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メイドのイザベラさん ~ご主人様、ソシャゲの周回もできますよ~  作者: KOKUYØ
第二章 コンパニオンのソフィア
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第三話 みんなでお勉強


「ではソフィア、改めて自己紹介をしなさい」


「はい、お姉さま。わたしの名前はマリー・ソフィ・ド・トゥールーズ=ロートレック。ご主人様、会えて光栄でーす。よろしくお願いもうしそうろう。これで合ってまーす?」


「違っています。まったく、時代劇の見すぎですよ」


 ソフィアは舌を出しておどけた。奇麗な色をした、長い舌だった。


「はいはい、質問があります」


 栗栖は手を挙げる。


「なんでしょう、ご主人様」


「えーっと、どこから聞けばいいか。あのさ、まず1つ目。名前長くない?」


「そうですか?」


「フランスでは普通でーす」


「いやいや、マリー・ソフィ……なんだっけ?」


「マリー・ソフィ・ド・トゥールーズ=ロートレック、でーす。覚えておいて損はないでーす」


「特もありませんけどね。というかソフィア、貴女そんな苗字だったのですね」


「わたしもお姉さまの苗字しりませーん。フランス人、友人知人の苗字知らないこと多いですよ。日本じゃフルネームを名乗ると聞いたので名乗ったのですが」


「そうなの?」


「まあ、名乗る必要もありませんから。私もたいていはイザベラ、と名乗りますし」


 国によって文化というのは違うものなのだな、と栗栖は納得した。


「あの、じゃあ次の質問。イザベラよりも年上なんでしょ? なんでお姉さま?」


「お姉さまはお姉さまでーす」


「まあ、簡単に言えば私のほうがメイドとしてのランクが高いからです。私はA級メイドの中でも限られた上位の特A級メイド。この特A級メイドだけがSランクの試験を受けることができるのです」


「へえ、そうなんだ。で、そっちのマリー・ソフィさんは?」


「ソフィアで良いでーす。長いからみんなそう呼びマース。私はC級でーす。けれど今度B級の試験を受けて、そこでB級に上がる所存でーす」


「C級……それってどれくらいなの?」


「まあまあです。けれどメイド全体の中でも一番多いランクでもありますよ。W・S・Oが定めた規定ではC級の下にも様々なランクがありますから、まあここまで上がれば一つメイドとしての実力は保証されるという指標ですね」


「ほおー。で、イザベラは特A級と」


「そうです」


 イザベラの表情はまったく変わらない。だが隣にいるソフィアがなぜか誇らしげなかおをしている。なぜお前が?


「しかもお姉さまはすぐにS級に上がるのでーす!」


「へー、そうなのか?」


「そうなのでーす。だからお姉さまは今、まさに大切な時期なのです! だからこんな場所で遊んでいる場合ではないのでーす!」


「別に私は遊んでいるわけではありません」


「じゃあ何をしているのですか?」


「今はご主人様のお勉強を見ています」


 伊達メガネをこれ見よがしに上げた。


「お勉強……お前、バカなのですかー?」


「こら、ソフィア。ご主人様にお前とはなんですか、お前とは」


「でもわたしのご主人様ではありませーん。なのでお前で良いのでーす」


「まあ、別に俺はなんでも良いけどさ」


「お前は中々器のでかい男でーす! しかし、まだお姉さまのご主人様とは認められませーん!」


「認めるもなにも、この方が私のご主人様です」


「むむむ、お前! お前もまともな男ならお姉さまの主人になることを辞退するべきでーす!」


「ソフィア、先程から言いすぎですよ貴女」


「だってだって!」ソフィアは駄々っ子のように地団駄を踏んだ。そしてヒステリックにフランス語でなにやら叫ぶ。最後に栗栖に向かって「バカっ!」と言い放った。


「なんて言ったの?」


「私のお姉さまを盗った、と。要約するとそんなところです。ソフィア、私は別に貴女のものではありません。そもそも私たちはただ前のお屋敷で部屋が同室だっただけでしょう。貴女が私にそこまで執着する必要もないはずです」


「ありまーす! でーす!」


 どうやらこのロリメイド、イザベラのことが好きらしい。それは鈍感な栗栖にもよく分かった。だがイザベラは栗栖に輪をかけて鈍感らしく、不思議そうに首を傾げている。


 もっともソフィアの好意というのが友情か愛情か、判断はつかないが。だがこの執着を見るに、どうもそういうことらしい。


「まあ、私たちの邪魔さえしなければそれでいいです。ご主人様、少し時間は潰れましたがお勉強しましょう」


「勉強ならわたしもやりまーす! お姉さま、教えて欲しいでーす!」


 ソフィアが媚びるようにイザベラに抱きついた。イザベラは鬱陶しそうにソフィアを引っ剥がす。そして頭をポコンと叩いた。


「私は別に構いませんが、ご主人様は?」


「まあ良いんじゃないか」


 一人でやるよりも二人のほうが良いに決まっている。


「ではソフィア、貴女はどんな勉強を?」


「そりゃあもちろんB級メイドの試験勉強でーす! お姉さま、どうぞよろしくお願いしますですます!」


 はあ、とまたイザベラはため息をついた。今までイザベラがため息をつくところなんて見たことがなかった。どうもこのソフィアと一緒にいるとイザベラに化学変化が起きるらしい。


「やれやれ……手のかかる子が二人も。これはやりがいがありますね」


 イザベラの言葉はしかし、どこか嬉しそうでもあった。たぶん人にものを教えるのが好きなのだろう。栗栖からすればイザベラが喜んでくれるならなんても良かったのだ。



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