦那様?」


「いいよいいよ、だってその方が面白そうだしね」


 栗栖の父親は実の息子に対してウインクを投げる。あきらかに楽しんでいる。


「ではしょうがありませんね。ご主人様、申し訳ありませんがしばらくの間、ソフィアも一緒に仕事をさせていただきます」


「それは構わないけど」


「わたしはかまいまーす! お姉さま、私は休暇、オフでーす! つまりは、NEET」


 惚れ惚れするような発音でソフィアはニートと言った。


「働かざる者食うべからずですよ。それともソフィア、貴女は私を怒らせたいのですか?」


「はい、わたしが悪くありましたでーす! お姉さま、まず何から始めましょうか!」


「では夜ご飯の準備を一緒にやりましょう。それではご主人様、旦那様。少々お待ちください」


 イザベラとソフィアはキッチンへと行く。お姉さまとお料理なんて初めてでーす、とソフィアの楽しそうな声が聞こえる。声だけでも分かる、とにかく嬉しそうだ。


 二人がいなくなると、栗栖はどっと疲れてソファに腰をおろした。


「増えたね」と、父親。


「親父が安請け合いするからだろ」


「でもトウヤくんも昨日泊めてあげたんでしょ? なら一晩泊めるも二晩泊めるのも一緒だって」


「まあ、そうか」


「なんだか賑やかだね。こんなの、久しぶりだ……」


 たぶん、父親は母さんのことを思い出しているのだろう。栗栖は何も言わなかった、言いたくなかったのだ。


「ねえ、トウヤくん……」


 と、父親が深刻そうに言う。


「やだなあ、人間歳をとるとそんな話ばっかりで。なんだよ、母さんとの思い出か? もし馴れ初めなんて話してのろけるつもりならやめてくれよ」


「別に誰もトウコの話しなんてしないよ。僕がトウヤくんに聞きたいのは――」


 実に真剣な顔をのまま、父親は続ける。思わず栗栖は生唾を飲み込んだ。


「――どっちが好み?」


「あんた、それ息子に聞く質問か?」


「そりゃあ聞くさ。一見クールなメイドのイザベラちゃんは笑うとチャーミングと見たね。あれはクーデレの素質があるよ。かたやツンツンしているロリメイドのソフィアちゃん。一緒に居るとこっちまで元気になるよね。ああいう子と話しているのは楽しいよね」


「大丈夫かよ、あんた」


「父親にあんたとは大層な言い方じゃないか。それで、どっちが好みなんだい?」


「少なくともソフィアは俺のことを嫌ってるだろ」


「そうかい? そうは見えないけど」


「イザベラだってなに考えてるのか分からないし」


「そりゃあ他人の考えてることが全部分かるわけないでしょ。大切なのはトウヤくんの気持ち」


「じゃあ逆に聞くけど、親父はどっちだよ?」


「僕は母さん一筋さ。出会ってからずっと、これからもね」


 その答えは卑怯ではないだろうか、と思わないでもない。


 何度も聞いてくる父親を無視するために、栗栖はスマホをいじりだした。周回周回、と呟く。しばらくすると父親はからかうように「照れるなよ~」と肩を叩いてきた。腹がたったので席も立った。


「夜ご飯、出来たら呼んで」


「反抗期?」


「はいはい、そーですよ」


 さっさと部屋に退散した。それからイザベラが呼びに来るまで、栗栖はずっとソシャゲをやっていた。フレンドのところを見れば山崎もログインしているようだった。勉強しろよ、とラインを送ってやる。


 お前もな!


 と、返ってきた。当然だった。



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